教養としての宗教入門 - 基礎から学べる信仰と文化 (中公新書 2293)
- 中央公論新社 (2014年11月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121022936
作品紹介・あらすじ
キリスト教やユダヤ教、イスラム教とヒンドゥー教、そして日本でもなじみのある仏教や神道など世界でも有名な八つの宗教をテーマごとに解説している本です。しかし教養としての宗教入門は宗教の教えを神について説いているのではなく、あくまでも教養としていろいろな見方や考え方があるのだということを教えてくれる一冊です。
感想・レビュー・書評
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「宗教入門」ではあるものの、いわゆる宗教だけでなく、文化として生活習慣に融合されている宗教的なものの存在に気付かされました。
日本人は無宗教と言われていますが、例えば毎朝のラジオ体操はムスリムの礼拝と同じような身体的習慣であり、見方によっては宗教的でもあるとのこと、なるほどなぁ!と思いました。
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宗教とは何か。
日本人にはなじみの薄い世界の8つの宗教をテーマで切り分ける宗教ガイド。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教、ヒンドゥー教、儒教、道教、神道の8つの宗教を分かりやすく解説したガイド本です。
あらゆる宗教から距離を置いたうえで、教養として様々な宗教やその歴史、背景にある文化などを広く浅く知りたいという方向け。
入門というだけあって、表紙やタイトルのイメージほど難解ではなく、読みやすいです。どれかの宗教に偏らず、俯瞰した視点で書かれているのでどの宗教の話も頭に入ってきやすい気がします。所々そんな書き方して大丈夫? と思ってしまうようなところもあり、エッセイのような趣もある気がしました。教養本としてだけでなく、純粋に読み物としても面白い。
どんな宗教も一概にこういうものとは言えず、他の宗教や考え方との混合や変遷があったりだとか、現代における諸宗教は宗教的戒律と政治的・社会的システムなどとの摩擦やギャップを引き起こしやすいという話は特に興味深く読みました。
次は近現代における宗教問題についても調べたいです。 -
宗教についてちょっと勉強してみたいけど,ほぼ知識がないので,まずは全体の概要をということで購入.
世界の宗教について,とてもわかりやすくまとめられており,ありそうで意外とない良い本.
歴史的背景や教義,戒律,儀礼など,学校で習うような事柄が整理されていて,まさに「教養」として身につく感じ.
この知識があれば,近代〜現代史がもっと腑に落ちる気がした.
ユダヤ教は「規則を守る」ということそれ自体に意味があるというのが興味深かった.規則を守るのは手段ではなくて目的.規則を守ることによって救われるという考え方.
対してキリスト教は,「規則を完璧に守るのって難しいよね,人間だもの」っていうちょっと緩い感じ.「そんなあなたも救ってあげるよ,私を信じなさい」っていのは,失恋で傷ついた弱みにつけこむズルさに似たものを感じた.でもこのロジックは強いよね.消えない罪悪感を誰かに許してもらいたいっていう深層心理を上手く突いている.
また,イスラム教は「規則を守ろう.でも,BestEffortでいいよ,無理はすんなよ」っていうこちらも緩い感じ.イスラム教ってもっと厳格なんだと思ってたので意外だった.
