仕事と家族 - 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか (中公新書)

著者 :
  • 中央公論新社
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レビュー : 35
  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121023223

作品紹介・あらすじ

男性中心の労働環境のため女性が活躍しづらく、少子化が深刻な日本。仕事と家族のあり方は限界にきている。一方、「大きな政府」を代表するスウェーデンと「小さな政府」を代表するアメリカは正反対の国と思われがちだが、実は働く女性が多く、出生率も高いという点で共通している。それはなぜか。歴史的な視点と国際比較を通じて日本の現在地を示し、目指すべき社会を考える。この国で働き、家族と暮らす全ての人へ。

感想・レビュー・書評

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  • ◯合計特殊出生率は上がることなく、むしろ下がりつつあり、一番重要な出生数は90万人を切るかもといった報道がされている現代日本においては、まさしく他国の真似ではない、実態に即した少子化対策が必要であると感じた。
    ◯また、今までの施策は、やはり海外の模倣であり、日本という社会に合っていない上に、場当たり的な施策が続いており、グランドデザインを描いた上で、速やかに対応する必要性を感じる。

    ◯本書では結婚に関する個々人の理由を詳細に分析し、働き方改革が声高に叫ばれる前から働き方に関する視点が盛り込まれ、家族内での家事分担に至るなど、着眼点が新しく、面白い。

    ◯最終章が、本書の要約として大変分かりやすい。議論の大筋を理解するために先に読んでもいいかもしれない。

  • 仕事と家族。
    働きづらく、産みづらい。

    テーマとして、どちらも大きく人の人生に関わるものでもあり、そのどちらも「しづらい」状況にある今は、とても生きづらいのだろうか。

    少子化の要因は、これまでの研究のなかでもいくつか分析されていて、主に以下の3つに分けられる。

    ・機会費用
    ・両立困難
    ・希望水準

    女性が出産育児にかかる際に、一時的なキャリア中断が起こることにより、所得が減少するなどの機会コストがかかるため、出産を躊躇する、という説。

    共働きフルタイムでの出産育児において、女性が育児休業から復職するにあたって、育児と仕事との両立が困難である、あるいは困難であると予見できるから躊躇する、という説。

    女性の高学歴化・総合職キャリアの獲得により、結婚時に男性に求める仕事のレベル・また生活能力(家事スキル)の水準が高まり、結果的に晩婚化が起きている、という説。

    どれも、要因としてそれぞれの力は働いていると思われるが、著者はそのなかでも希望水準説が、特に強い要因であるとしている。


    また、著者は男女雇用機会均等法と日本の無限定的な総合職的働き方のパラドックスを指摘する。

    総合職キャリアの無限定性とは、時間・勤務地・職務内容のそれぞれにおいて限定しないことを総合職の暗黙の前提としており、この前提が女性や外国人等を基幹労働力から排除している、というものである。

    一方で、男女雇用機会均等法のたてまえ上、女性の社会進出・総合職への転換が行われており、こうした状況の中でパートナーのうち、どちらかが(ほとんどの場合、女性が)そのキャリアプランを諦めざるをえない状況になっていると指摘している。


    また、家事負担の軽減として、育児・家事の外部化(アウトソーシング)の可能性が考えられるが、外部化した先のケアワークの担い手のほとんどは女性であり、女性は自分のハウスワークをしない代わりに、他人のハウスワークを行う、という労働力の横流し、あるいは経済格差を利用した(移民の活用を含め)外部化にすぎない、という問題も提起している。


    なんだか、結局、八方塞がりな現状を示してくれているが、何か救いは無いものか。

    セカンドキャリアの活用、また総合職の無限定的な前提の見直し、などが考えられるが、どちらも民間企業の委ねられるものではある。
    育児支援においては、保育サービスの充実は一定の効果がある、と統計的にも示されている、という。
    ケアワークについては、課題が残る部分はあるが、雇用機会や所得をより増やすことのできる分野である、と感じる。


    個人的に、本書を読んで気になったのは「通勤」して「オフィス」や「工場」で働く、という工業化・商業化後に一般化した働き方だ。

    かつて、仕事は家あるいはその周辺で行うもので、男女問わず、家事の延長上にあるものとして、農業や手工業を行ってきた。
    平川克美さんなども提唱している「小商い」という働き方は、最近注目されてきている。

    自分が住んでいる「地域」を離れて、遠方の都心に通勤する働き盛りの世代は、子どもの教育に保護者として(PTA等の活動を通して)かかわる中で「地域」のシステムの旧態依然な部分や互助・善意によって成り立つ組織のあり方に驚く。

    しかし、そもそも、都心に通勤する多くの会社員は、そうした地域自治を高齢者や一部の主婦に任せ、その地域に何の見返りもなく安全に住むことができている「フリーライダー」でもあるのだ、と思う。

