地方消滅 - 東京一極集中が招く人口急減 (中公新書)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121022820

作品紹介・あらすじ

このままでは896の自治体が消滅しかねない-。減少を続ける若年女性人口の予測から導き出された衝撃のデータである。若者が子育て環境の悪い東京圏へ移動し続けた結果、日本は人口減少社会に突入した。多くの地方では、すでに高齢者すら減り始め、大都市では高齢者が激増してゆく。豊富なデータをもとに日本の未来図を描き出し、地方に人々がとどまり、希望どおりに子どもを持てる社会へ変わるための戦略を考える。藻谷浩介氏、小泉進次郎氏らとの対談を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 少し前の本ですが、人口減少モデルはかなり精度が高く、私の住む地域はこの当時のモデルから大きく乖離していません。
    換言すれば、この本で書かれている地方を活性化させる手段を、自分の住む街は実行していないという実情があるということです。

  • 限られた人の学術問題だった人口減少を、一気に政策課題、社会課題に引き上げた(というよりブームにした)本をようやく一読。
    この問題に関心のある人にとっては大きなテーマはすでに馴染みがあるけれど、馴染みがあるものにしたのが2014年のこの本だとも言える。
    ポイントは、やはり具体的に消滅する自治体の名を挙げたことだろう。自分ごと化させるにはこらは取るべき手法。

    政策支援で出生率は上げられても、手を打つのが遅いと効果は出ない。なぜなら子どもを産む若い世代の女性の絶対数が減ってしまっては、一人当たりのこどもの数が増えても焼け石に水だから。だからこそ一刻も早く、と言っているうちに時代はコロナ禍に、、、

    すべての自治体を均等に救おうとしても不可能、せめて各地方の拠点都市を人口流出の防波堤に、すなわちダム化する、という指摘も考えさせられる。

    個々人の生き方に関わる問題だけに意見を言うにはデリケートさが必要なテーマだし、実際いろいろな考え方があってよいが、こどもを産みたい、育てたい、という望みを持つ人のことを社会全体で応援すること、くらいは実現できる国力を維持できないものか。

  • 増田寛也(1951年~)氏は、東大法学部卒、建設省勤務(その間、千葉県警、茨城県庁等への出向あり)、岩手県知事(3期)、総務大臣(内閣府特命担当大臣)、東大公共政策大学院客員教授、野村総合研究所顧問等を経て、現在、日本郵政(株)社長。
    私は新書を含むノンフィクションを好んで読み、興味のある新刊はその時点で入手するようにしているが、今般、過去に評判になった新書で未読のものを、新・古書店でまとめて入手して読んでおり、本書はその中の一冊である。(本書は2015年の新書大賞)
    本書は、著者が座長を務めた、民間の政策提言機関「日本創成会議」の「人口減少問題検討分科会」が、2014年に発表した「ストップ少子化・地方元気戦略」の検討結果を中心に書籍化したものである。いわゆる「増田レポート」と呼ばれる報告書の中では、全国の896の自治体を「消滅可能性都市」として名指しで公表したことから、その反響は非常に大きかった。
    私は、消滅可能都市が名指しされているということで、少々悪趣味なレポートという印象を持っていたのだが、本書を読んでみると、内容は事実・データに基づいた至極真っ当なもので(当然と言えば当然なのだが)、広く認知されて然るべきものである。尚、消滅可能性都市については、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口(平成25年3月推計)」をベースに、その前提を、「地方からの人口流出は一定の収束がある」から、「現在と同程度の人口流出が今後も続く」に変えたもので、その結果、2010~40年の30年間に、人口の「再生産力」を示す20~39歳の女性人口が50%以下に減少する市区町村は、全国1,800の地域の49.8%に当たる896(うち、人口1万人未満となるのは全体の29.1%の523)と推定され、それらの地域は存続できなくなる可能性が高いとされたのである。
    そして本書では、その原因を、①日本全体の人口減少と、②地方から大都市圏への人口(特に若年層の)移動とし、それぞれへの対応の提言がなされている。①については、若年層の収入の安定化(「若者・結婚子育て年収500万円モデル」)、結婚・妊娠・出産・子育ての支援、ワークライフマネジメントの推進、女性活躍・登用の推進、高齢者の再活用、海外高度人材の受入れ、②については、地方中核都市の機能・再生産能力の向上、小規模自治体のコンパクトシティ化、子供や若者にとっての魅力ある街作り、中高年の地方移住の支援、スキル人材の中央から地方への再配置、地方金融の再構築、農林水産業の再生、等で、(今や)特段目新しいものではないが、コロナ禍により否応なく進んだ働き方改革や生活様式の変化は、これらの対策推進の後押しになるだろう。また、実際に若年女性人口が増加している自治体を、「産業誘致型」、「ベッドタウン型」、「学園都市型」、「コンパクトシティ型」、「公共財主導型」、「産業開発型」の6つのモデルに分類した上で、「産業開発型」で成功している、秋田県大潟村(農業)、福井県鯖江市(中小製造業)、北海道ニセコ町(観光)、岡山県真庭市(林業)等の取り組みも紹介されている。
    更に、巻末には、藻谷浩介氏、小泉進次郎氏と宮城県女川町長・須田善明氏、慶大教授・樋口美雄氏との、3つの対談が載っているが、私は今般、藻谷氏の『デフレの正体』、『里山資本主義』も併せて読んでおり、全体としての認識が深まった。
    日本に起こっている事実、また、(対策を打たなければ)遠からず必ず起こる状況を、正しく認識するために、一読しておいていい一冊だろう。
    (2022年10月了)

