ベーシック・インカム - 国家は貧困問題を解決できるか (中公新書 2307)

著者 :
  • 中央公論新社
3.37
  • (6)
  • (38)
  • (39)
  • (7)
  • (4)
本棚登録 : 411
感想 : 54
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121023070

作品紹介・あらすじ

格差拡大と貧困の深刻化が大きな問題となっている日本。だが、巨額の財政赤字に加え、増税にも年金・医療・介護費の削減にも反対論は根強く、社会保障の拡充は難しい。そもそもお金がない人を助けるには、お金を配ればよいのではないか-この単純明快な発想から生まれたのが、すべての人に基礎的な所得を給付するベーシック・インカムである。国民の生活の安心を守るために何ができるのか、国家の役割を問い直す。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ベーシック・インカムー国家は貧困問題を解決できるか
    著作者:原田秦
    発行者:中公新社
    タイムライン
    http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698

  • ヤバい理論と言われるベーシックインカムを、現在の予算などを考慮して真剣に行うにはどうするかを記した本である。とても現実もがあって面白いと思った。
    ただこれをリアルでやるなら国会が荒れるだろうなあ。

  •  国家の財政はベーシック・インカムに耐えられるのか? 本書はベーシック・インカム最大の問題点と考えられている財政問題に切り込み、そして現在の国民負担をほとんど増やすことなく、成人一人当たり7万円/月程度(子供は半額)のベーシック・インカムが可能なことを明らかにする。
     世界で最悪な部類に入る子供の貧困率、シングルマザーの貧困、そしてこれから確実に増加する無年金の高齢者たち。それらを解消するための仕組みは現在機能しているとは言えない。そこで、生活保護や基礎年金、児童手当、失業手当・・その他の「健康で文化的な最低限度の生活を営む」(憲法25条)ための仕組みをベーシック・インカムに置き換えることで一気に網羅的に(現在では生活保護システムにアクセスできない人が数百万人いると推定されている)、そして単純に解決できる。所得を把握する必要もないので、行政事務コストは限りなく削減できる。それらをベーシック・インカムでは救えない、経済的ではない困難を抱える人々の救済、「本来の仕事」に当たることができる、と著者は言う。
     新書なので各論について十分に詳しいわけではないが、総論においてベーシック・インカムを導入しない、という選択はないほどに説得的な本である。

  • 究極の「バラマキ政策」BIについて初めてまとまったものを読んだ。
    格差社会の現状から説き起こし,思想的系譜を辿った上で,良くある誤解に対するフォローや批判に対する反論を通じて,今の日本においてもBI導入は充分実現可能であると主張している。
    データに基づいて論じているのは好感がもてる。それによると,今の生活保護の水準を上回るような給付額には無理があるようだが,著者はそれでも問題ないとしている。
    子供への給付は「母親の口座に振り込む」とか,狭い仮設住宅より普通の家に二家族で住む方が快適だとか,賛同できない点もいくつか散見されるし,何より現実に問題なく回る制度かどうかについては全く説得的ではなかったのだが,BIの哲学や具体的な中身を知るには良い本だった。複雑極まりない各種社会保障制度を整理していく必要はおそらくあるんだと思う。最終的にBIを目指すにしても,一気に導入というのはとても無理だろう。ある程度の時間をかけて,徐々に一元化していくことになるのかな。

  •  経済学者が語るベーシックインカム。

     前半は話があっちこっち行ってしまってる感があるが、ベーシックインカムの財源について計算されてる第三章は一読の価値あり。BIを現在の予算に上乗せして考えてしまって無理だと言う人がいるが、この本に書かれてるように既存の社会保障に置き換えて行われるものなのである。

