物語イギリスの歴史(下) - 清教徒・名誉革命からエリザベス2世まで (中公新書 2319)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121023193

作品紹介・あらすじ

17世紀、王の絶対君主政への信奉は、清教徒・名誉革命を誘発し議会の権限が増す。18世紀半ば以降の産業革命下、内閣・政党が政治の主導権を獲得。グラッドストンら優れた政治家も現れ、19世紀、ヴィクトリア女王の時代は「世界の工場」かつ「最強国」となった。だが20世紀に入り、二つの世界大戦で国家は疲弊。経済停滞は「英国病」と揶揄された。本書は、近代化の胎動から、サッチャー、ブレアらが登場する現代までを描く。

感想・レビュー・書評

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  • どうも全体として「物語シリーズ」の割には物語性に欠けるという感じ。通史の流れを追っただけ、という印象。

  • EU離脱問題を巡って英国が揺れています。メイ首相がEU側とまとめた離脱合意案は先月、下院で歴史的大差で否決されました。来月末の「合意なき離脱」が現実のものとなる可能性が高まり、どのような影響が生じるのか誰も予測がつきません。

    本書は、イギリスの歴史を議会と王権の関わりを中心に論じた概説書。下巻はエリザベス1世の死去、ジェームズ1世の即位から、21世紀初頭のキャメロン政権成立まで。
    私たち日本人からは、彼の国は同じ島国、アングロサクソンで大陸諸国とは一定の距離を置くジェントルマンの国、といった印象しかありませんが、本書を読むとその内実は様々な対立を抱えていたことがわかります。

    一つ目は宗教上の対立。長らく英国国教会が国の宗教として位置づけられ、カトリックは認められていない中、17世紀初頭のヨーク公(後のジェームズ2世)がカトリック教徒だったことから、国王擁護派と反国王派の対立が激化。イングランド史上最初の政党、トーリとホイッグ登場の背景になりました。カトリック教徒は長らく公職に就くことができず、解消されたのはようやく18世紀後半になってからでした。
    次に、アイルランド問題。グレートブリテンを構成するイングランド、スコットランド、ウェールズと比べて、アイルランドは自治が制限され、経済的にも劣位に置かれていました。そうしたことが背景にあって1845年に飢饉が発生。人口は820万人から19世紀末に440万人まで落ち込みます。100万人が餓死し、20世紀半ばまでに400万人が英国本島、北アメリカやオーストラリアに移住。その後も独立を主張する武装集団IRAのテロに悩まされ続けるなど、アイルランドの自治権付与は歴代政権にとって最大の問題であり続けました。
    最後に国内の身分制度。人口のわずか5%のジェントルマン階級(地主貴族)がその他95%を支配する構造が長らく続いていました。が、第一次大戦がその構造を破壊します。大戦勃発後、騎士道精神に基づく「ノーブレス・オブリージュ(高貴なる者の責務)」から戦場に駆け付けた地主階級の若者の大半が犠牲になりました。1914年だけで彼らの19%が戦死するなど、将来の指導者層が大きな打撃を被ったことで、貴族階級と庶民の対立が政治上の課題となり、第二次大戦後の労働党政権につながっていきます。

    これほどまで社会的対立を抱えながら、大英帝国を築き上げパックスブリタニカを実現できたことのほうが不思議なくらい。
    英国の衰退はもちろん重要な研究テーマですが、多くの課題を抱えながら成功した要因は何かもそれに劣らず重要なテーマだと思います。
    本書ではそこまで触れられていないので星は3つ。EU離脱問題を注視しつつ、他書で彼の国の来し方行く末を探りたいと思います。

  • 上巻はエリザベス一世で終わりましたが、この下巻ラストは当然エリザベス二世です。
    エリザベス二世でとても印象に残っているのは、4年前のロンドンオリンピック開会式にバッキンガム宮殿からジェームズボンドの身辺警護で、ヘリコプターでオリンピックスタジアム上空まで移動し、ユニオンジャックのパラシュートで地上に降下し貴賓席に姿を現したもの。
    https://www.youtube.com/watch?v=1AS-dCdYZbo
    ウィンストン・チャーチルが嬉しそう。
    平和っていいなあ。
    当時彼女は86歳だったんですね。

    そしてわが日本の明仁さまは、次の東京オリンピックのときにちょうど86歳!
    先日のお気持ち表明を見て「お疲れさまでした。どうぞ、もう引退されて、ごゆっくりお過ごしくださいませ」と思いましたが、このたび、あのエリザベス二世のパフォーマンスを思い出し
    「明仁ちゃん!もう少し頑張って!!」と思いました。
    皇室行事は若い者たちに任せて(摂政)、名前だけでいいから天皇でいて、東京オリンピックでエリザベス二世みたいなかっこいいパフォーマンスを披露してほしいなあ!