  • 【感想】
    地方が消滅するというよりも、国全体の人口がグロスで減少することが1番の問題。どのビジネスも今みたいに快適にできなくなるだろう・・・
    また、国内でできるであろう対策なんてたかがしれている。人口のパイの取り合いになるだけで、延命にすらならない。
    どれだけ頑張っても国内だけでは解決できない。
    (海外の人口も、将来的に国内の産業が衰退したら中々集まらなくなってくるのでは?)

    ドメスティックな国民性だと、今後世界でやっていけないなぁ。まぁ、対策に関しては、現時点でどうこう言えないから読むのを割愛。
    人任せだが、「その時は誰か(もしくは何か)が何とかするだろう」と楽観的に思いつつ、読了。


    【内容まとめ】
    1.2010年に1億2,806万人、2050年には9,607万人、2100年には4,959万人
    わずか100年足らずで人口の40%、明治時代の水準まで減少する。


    【引用】
    ・7割に減る人口
    2008年をピークに人口減少に転じる。
    2010年に1億2,806万人
    2050年には9,607万人
    2100年には4,959万人
    わずか100年足らずで人口の40%、明治時代の水準まで減少する。

    戦後の1947年~1949年は第一次ベビーブームで4.32%
    2005年は過去最低の1.26%
    2013年には1.43%まで回復。だが依然として低い水準←2050年に人口が約7割に減少する。
    人口数維持に必要な出生率「人口置換水準」は2.07%

    p19
    大都市への若者流入が人口減少に拍車を
    →若年層の出生率は低く止まっている。
    ・子どもを産み育てる環境として必ずしも望ましくない。
    ・初婚年齢の上昇、結婚しづらい環境。
    ・親が地方なため家族の支援が得にくい。
    ・隣近所との付き合いが希薄

  •  いわゆる増田レポート。話題のこの本が起点となって、記事・論文・書籍で反応があった。固い話題なので、それまでの蓄積は踏まえられていたのは幸い。
     一応、章末に担当者・担当部署が明記されている(しかし目次に書いてもよかったはずだ)。一番の問題点は、実際の担当者が誰か(分科会メンバーのうちの誰か)、本書だけでは分からないこと。

    【版元】
    http://www.chuko.co.jp/shinsho/2014/08/102282.html

    【執筆】
    編著:増田 寛也[ますだ・ひろや] (1951-) 元・官僚、政治家。刊行当時の肩書は、「日本創成会議人口減少問題検討分科会座長」。

    ◆ 日本創成会議 人口減少問題検討分科会 ◆
    岡本 保[おかもと・たもつ] 野村資本市場研究所顧問
    加藤 久和[かとう・ひさかず] 明治大学教授
    齊藤 英和[さいとう・ひでかず] 国立成育医療研究センター副周産期・母性診療センター長
    白波瀬 佐和子[しらはせ・さわこ] 東京大学大学院教授
    高橋 泰[たかはし・たい] 国際医療福祉大学大学院教授
    橘・フクシマ・咲江[たちばな・ふくしまさきえ] G&S Global Advisors Inc. 社長
    丹呉 泰健[たんご・やすたけ] 前内閣官房参与
    樋口 美雄[ひぐち・よしお] 慶應義塾大学教授
    平田 竹男[ひらた・たけお] 内閣官房参与
    森地 茂[もりち・しげる] 政策研究大学院大学特別教授