  • 興味はあれど、どうも絵に描いた餅に思えてならないベーシック・インカム。機会を見ては議論に触れるようにしてきたが、経済学の素養がさっぱりないこともあいまって、どうにもよくわからなかったり。そんなぼんやりした知見で述べるなら、2015年の今世に出た本書の新しさは、「現状をなるべく変えないように」を基本指針としているところにあると思う。
    全国民にカネをバラマくって、その原資は…?→現状費やしている生活保護費+国民年金+子ども手当+α。逆に言うと、この範囲内で賄える金額しかバラマかない。著者の試算によると月7万円。研究者の中には、左派的な視点からもっと手厚くしろとか、現行の生活保護費8万数千円より低いとは何事か、という主張もあるらしい。だが著者は、7万なら出せるが8万は無理、無い袖は振れない、とバッサリ言い切る。
    全国民にカネをバラマく原資の一助として、ベーシック・インカム7×12=84万以上の所得には一律課税するというが、エッ税金高くなんの…?→最も数が多い中間層に関して、現状の負担とほぼ同じになるようにする。今非課税になっているような人たちにとっては「増税」となるが(もとがゼロなのだから当然)、そのような層には、最低84万円の収入保障は大きな助けとなる。
    つまり、今みんなが払ってる税金の範囲内で、今みんな…ならぬごく一部の人だけが受けている福祉と同じだけを払い戻す。たったそれだけのことで、ベーシック・インカムという、一見夢物語のような制度が充分実現できる。これが著者の主張である。

    もはや「ベーシック・インカムとは何ぞや」の時期は脱したとの判断なのだろうが、社会のコストとシステム的、そして何より人々の精神的に、「無理なく手が届きそう」と思わせる論理展開は画期的だろう。数字に強い人らしく、ちょっとドライに割り切りすぎでは…と思う部分はなきにしもあらずだが、そこは各自補完しながら読めばよい。ひとつの提案として、よくできているように思った。「貧しいとはお金がないことだ。ならば、国がその人たちにお金を配れば、貧困はなくすことができるのではないか」「3.3兆円不足しているという問題を、100兆円かけても解決できないのはなぜなのか」とは、とりもなおさず明快だ。

    なお、日本の生活保護の捕捉率の低さ、つまり「本来必要としているのに受給できていない人の多さ」はリベラル派の声高な訴えによってつとに有名だが、諸外国と比べた場合、支給額の高さもまた飛び抜けていることを、私は寡聞にして初めて知った。
    つまり日本の生活保護は、ごく少数の人に(諸外国の受給者や、日本で受給しそびれている人から見れば)ものすごく手厚い保護を与えるという、とても奇妙なことになっている。それなら、たとえ薄くとも広く、「おにぎり食べたい」と書き残して餓死するような人が二度と出ないようなバラマキをおこなったほうが、まだしも「マシ」なのではないか…この「マシ」という表現を、著者は幾度もくり返す。そこにこそ本書の真髄が表れていると、私は思う。

    2015/2/26〜2/27読了

  • 日本の社会保障制度はこの数十年、その体制をほぼ変わらずに維持しているが、果たしてそれは現代社会と適合しているのか?
    生活保護や年金など、その体制維持が破綻しかけているもの、本来の役割を果たしきれず、真に必要としている人の元へ届いていないものなどの、抜本的な見直しが必要だと感じた。
    また、ベーシック・インカムは現行制度と比べて効率性が高いことが分かった。

  • 最近何かと話題となってるベーシックインカムだけど、それに関して哲学的な問いから現在の政府の問題まで分かりやすく説明されていて面白かった。
    日本の生活保護の金額が他の国よりも高いってのはびっくり。狭く高額に配るよりと、広く浅く配ってほしいな。
    フリードマンの、平等主義者と自由主義者は真っ向から対立するってのは面白かった。 自分は平等主義者よりかも、、、

    自分は経済学者出ないし経済事情について詳しくないけど、本当にこの通りにすすむんだったらぜひベーシックインカムを導入して欲しいと思った。

  • 背ラベル:364-ハ

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001061967

  • BIの議論は、巨額の財政支出が必要という誤解と貧困はお金だけの問題ではないという考え方。

    無駄に働くことは、働かないことのコストよりも大きい。
    労働意欲を阻害するか。
    国民の範囲を限定する。
    夢追い人を増やさないか。

    BIは究極のバラマキ政策。バラマキは悪くない。

  • ■著者が扱っているメインテーマ
    国民の生活を守るためにできることは何か?
    国家の役割を問い直す。

    ■筆者が最も伝えたかったメッセージ
    BIは、同じ財政支出えより効果的に貧困を解決でき、
    福祉の網の目から落ちる人をなくすことができる。
    そのために、現行の雇用維持政策、福祉政策の非効率、寛大すぎる生活保護制度を見直し、それら予算をBIに置き換えれば、国家には十分可能な政策である。