世の中,キリスト教とイスラム教が多いことを見るに,人間はやっぱり不完全な生き物なんだなぁと思った. -
宗教についてビギナーでも読める広く易しい本が欲しくて、評価の高かった本書を購入。
なるほど、確かに読めないほど難解ではない。
一つ一つがプツプツと置かれている部分もあるが、キリスト教、イスラム教、仏教など、それぞれを対比させながらシステムの共通項や相違を述べてくれているのはありがたい。
「おわりに」で「宗教や伝統に対して、少し突き放したような視点で書かれた本書」とあって、突き放すどころか、アンチテーゼ(とまで言えるか分からないが、浮かんだので。)のようなコメントもあって、まさに教養として「宗教」とは、いや、人が形のない何かを信じ、祈り続けられることの根源を考えさせられる。
現代にあって尚、人が命を賭して信仰を遂げる事象は数限りない。
宗教同士の相対的矛盾や科学的矛盾も含まれているであろう聖典を真理とし、絶対的な行動規範とする人もいる。
このように今日まで絶えることなく、弾圧されようと手を広げ続ける宗教というもののシステムと力は、いわゆる無宗教の私から見ると空恐ろしいものがある。
「身体的な習慣を重んじるという意味で日本人もイスラム教徒も共通したところをもっているが、しかし、日本人が好むのは、無意識的になじんでいく儀礼であり、アッラーが教えているのは、意識的にコミットする戒律である。」
「ほとんどの人にとっては、宗教とは生活習慣の一種なのである。戒律は生活習慣をスリムにするための有効なメニューだと言えるかもしれない。」
「神仏とは、人間どうしで話すときのような普通のコミュニケーションの中に姿を現わすものではなく、何らかの演劇的な演出のうちに感得されるものであるらしい。いずれにせよ、儀礼という動作を伴うことは、宗教が単なる概念や観念だけのものでないことを教えてくれる。」
「自分たちの宗教的世界を防衛しようとすれば、多かれ少なかれ閉鎖的にならざるを得ないが、思想の点で閉じれば『原理主義』になるし、空間的に閉じれば文字通りのカルトとなる。」 -
宗教から一定の距離を取った視点で茶化さずに真面目に書かれている。普通の当たり障りのない宗教紹介本かと思いきや、しっかり主張がある。印象に残ったところ抜粋。
〜文化としての宗教のもつ「失敗のアーカイブズ」としての役割は大きい。〜そういう意味で我々は、個人的信仰とは別次元の、文化としての宗教という歴史的共有財産に、もっと注意を払うべきなのではないだろうか。
ドライな切り口カッコいい。
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「教養としての宗教」ガイドとして、「広く浅く」世界の宗教について解説。本書では、深い信仰を前提とする「濃い宗教」、文化や共通語彙としての「薄い宗教」という2つの宗教のレベルを提示し、それぞれについて、宗教全体を通ずる概論を行った上で、宗教の仕掛けとして「戒律」と「儀礼」について解説し、最後に、世界の主な宗教として、①ユダヤ教、②キリスト教、③イスラム教、④仏教、⑤ヒンドゥー教、⑥儒教と道教、⑦神道と日本の民族世界について概説している。
まさに「教養」として宗教を概観するのに適した一冊。日本は無宗教といわれるが、東アジア世界はそもそも宗教については「チャンポン型伝統」があり、日本もその延長線上にあるといった著者の指摘はなかなか含蓄があって面白いが、本書は全体的にエッセイ的な論調で、著者の主観的見解が多いような気はした。 -
宗教、と耳にすると、正直身構えてしまう自分がいて、その上、昨今のイスラム国大暴れ報道を見て、いよいよ宗教ってどうなのよ?と思ったりしたけれど、そんなときこそしっかり基礎を知ってみようと思い立ち、読んでみた。
宗教って何だろう?と言う基本を具体的な宗教を例に取りながら、歴史的、地域的、文化的な観点からスッゴくわかりやすく説明した一冊。
著者が最初に示しているとおり書き方が「中立的」なのでこの宗教最高!!とか偏りがなく成り立ちとか特徴とかを淡々と説明されていて、読んでいると素直に読めるのは良かった。ただ途中「おおおそんな事書いちゃって怒られないか?」とか心配になる表現もあった気がするけど。
まず宗教って一概に定義できないって事がよくわかった。もちろん信仰対象があったり教義があったり戒律があったり共通する点はいくつかあるものの基本は自由で様々なのねぇと。あと神と仏の違いとか、信仰には薄い信仰と濃い信仰があるとか。アメリカ人のほとんどは薄い信仰らしい。以前、外人は君の信仰はなんだ?とすぐに聞いてきて、答えられないと一人前に見られない、と聞いた記憶があるけど実際はそんなの大嘘らしい。だよねぇ。
まぁ要するに人間は生きる上で希望が欲しい訳で、その希望としての信仰、ってのが一番ポピュラーなんだなぁと。人間そこまで強くないし、その逃避の先に宗教があるとも言えるかな?
あとは宗教は行動様式でもある、ってのはわかりやすいね。そう考えると日本人は無宗教ってのは違うって話になるよと。まぁ宗教って俺が考えていた以上に自由で適当と言うことがわかった気がする。
宗教はこれ!こんなものだ!って思いこんだりはいけないよ、とかそんな事思いました。 -
冗長な語り口で読みやすい
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要所要所が抑えてあり、歴史的流れや、地理的な解説もあってとても分かりやすく面白い本だった。この本をとっかかりにして、取り上げられている宗教を勉強するのも良いと、あえて取り上げていないものを調べてみるのも面白いように思う。
著者いわく、すこし突き放した形で記述してある。けれど敬意は充分に感じられた。
この本の前に読んだ中野京子著『残酷な王と悲しみの王妃』についての解像度が、かなり上がったのは良い副産物だった。