日本政治とメディア - テレビの登場からネット時代まで (中公新書 2283)
- 中央公論新社 (2014年9月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121022837
作品紹介・あらすじ
1953年のテレビ放送開始は、政治家とメディアの関係を大きく変えた。政治家たちは出演してPRに努める一方、時に圧力をかけ、報道に影響を与えようとする。佐藤栄作政権で相次いだ放送介入、田中角栄が利用した放送免許、「ニュースステーション」の革命、小泉フィーバー、尖閣ビデオ流出事件、そして橋下徹のツイッター活用術まで、戦後政治史をたどり、政治家と国民とのコミュニケーションのあり方を問い直す。
感想・レビュー・書評
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【目次】
まえがき [i-iii]
目次 [iv-ix]
主要政党と首相の変遷 [x-xi]
第1章 テレビの登場と自民党の成長 001
1.1 鳩山一郎と石橋湛山の“空中戦” 001
テレビ放送開始/吉田茂vs. 鳩山一郎/政治家のテレビ出演/ラジオと政治/占領期とラジオ「改革」/「日曜娯楽版」の時事風刺/鳩山一郎のPR/石橋湛山、幻の広報番組/二・三位連合/「マスコミにとらわれた」石橋/岸信介のニコニコ答弁
1.2 安保とテレビ 024
テレビ時代の到来/「重たい安保」が盛り上がるまで/デモと新聞/安保改定を認めていた新聞/安保を熱心に報じたテレビ/テレビがつくったムード/マスコミ対策の手抜かり
1.3 池田勇人のマス・コミュニケーション 039
PRの課題と順番/池田勇人のイメージチェンジ/所得倍増計画の発表/浅沼刺殺と百姓演説/花より団子/初のテレビ選挙/三つのコミュニケーション・ルート/「政調」と「組織」のルート/自民党の広報体制/個人後援会と派閥/派閥争いの激化/池田PRが招いた「消費革命」/続くテレビ利用/池田が生んだ大衆と世論
1.4 佐藤栄作のメディア統制 067
「栄ちゃんと呼ばれたい」/テレビへの介入/TBS成田事件/都市部での苦戦とタレント議員
第2章 派閥政治のコミュニケーション 079
2.1 田中角栄と放送免許 079
外務省機密漏洩事件/テレビはどこかね?/田中のメディア/出演民間放送のはじまり/民間ラジオ局の誕生/民間テレビ局の誕生/第一次チャンネルプランと田中/田中のテレビ「支配」/都市にうけない列島改造論/『文藝春秋』一九七四年二月号/田中角栄の退陣
2.2 三福大と世論 105
三木武夫と世論/ロッキード事件/「テレビの影響力は大きい」/妥協と敗北/自民党の停滞と党改革/「天の声にも変な声がある」/経済から文化へ/悪化する財政/やりすぎた小手先細工/公費天国/四十日抗争と大平の死/NHK的ニュースの誕生/ニュースセンター9時/ロッキード事件とNHK/NHKと政治/ENGの導入/政治情報の変化
第3章 「テレビ政治」の時代へ 137
3.1 鈴木善幸、マスコミ対応の甘さ 137
大平の死/鈴木善幸の「和の政治」/日米同盟事件/シーレーン発言/すれ違いはなぜ起きたか/「暗愚の帝王」/評価されなかった財政再建/土光臨調に縛られる/降板を招いた「甘さ」
3.2 中曽根政権を支えた「支持率」 155
中曽根のテレビ観/パフォーマンスと統制/イメージチェンジ/闇将軍との暗闘/ダブル選挙圧勝と売上税の失敗/中曽根とポピュリズム
3.3 ニュース戦争と自民党大敗 168
「楽しくなければテレビじゃない。」/素人の時代/ニュースステーション/高視聴率と「報道の時代」/「朝まで生テレビ」と「サンデープロジェクト」/竹下登の消費税戦略/リクルート事件/日本テレビのスクープ映像/政治改革元年/宇野スキャンダル/テレビに出ない社会党/土井ブーム/海部首相を生んだ「アブノーマルな雰囲気」/二人の女性閣僚/活発な空中戦/「手負いの自民党は恐ろしい」
第4章 政権交代と無党派の急増 199
4.1 「政治改革」と細川政権 199
総裁選の道具として/YKKと海部おろし/落ち込む支持率/自民党のニュースステーション批判/東京佐川急便事件/「改革派」vs.「守旧派」/金丸邸の金の延べ棒/首相記者会見・懇談の実施要領/「私はウソをついたことはありません」/自民党分裂から総選挙へ/椿事件/自民党の油断/テレビ番組上での合意/細川政権の発足/左斜め前から撮られたい/対話ではなくモノローグ/腰だめの数字
4.2 自社さ政権と無党派時代の到来 231
自民党の広報強化/村山自社さ政権/自社さのコミュニケーション/テレビが制作説明の舞台に/無党派層を急増させた「裏切り」/青島・ノック現象/九五年参院選の低投票率/政治広告元年/萎縮、萎縮の選挙報道/組織の勝利/勝利への確信/過去と全く異なる敗北/冷めたピザ/不人気からの巻き返し/ブッチホン/矛盾と死