    ■学んだことは何か
    現行の社会保障制度は、必要とすべき人に行き届いていない欠陥があるし、不透明な部分があると感じる。BIはすべての人の生活の安心を与え、現行の欠陥制度を解消できるシンプルでベストな方法だと実感した。

  • BIに関する本2冊目。
    月7万円のBIを水準として、現在の財政的に実現可能であることを示している。
    BIによって、公共事業などで無理やり仕事を作ることをやめることを提言。

    様々な検討がされており、反論にきちんと答えているが、データの出し方や、読み物としてあまりわたしの中には入ってこなかった。BIをしっかり勉強したい、研究したい、という人向け。

  • 貧困を解決するための、ベーシックインカム。
    現在の貧困を解決するための政府の政策は、ほぼ失敗に終わっている。
    一つは、生活保護制度。現状、受け取るための水準が高すぎて、本来もらうべき収入の人々が貰えていない。これは、全国民にBIを給付することで解決できる。
    二つ目は、収入を得るための職業訓練である。
    魚を与えるのではなく、その魚の釣り方を教えなさい。という言葉があるけれども、今のところ、不正などが横行し、失敗に終わっている。
    したがって、BIのように、直接給付つまり、ばらまき政策が、貧困に対する一番効果的な政策である。

  • リフレ派(アベノミクス金融緩和論者)
    原田泰2015年作。
    貧困問題やら年金問題は、全国民一律7万円
    (子供3万円)毎月支給ただし所得税は一律30%
    ベーシックインカム(UBI)で解決だ。
    一律10万円支給しようとすると所得税は50%(泣)
    この秋、竹中平蔵さん発言により突然話題に
    それまで積極推進派だっはずの朝日新聞など
    が何故か一転反対に転換(笑)世界初導入で日本が救える
    かは冷静な議論が必要なことだけはわかったかも。

  • OECD国中で日本は米国やイタリアに次いで相対貧困率が高いとは驚いた。著者の訴えるベーシックインカムの様々な利点はそうかもしれない、と一応思うことができた。財源で年金や雇用保険とあてにするというのはわかるが、それ以外の部分は捕らぬ狸の皮算用。民主党の事業仕分けを思わせる。大幅な支出超過である現状の国家予算と比較しても足りなそうなのでは、説得力に欠けると言わざるを得ない。とは言いつつ、こんな大胆な変革がおきる時代を体験してみたいものだ。

  • (2021年6月の感想)
    2年前は、生活補助に対してベーシックインカムの感想を書いていた自分がいたが2年が経過して思いも変わったのですこし整理しておく。

    まず生活保護受給者であるが受給者の大半は人生を歩んだ環境がとても複雑だったり深刻な心の病を患っている人等である。現在は適当な一定額を給付して「あとは自己責任でよろしく」ですませてはおらず、実際には役所の方が彼らの自立は精神的にほぼ不可能であることを感じつつ、彼らを一人の人間として扱って自立のチャンスを地道に提供している現実がある。役所の人はとても大変だけど、捨てていけないとても大事な仕事だなあって思って、そういったことをもっと積極的に知っていかないととも思っている。見捨てるのは短期的な生産性で評価すればプラスだろうけど、みんなが人を見捨てる価値観が標準な社会だったら息苦しさが半端ない、秩序に支配され個性を悪とみなす絶望社会だと思う。
    そんなベーシックインカムは「キングオブ・ザ・自己責任」で人をより切り捨てる仕組みになっちゃわないかなあって憂慮を感じる。。。

