ヒトラー演説 - 熱狂の真実 (中公新書)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 560
レビュー : 46
  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121022721

作品紹介・あらすじ

ナチスが権力を掌握するにあたっては、ヒトラーの演説力が大きな役割を果たした。ヒトラーの演説といえば、声を張り上げ、大きな身振りで聴衆を煽り立てるイメージが強いが、実際はどうだったのか。聴衆は演説にいつも熱狂したのか。本書では、ヒトラーの政界登場からドイツ敗戦までの二五年間、一五〇万語に及ぶ演説データを分析。レトリックや表現などの面から煽動政治家の実像を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • ヒトラーの演説の名手であることがわかる
    持っていた才能と 努力の過程
    ラジオや映画など 放送メディア分野で 残した作品も 多いのだろう
    この研究成果は 日本人がしていることに驚く

  • ちょっと不謹慎な感想だが、ヒトラーの演説って一世を風靡した一発屋芸人のネタみたいなものだったんじゃないかって思えた。彼の演説パフォーマンスは大衆に大受けしたものの、政権獲得後、演説会場の熱狂的な雰囲気をラジオを通じて全国に広めようとした時期には既にドイツ国民はその演説に飽き始めていた。。ナチズムに賛同できるはずもないが、演説パフォーマンスに代わって国民を魅了するネタを作れなかったのもナチスの限界だったのではないか。それは経済発展や国際的地位の回復といったことなのかもしれないが、プロパガンダに頼りすぎると、リアルな成果を上げることは二の次になってしまうのだろう。

  • 人を引き込む力。時代背景とそれを読み解く力。

  • 東2法経図・6F開架:B1/5/2272/K

  • ヒトラーの弁論術。
    当時、ジェスチャーや発声法に道具を含めて完成されていることがわかる。
    その巧みさともろさの歴史が読み解ける。

  • ヒトラーの演説をうちには細かすぎるくらい分析してる
    発表がうまくなりたいもんやね

  • 結局、最後に勝つのはラジオでもネットワーク配信なのでもなく、目の前にいる人間とラウドスピーカーなのであるという現実。

  • その弁舌の才で新たな道を見いだした復員兵は、その弁舌の才に磨きをかけることで自らが率いる弱小政党を比較第一党にまで導くことが出来た。そして、政治的策謀と強引な力の行使で総統となることが出来たのだが、強制的にラジオで聴かされる演説にはもはやその魅力は失われ、また、いつまでも『パン』を与えられずに『パンの夢』を語るだけでは国家指導者としては国民に支持されることはもはや難しく、自らも聴衆の前に出て演説することが出来なくなっていった。
    せっかくオペラ歌手に発声法やジェスチャーの効果的な使い方を学んでも、マイクの前で原稿を読むだけでは国民の心はもはや動かせなかったのである(もちろん、現実と演説の海里がどんどん大きくなっていったことも大きいのであろうが)
    そして、ヒトラー演説の効力が著しく落ち込んでいったにもかかわらず、ゲッベルス宣伝相の『献身』『忠誠』がひるまなかったことも驚きであるし、目の前で演説する総統に対して、マンシュタイン元帥が野次っていたことも驚きである。

  • ヒトラー演説をデータ分析し頻出するワードを追う。ヒトラーは演説力が有名だが実は政権中期から飽きられてたことも分かる。ヒトラーは20世紀の神秘とも言える面があるのでデータ分析だけでは追いつけない。

  •  ヒトラーについての本は日本でもすでに山ほどあるわけで、いまさらストレートなヒトラーの評伝など書いても、屋上屋を架すことにしかならない。
     しかし本書は、ヒトラーの演説に的を絞ってその歩みをたどるというアプローチによって、ヒトラー伝の期を画すことに成功している。
     
     ヒトラーはなぜドイツ国民の心をつかみ、合法的に独裁政権を打ち立てることができたのか? その要因はさまざまあるだろうが、見逃せない大きな要因として、ヒトラーの演説の魅力があった。
     プロパガンダの天才・ゲッベルス宣伝相による巧みな演出や、ラジオや映画という新しいメディアの力も加わって、ヒトラーは演説によってドイツ国民を熱狂させていったのだ。
     
     著者は、近現代ドイツ語史を専門とする言語学者(学習院大学教授)。つまり歴史学者ではないのだが、言語学者ならではの緻密な分析で、ヒトラー演説の内実を明かしていく。

    「ヒトラーの演説文を客観的に分析できるように、ヒトラーが四半世紀に行った演説のうち合計五五八回の演説文を機械可読化して、総語数約一五◯万語のデータを作成した」という(!)。その膨大なデータの徹底分析によって、本書は書かれているのだ。
     大変な労作であり、パソコンが普及したいまだからこそ成し得た著作ともいえる。

     著者は、「ヒトラーはジェスチャーを交えた実演がうまいという理由だけで演説家として評価を得たのではなく、その演説文のテーマ、構成、表現に関しても早期から成熟していた」と評価している。
     もともと演説の才に恵まれていたヒトラーは、そのうえ、デヴリエントというオペラ歌手から、数ヶ月にわたって発声法の訓練を受けたという。1932年のことだ。

    《ヒトラーが「演説の天才」であるためには訓練を受けていることが露呈してはいけない。そのため、デヴリエントによる訓練は秘密裏に行われた。》

     ヒトラーは、たしかに演説が得意ではあった。しかしその「天才」ぶりは、訓練や演出、テクノロジー(ラウドスピーカーなど)とメディアの発達によって、かなり嵩上げされ、粉飾されていたのだ。

     面白いのは、ヒトラー演説の力が最も発揮されたのは政権奪取までであり、独裁者となってからはドイツ国民に飽きられていった、と分析している点。

    《ヒトラー演説は、政権獲得の一年半後にはすでに、国民に飽きられ始めていたのである。ヒトラー演説は、ラジオと映画というメディアを獲得することによって、その威力は実測値としては最大になった。ところが、民衆における受容といういわば実測値においては、演説の威力は下降線を描いていったのである。》

     この分析は、著者も言うように「ヒトラー演説についてのイメージをおそらく最も大きく裏切る事実」を明かしたものであり、本書の白眉と言える。

     そして晩年になると、ヒトラーは精神的にも肉体的にも衰え、演説もボロボロの状態になっていく。独裁者の末路は、やはり惨めなものなのである。

     本書は、ヒトラー演説のレトリックや使用語の分析などが、一般書にしてはトリヴィアルにすぎる面もある。しかし、全体としては十分に面白い本だ。

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著者プロフィール

学習院大学文学部教授

「2019年 『断絶のコミュニケーション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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