第5章 小泉の熱狂からネット時代へ 265
5.1 小泉マジック 265
森首相誕生と「密室」批判/失言に次ぐ失言/加藤の乱/えひめ丸事件と森の退陣/民主党の成長/田中眞紀子の後押し/熱狂と勝利/自民党をぶっ壊す/「第三列」メディアの重視/ぶら下がり/無党派支持の回復/眞紀子更迭と「小泉離れ」/北朝鮮拉致被害者の帰国と世論/選挙に弱い小泉/「改革」隠しの自民党/郵政解散/刺客騒動、興奮するテレビ/視聴率のとれる政治
5.2 キャラの時代のKYたち 299
キャラの時代/世論調査の流行/安倍政権のコミュニケーション/スキャンダル・失言・消えた年金/赤城の絆創膏/士大夫・福田のわかりにくさ/「あなたとは違うんです」/麻生太郎の人気の上下/漢字が読めない
5.3 民主党とネット政治 316
小沢vs.マスメディア/二○○九年総選挙と政権交代/民主党政権のつまずき/「ルーピー」鳩山ド菅政権と消費税増税/民主党のミッドウェー/尖閣ビデオ流出事件/インターネットと日本政治/ネットの「マスゴミ」批判/政党とソーシャルメディア/ネット利用の理由/菅政権の失速
終 章 政治コミュニケーションのいま 341
原発事故と政治コミュニケーション/橋下徹のツィッター利用術/安倍の復活/第二次安倍政権は何に学んでいるか/いまこそ政党というメディアを
あとがき(二〇一四年八月 逢坂巌) [351-354]
注記 [355-365]
主要参考文献 [366-371]
関係略年表 [372-376]詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
S312.1-チユ-2283 300373529
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貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784121022837 -
戦後政治とメディア、特にテレビとの関係史。政府や政治家らのテレビ利用と統制、テレビの政治報道と政治構造の相互関係の変化がわかる。特にマスメディアとのコミュニケーションが政権の興廃を左右する要因となり、政治言論が政治家の「瞬間芸」に矮小化していく過程が実証的に明示されている。現在、安倍政権・自民党による言論弾圧、メディア統制が問題になっているが、それは安倍政権特殊の一過性の問題ではなく、戦後政治の初めから一貫して存在していたことが確認できる(放送免許取り上げや広告引き上げを盾にした恫喝は55年体制期から横行していた)。現在のポピュリズム状況の歴史的経緯を考える上で基礎的な文献であろう。
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権力者がテレビをどう利用してきたか、テレビにどう利用されるようになったか。権力者→メディアだけではなく、メディア→権力者、といった双方向性、時代によるコミュニケーションの変化を意識していて良い。通史と言うには粗末なところはあるが、ここでされているような議論(政治パフォーマンス、広報の時代史)が精緻化されていくともっと面白くなる気がする。社会背景をもっと分析してもよかった。
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戦後のテレビ放送開始をテコに、政治家とメディアの関係を過不足なく綴っている。淡々とした語り口に好感。新聞やテレビ、そしてネットには、それぞれの長短があって、如何に政治家と政党が乗り越えようとしてきたのかが、概観できる。
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約60年間の政治とマスメディアの関係を詳細に分析した労作。
マスメディアを制するものは政治を制す。まさに政治コミュニケーション。
でも、ポジティヴ・ネガティヴな「統制」にも着目してね。最近ではSNSを使った「牽制」もやっているんだとか…
最後に著者は言う、「政治と国民をつなぐメディアである政党を、どのように創造できるか」と。
なるほど…(`_´)ゞ -
2015年1月新着
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政治とメディアの関係を中心に日本政治史を語った本。どうも記述が政治よりだったり、あるいはメディアがどう発達したかという話になったりとちぐはぐな印象を受けるとことがあった。しかし、政治とメディアの関係は切っても切れないので、この着眼点で書かれた本書は貴重だと思う。
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主に自民党について。古い時代の政局についてはほとんど知らなかったので、ふむふむと思いながら読んだ。