    この下巻はジェームズ一世からの約400年、日本でいえばちょうど江戸幕府からになります。
    イギリスの歴史としては議会部分が多くを占めるようになります。
    著者の君塚直隆さんもおわりに言われていますが、この本では「王権と議会」を中心に据えた英国史1000年の物語に特化して書かれているので、どうしても物足りなく感じられます。
    君塚さんはそれを補うべく何冊かのライバルである新書を推薦していて立派だと思いました。

  • 「王権と議会」をキーワードに、「イギリス」の歴史を紐解く。下は、清教徒・名誉革命によって議会の権限が増した17世紀から、サッチャー、ブレアらが登場する現代までを描く。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40226315

  • 『はじめに』にある通り、イギリス史と言うよりもイギリス王朝史&イギリス政治史。下巻は産業革命や大英帝国化が国の有り様に与えた影響についての解説を期待していたが、王家内、閣内の小さな話に終始していて残念だった。
    その分政治の記載は非常に詳しい。イギリスの政治体制を輸入した日本で、予算審議における衆議院の優越や衆議院からの首相選出が慣例化されている理由を知る事ができた。ただ日本はあくまでもモノマネに過ぎないので、創設から100年以上経っても完全にはイギリス式にならないね。マニフェストも影の内閣も政権交代可能な二大政党制も全く機能しない。それでも全然構わないけど。

  • 上下巻読んだ感想。イギリスの歴史はもっと時間をかけて学ぶようにしたい。
    イギリス王家はヨーロッパ大陸の皇帝や王家と婚姻関係にあったことはなんと無く知っていたけど、どうも主従関係や相続などが複雑。
    スコットランド·ウェールズ·イングランドとアイスランドの関係も掘り下げて学んでみたいかな。
    あと、議会が成立してからの変遷も気になる。随分と歴史があるようだし終身の貴族院というのももしかしたら人気投票的な民主主義にいくらか歯止めをかけるよいシステムなのかも知れない。

  • 下巻は、清教徒革命から2012年のエリザベス2世在位60周年まで(キャメロン政権)。

    小学校のとき、イギリスの正式名称が「グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国」だと知って、その名前の長さにテンション上がったが(今になって思うと日本語で議論してもしょうがない話題…)、どうして「連合王国」なのかよく分かる。

    清教徒革命で一時は共和制になったものの、すぐに王室が復活するので、フランスや日本と違ってこれぞというイベントがないまま、本を読んでいてもどこが転換点か分からない感じで議会が発展していったのはイギリス特有のように思う。

    著者自身が言っているように、本国中心に書かれているので、植民地の話がほとんど出てこないのは違和感あった。また、この後のBrexitのドタバタや新型コロナの話も読みたいが、それは現在進行形だからな。。

  • 清教徒革命からヴィクトリア女王 そして現代までのイギリスの歴史がよくわかった

  • 近代以降は登場する政治家も多く、有名どころの政治家や王族をわずかに知っているだけでは読み飛ばすしかなかった箇所も。

  • 上巻に続いて、エリザベス一世から現代まで。流石にこの辺は、資料が豊富なので、著者の視点が表れてくる。本書は王権と議会を中心に据えているので、外交や文化、経済といったところは必要最小限にとどめられている。その点で、少しわかりにくいが、参考文献も挙げられているので、それを参考にしたい。文献にとどまらず、映画にも触れられていて、知らないものも多く、いつか見てみたい。

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著者プロフィール

君塚 直隆(きみづか・なおたか):1967年、東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒業。英国オックスフォード大学セント・アントニーズ・コレッジ留学。上智大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程修了。博士(史学)。専攻はイギリス政治外交史、ヨーロッパ国際政治史。現在、関東学院大学国際文化学部教授。著書に『ヴィクトリア女王』『立憲君主制の現在』『ヨーロッパ近代史』『エリザベス女王』『女王陛下の影法師』『貴族とは何か』など多数。

「2024年 『君主制とはなんだろうか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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