    【目次】
    目次 [i-vi]
    地図 [vii]

    序章 人口急減社会への警鐘 001
    七割に減る人口
    もはや目を逸らせない
    九つの誤解
       第一の誤解:本格的な人口減少は、五〇年、一〇〇年先の遠い将来の話ではないか?
       第二の誤解:人口減少は、日本の人口過密状態を解消するので、むしろ望ましいのではないか?
       第三の誤解:人口減少は地方の問題であり、東京は大丈夫ではないか?
       第四の誤解:日本全体の人口が少なくなるのだから、東京に人口を集中し、生産性を向上させたほうがよいのではないか?
       第五の誤解:近年、日本の出生率は改善しているので、このままいけば自然と人口減少は止まるのではないか?
       第六の誤解:少子化対策はもはや手遅れであり、手の打ちようがないのではないか?
       第七の誤解:出生率は、政策では左右されないのではないか?
       第八の誤解:「子育て支援」が十分な地域でも、出生率は向上していないのではないか?
       第九の誤解:海外からの移民を受け入れれば、人口問題は解決できるのではないか?

    第1章 極点社会の到来──消滅可能性都市896の衝撃 011
    少子化に歯止めはかかっていない
    出生率回復は早いほどよい
    三段階の人口減少プロセス
    地域格差を生んだ「人口移動」
    大都市への若者流入が人口減少に拍車をかけた
    地方の「消滅可能性」とは
    人口移動は収束しない
    八九六の消滅可能性都市、そのうち五二三はさらに深刻
    「極点社会」の到来
    人口のブラックホール現象

    第2章 求められる国家戦略 037
    「マクロ政策」や「地方分権論」を越えて
    かつての「国家戦略」の失敗
    積極的政策と調整的政策
    総合戦略本部と地域戦略協議会の設置
    長期ビジョンと総合戦略の策定

    第3章 東京一極集中に歯止めをかける 017
    「防衛・反転線」の構築
    周囲の都市、過疎地域への影響
    地方中核都市の役割
    コンパクトシティ
    若者を呼び込む街にするために
    中高年の地方移住の支援
    地域経済を支える基盤づくり
    「スキル人材」の再配置
    地域金融の再構築
    農林水産業の再生
    五輪を機に東京圏は「国際都市」へ

    第4章 国民の「希望」をかなえる──少子化対策 069
    「希望出生率」は一・八
    人口の超長期推計
    若者・結婚子育て年収五〇〇万円モデル
    結婚・妊娠・出産の支援
    子育ての支援
    企業における「働き方」の改革
    長時間労働の是正が急務
    企業への評価
    ワークライフマネジメントの実現を
    女性の活躍推進
    女性登用の推進
    「高齢者」の定義の見直しを
    新たな費用は高齢者政策の見直しから
    海外の「高度人材」の受け入れ

    第5章 未来日本の縮図・北海道の地域戦略 095
    人口減少社会日本の縮図
    人口を「全体的」に分析する
    人口を「重層的」に分析する
    市区町村の分析
    地域圏の分析──ダム機能の実態
    釧路圏──主力産業の衰退が人口減少に直結
    旭川圏──若者の流出と高齢者の流入
    北見圏──人口流出の加速と周辺人口の枯渇
    帯広圏──農業を基盤とする安定的な構造
    札幌大都市圏の分析
    第一の基本目標──「地域人口ビジョン」の策定
    第二の基本目標──「新たな地域集積構造」の構築
    ニセコ町、中標津町、音更町に見る「地域の力」
    総人口を維持するために

    第6章 地域が活きる6モデル 125
    若年女性人口増加率ベスト20
    産業誘致型
    ベッドタウン型
    学園都市型
    コンパクトシティ型
    公共財主導型
    カギを握る産業開発型
    秋田県大潟村(農業)
    福井県鯖江市(中小製造業)
    北海道ニセコ町(観光)
    岡山県真庭市(林業)

    対話篇1 やがて東京も収縮し、日本は破綻する[藻谷浩介×増田寛也] 141
    JR東日本とトヨタだけが知っている
    出生率が上がっても子どもの数は増えない
    高齢者がいなくなり行き詰まる地方
    東京は「人口のブラックホール」
    「撤退戦」を本気でやるしかない
    地方に「去る」若者に見るかすかな希望