    未来永劫その財源が確保される保証があるのかはさておき、一部の社会サービスは確実に削減され、例えば特殊な人しか都心に住めず、地方に移住するしか術がなくなるといったようないやおうなしな必然強制事業整理が発生することも十分に考えられる気がする。ドラスティックな変化を実現できるメリットがある一方、普通に細く長く暮らしたい多くの生身の人間にとってその必要は全くなくていい迷惑でしかない気がする。。。

    なので僕は2021年時点では反対かなあ。

    (2019年8月の感想)
    BIそのものや、その利点/有益性がよくわかっていなかったのでこのタイミングでBI入門の親書を読んでみました。

    ネットでも調べましたが中々ドラスティックながら一理あるシステムだなと思いました。とはいえ、現在の日本は本当に生活費が困窮してる人に対して予算がないとかいって役所が生活補助を認可しないようなバカげた社会保障ルールになってるから、いっそ抜本的にBI制にしたほうがマシなんじゃって思ってもみたりした。

    「もらうべき人がもらってない」、「まともでない人にまともになってもらうよう尽力できていない」欠陥だらけの日本の福祉制度、実力不足の現在の日本の官僚と政治家じゃ解決できない。じゃあどうする?をいますこし悩み考えてたりする。
    (最後のほうで本の感想からずれちゃってスミマセン...)

  • 生活を保障するものは「地縁・家族」→「会社」という風に変遷してきた。戦後、日本国民の多くは自営業からサラリーマンとなった。企業は成長して人手を欲しがっていた。年金や保険を拡充しなければ自社に人手不足になってしまうという背景もあって、高度経済成長期を通して企業の保険に加入する人の割合が増えた。

    しかし、非正規雇用が拡大している現在ではこのような社会福祉体制は弱くなっている。これは単に最低賃金を上げればよいという問題ではない。最低賃金の上昇は失業率の上昇を引き起こすからだ。ここで問題なのは生活保護を受給するハードル(生活保護水準)が高いということだ。このある種の選民思想的な分配法則を持つ理由は現在の福祉制度がビスマルクの政策を手本にしているからだ。その政策は弱きに目を向けないというものであるが、それは福祉国家のあるべき姿とは言えない。

    日本はワーキングプアーが多い。(失業率は低いが、経済格差は大きい)
    これに対する政府の打ち手は公共事業で雇用を創出するというものだ。しかし、これで増える雇用は非正規であり、根本的な問題解決になっていない。このような無駄な支出を抑える代わりにより、貧困にダイレクトに響くBIを支給するべきだ、というのが著者の主張である。

  • 手軽に読み切れるベーシックインカム本。貧困とはお金がないこと、と明快に主張し、その思想的背景とベーシックインカムの有効性・妥当性を述べる。社会保障財源を整理することで現代日本でベーシックインカムは可能だし、著者の言う「貧困」は解決しうる、と言っている。

    「共産主義者」近衛文麿が出てきたり、なぜかABCD包囲網が出てきたり、福祉をまともでない人の矯正なんて捉えたりして、随所で読む気を削がれるが、たぶん国民経済計算の方法なんかは間違っていないのだろうから、有用な本であろうなと思った。
    細かいところを除けば、「あとがき」で結論書いてあるし、寄り道を削ぎ落とせば、内容的にはパワポ10枚くらいで十分な気もする。

  • 経済
    社会
    政治

全54件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

1950年生まれ。東京大学農学部卒業。学習院大学博士(経済学)。経済企画庁国民生活調査課長、海外調査課長、財務省財務総合政策研究所次長、大和総研専務理事チーフエコノミスト、早稲田大学政治経済学術院教授、日本銀行政策委員会審議委員などを経て、現在、名古屋商科大学ビジネススクール教授。著書『昭和恐慌の研究』(共著、東洋経済新報社、日経・経済図書文化賞受賞)、『日本国の原則』(日経ビジネス人文庫、石橋湛山賞受賞)、『若者を見殺しにする日本経済』(ちくま新書)、『ベーシック・インカム』(中公新書)、『デフレと闘う』(中央公論新社)など多数。

「2021年 『コロナ政策の費用対効果』 で使われていた紹介文から引用しています。」

原田泰の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×