- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121023032
作品紹介・あらすじ
殷王朝は、今から三〇〇〇年以上も前に中国に実在した王朝である。酒池肉林に耽る紂王の伝説など、多くの逸話が残されているが、これらは『史記』をはじめとする後世の史書の創作である。いまだ謎き殷王朝の実像を知るには、同時代資料である甲骨文字を読み解かねばならない。本書は、膨大な数にのぼる甲骨文字から、殷王朝の軍事や祭祀、王の系譜、支配体制と統治の手法などを再現し、解明したものである。
感想・レビュー・書評
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新しく出土した甲骨文字や金文から当時の出来事や社会について解釈してあります。後世にいかに物語が作り替えられたか?も想像でしかありませんが味わいは尽きません。
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史記等の後代編纂物の記述からは距離を置き、同時代資料である甲骨文字を中心に殷代の歴史を復元する内容。正直なところ甲骨文字については拓本の例示を見てもよく分からないが、再現される著名な文献史料と異なる世界が刺激的で面白い。
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存在する中国最古の王朝とされている殷王朝について,甲骨文字の資料よりその歴史を考察する本。どこまでが史実でどこからが後世の創作なのかが難しい分野。
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歴史は、都合の良いように変えられる。人の解釈と同じく自分の都合の良いように。中央集権化による反発が殷の滅亡。殷が今の中国や日本の礎となる事をしていた。多面的な物の見方と温故知新の大切さをあらためて実感
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あ・・読み辛いっと~序章:甲骨文字に記された殷王朝の社会(殷王朝の伝説と甲骨文字の発見・甲骨文字の研究史・甲骨文字の資料的価値)第1章:殷王朝の前期・中期(二里頭文化の王朝・殷王朝の成立・殷代の文明・支配領域の拡大・殷代前期の系譜・殷代中期の混乱・推定される王統・地理的分裂と再統一《系譜の合成》)第2章:殷王朝の支配体制(甲骨文字の時期区分・各地の敵対勢力・王の軍事力・殷代の武器・殷代の地方領主・地方領主の動員・殷代後期の支配体制《古代中国の姓》)第3章:神々への祭祀儀礼(自然への畏れ・祖先神への祭祀・信仰の政治的利用・壮麗な青銅器・祭祀犠牲とその意義・殷代の奴隷・奴隷の供給と消費・「神権政治」とは何か《古代文明の公共事業》)第4章:戦争と神秘性による支配-紀元前十三世紀(殷の中後期・第一期の戦争・武丁代の「子」・二種類の「子」・帝への信仰・甲骨占卜の改竄・武丁のカリスマ支配《武丁代の「婦」》)第5章:政治の転換と安定期の到来-紀元前十二世紀(王位継承者は誰か・殷代後期の系譜・対外政策の変化・狩猟の政治利用・信仰と祭祀の変化・安定期の到来《二系統の甲骨文字の謎》)第6章:動揺、集権化、そして滅亡-紀元前十一世紀(「酒池肉林」の説話と実在の帝辛・対外戦争の再発・狩猟日の増加と戦争の勝利・先王祭祀の盛行・特異な暦「週祭歴」の復元・第五期の期間の修正・戦争の年代・王権の増大・盂の反乱と殷の滅亡・反乱の原因は何か)終章:殷王朝の歴史的位置(殷王朝の政治的変遷・殷王朝の遺産・周王朝の新制度・貴族制社会への転換)~まだ論文の書き方で門外漢には退屈すぎる・とは言っても専門家には「おい!どこに証拠がある!」って怒られそうなので、理由を蕩々と述べてしまったって感じ。1974年生まれって、この本が出た頃が41歳で若造だね。一般向けに書く練習をもっとしなさい!研究方法を報告するんじゃないって!あっ、甲骨文字を普通の活字のように載せたのは評価しましょう
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最新の甲骨文字資料による研究の成果をふんだんに盛り込み、中国最古の王朝とされる殷王朝について、王の系譜、支配体制、祭祀、軍事、歴史的位置などの全体像を描いている。ただ、著者は、『史記』等による文献史学には批判的なスタンスを貫いており、「酒池肉林」のような説話は後世の創作に過ぎないと切り捨て、あまり文献史学の成果は取り入れていない。
本書を読んで、甲骨文字資料であっても、現在の漢字、漢文と基本的に変わらずに読解できることに、まず驚いた。また、龍や十干など、現代にまで続く中国文化の原形が殷王朝の頃に少なからず存在していたことにも感慨を持った。
当時は占いや祭祀による政治が行われていたが、当時の占いが骨の加工によってあらかじめ操作されていたという著者の研究成果は非常に興味深かった。祭祀による政治は現代から見れば非合理だが、当時においては、王の行為を正当化し、王の権威を確立するという一定の合理性を持っていたのである。人間社会の制度や構造は、一見すると非合理的であっても、長期間にわたって存続したものには、何らかの合理性が含まれていることが多いのであるという著者の指摘には説得力がある。そして、分権的な支配体制のもとでの合理性によって経営してきた殷王朝が、新しい状況に対処するため急速に集権化に向かったことで、「合理性の衝突」が起き、殷王朝は滅びたのだという。なかなか含蓄のある分析だと思った。
本書は、歴史学研究の醍醐味をよく感じることができる一冊だと感じた。 -
今から3000年以上昔に実在した「殷」王朝。その実態は、当時の文字資料が少なく、また後世の創作的な歴史書のために分かりづらくなっていました。それを数少ない文字資料である甲骨占卜の古代資料から、出来るだけ公平に導き出されています。読んでいて分かるのですが、その論理の導き方、整理の仕方などは、非常に地道で粘り強い根気の必要なものだと思います。その根気を読んで追いかけることで、「殷」という王朝の真実に対して大分迫ることができました。
古代は、確かに現代とは違った文化がありますが、その現実的な部分は今に通じるものであり、古代人の思考なども理解できますし、現代でも似たような事象があることは、著者も最後に少し触られています。
これを契機に、歴史の人々に親近感を持つことができたことも、本書を読んでよかったと思わせていただいた点です。 -
中国史最古の王朝「殷」の歴史を、文献ではなく甲骨文字の解説から丹念に読み解く。『史記』などによる殷の記述は、ほとんどが後代による創作であることも、見事に明らかにしていく。それほど多くない、と思われる甲骨文字からよくぞここまで、思うほど殷王朝の政治支配と歴史が解き明かされていくさまは非常に面白い。
印象的だったのは、甲骨による占いが武丁の時代に「操作」されていたという話。割れやすいようにあらかじめ細工をほどこしたうえで、王による政治的決定の後ろ盾にしていたという。神権政治は単なる「神頼み」ではなく、「神の権威を利用した政治」という位置づけは非常に説得的であった。 -
あとがき243頁:「いずれも一定の合理的が認められている」。
まだ本文を読んでいないので,これが著者の用語法で「合理的な部分」という意味で「合理的」を使っているのかも知れない。
調べてみたら,
甲骨文字の読み方/甲骨文字に歴史をよむ/古代中国の虚像と実像/漢字の成り立ち『説文解字』から最先端の研究まで
著者の本を読むのは,5冊目だった。
ひとまず「合理性」の誤入力だと,かんがえておく。
221頁:酒に肄(なら)いたればなると。
→酒に肄いたればなりと。?