    対話篇2 人口急減社会への処方箋を探る [小泉進次郎×須田善明×増田寛也] 157
    確度の高い人口予測
    人口減が前提の復興になる
    縮小に向けた住民合意をどう取りつけるか
    「現代版参勤交代」で国と地方を俯瞰する
    「希望出生率」を評価基準に
    東京への流出を止める
    人口「急減」を避けるために

    対話篇3 競争力の高い地方はどこが違うのか [樋口美雄×増田寛也] 179
    有効な対策を立てられるのか
    就業率と出生率の関係
    地域の特性と格差
    グローバル経済とローカル経済
    地域特性を活かした六つのモデル


    おわりに──日本の選択、私たちの選択(二〇一四年七月 増田寛也) [200-204]
    参考文献 [205-206]
    メンバー紹介 [207]
    全国市区町村別の将来推計人口 [208-243]

  • 増田寛也編著「地方消滅~東京一極集中が招く人口急減」。なかなかショッキングな話のオンパレード。若者が地方から東京に出る、しかし仕事がないから収入少なく結婚も出産もできない(出生率1.07と全国最低)。間もなく東京は高齢者の町になってゆき、地方は若者が減り消滅の危機、しかも日本の出生率はガタ落ちとなって、日本全体が負のスパイラルに落ちてゆく・・・。ところで、2040年には人口減により消滅する可能性の高い市町村として、鳥取・島根の過半が、広島県でも安芸太田町、神石高原町、大崎上島町と三つが挙げられている。まったくの他人事ではない。

  • 男性の視点でしか書いてないなと残念です。
    今の日本は、仕事をしろ、子どもを産めなど女性に対して圧力をかけています。
    現実はいざ出産しようとしても地方都市には産婦人科が少ない。里帰り出産もできない状況です。保育園、教育にもお金がかかり過ぎる。子どもが欲しくても諦める若い人たちが多いこと、仕事がないだけでなく老人施設はあっても出産施設のない地方に帰りたくても帰れないことも知って下さい。

  • 日本の人口減少、限界集落の増加という現実はなんとなく国民の中に情報としては入ってきているが、いまひとつ実感に乏しいのが現状である。

    本書において、まさに日本国民全体にとって喫緊の課題であり、現在の地方創世議論ともつながっていることが再確認できた。
    具体的には、
    ●出生率の上昇(人口維持に必要な2.1)までしても人口減少が止まるのは60年後となる。
    ●自然増減だけではなく、人口の流出入である社会増減の影響は甚大。
    ●東京における一極集中は、東京そのものにも悪影響を及ぼし、やがて東京も収縮する要因になる。
    ●地方に若者が留まれる、地方創生は東京も含めた日本全体の処方箋となる。
    ●人口の推移はあらゆる政策に使用されるデータの中でも最も正確である。
    以上わかりやすい。もっと前に少子化対策ってできんかったんかい!と政治にいらだつ。

  • 新聞等でも盛んに話題になった、「2040年までに地方自治体は半減する」という衝撃の「増田レポート」の中身を知りたくて読んでみた。今後、日本の人口が減少していくという話は、何となくみんなが知っていることだが、具体的に書かれていることを読んでみると恐ろしくなる。単純に晩婚化、少子化といったことに加え、地方から都市への若年女性の流出によって、地方の人口減少は加速度的に進むというのは正にその通り。本書では、その対策として地方中核都市にダム的役割を担わせ、都心部への人口流出を食い止めることが有効であるとしているが、今後の政策においてそれがどこまで実行されるのか、正直難しい部分は多いと思う。最後に、対談形式でこの問題が語られる部分は素人にも実にわかりやすく、スッと頭に入ってくる。

  • 5章あたりから俄然面白くなった。
    この本を読んで改めて人口動態・少子高齢化問題・地方創成に興味をかきたてられた。 データを元に現実的な解決策を模索していく事が重要だ。国・政府だけでなく企業・個人単位で問題意識を持ち、どうやって将来のグランドデザインを描いていくかが求められる。
    本書にある”人口の「急減」を阻止し、同時に「減少」をメリットに切り替えていく”という主張が深く心に残った。地方拠点都市で生活するものとして、自分に出来ることから少しずつでも取り組んでいきたい。

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