    長時間労働による弊害ばかりが、男性の育児参加・少子化・女性の社会進出の壁といった問題の中で、取り沙汰されるが、「通勤」して家・地域と職場が離れてしまっていることもまた、家の内と外の仕事を大きく隔ててしまっているようにも思う。

    家の周縁としての地域・地域の中での仕事、そうしたところに若年者の雇用や育児世代のセカンドキャリアの活用のヒントが見出せないだろうか。

  • <「結婚、共働き、子育て、家事分担、うまくいかないのはなぜ?」を各国比較の横糸と、歴史を辿る縦糸で編み描く>


    タイトルから「仕事と家庭の両立」といったテーマを想像したが、内容はもっと幅広い。
    その中でもメインの軸は、現在の日本社会において女性が置かれている労働参加の形に対する批判的な姿勢にある。

    なぜ日本の女性は働きにくく、結婚、育児がしにくいのか?
    これについて著者は、女性の労働参加を日本の男性的労働世界に引っ張り込むことによって成し遂げようとしているから、という指摘をしている。
    つまり、旧来の男性的な働き方のほうを見直すべきではないか、という主張である。

    著者は計量社会学を専門とする研究者だ。
    「計量」、つまりデータを分析することによって社会を読み解いた結果、著者がそのような結論に至った流れを、本書を読み進めながら追うことになる。

    データというと難しく感じるかもしれないが、数式は登場せず、グラフなどむしろ見やすく直感的に分かりやすい。

    データは、各国比較という横のデータと、各年代による縦のデータが用いられている。

    各国比較の面では日本・アメリカ・スウェーデンを軸に展開される。
    よくある「日本と欧米」という対立軸ではない。
    それは、女性の労働参加と出生力の維持を、アメリカとスウェーデンが全く異なる、もっというと逆の方法で成し遂げているからだ。

    具体的な内容は本書を読んでいただきたいが、簡単にまとめると以下のようになる。

    アメリカは、市場原理主義であり、社会保障などの少ない「小さな政府」である。
    その中で、女性は男性と差別されることなく、実力に応じて民間企業で管理職などに登用される。
    そのような社会においては、男性も一定以上の範囲の労働は難しい。
    少なくとも日本的な「残業あり、転勤あり、配置転換あり(ただし雇用は一定保障されている)」という働き方では家庭は成立しないだろう。
    アメリカで女性が活躍できるのは、男性がジョブ型雇用であり、労働範囲はそのジョブに限定され、日本のように無制限な労働を強いられないという面が大きい。(その代わりに失業や格差といった問題を抱えているのは周知の通りである)

    一方、スウェーデンというと高福祉で男女平等といったイメージがあるが、単純にそうとも言えない。
    実はスウェーデンの女性の就労は特定分野に偏っている。
    それは公務員だ。
    スウェーデンは典型的な高税負担、高福祉の「大きな政府」であるが、それは政府が労働を生み出していることも意味する。
    本書に掲載されているデータによれば、スウェーデンにおける「女性の公的雇用」の比率はなんと50%を超える。
    逆に言えば、スウェーデンの女性は公的雇用以外の職業の選択肢が極めて少ないことになる。
    一方、アメリカの女性の公的雇用の比率は20%程度であるが、日本はというと10%にも満たない。

    実は男性でも、スウェーデンの公的雇用は30%、アメリカが20%程度なのに対し、日本は10%程度である。
    日本は世界でもとりわけ公務員が少ない国なのだ。
    市場主義で「小さな政府」の代表格ともいえるアメリカよりも少ないというのは驚きだ。
    これについては前田健太郎『市民を雇わない国家』(東京大学出版会)という本がサントリー学芸賞を受賞するなど注目されている。

    ちなみに以前、『世界の海賊大事典』の書評において北欧の平等主義について触れたが、本書のデータを踏まえれば、海賊に船長、航海士、船医、料理人などの役割があるように、北欧文化では男性には男性の、女性には女性の役割が充てられている、という見方のほうが正確かもしれない。

    また、女性の就労と出産の関係についてもデータが示されている。
    結論から言えば、各国比較において、女性の就労率が高いほど、出生率が高いという関係が明確に表れている。
    これは日本における一般的な直感とは異なるのではないだろうか。
    実際、日本、イタリア、ドイツといった国は女性の就労率は様々だが、出生率は一致して極めて低い。
    例えばドイツはアメリカやスウェーデンと同程度の女性就労率でありながら、出生率は低い。
    つまり女性の就労率が高くても、社会構造などなんらかの障害により出生率が上がらない場合があることを示唆している。
    これについて詳しくは本書をお読みいただければと思う。

    次に、縦のデータ、つまり時系列のデータについていくつか紹介すると、主にあらゆる先進国が経験した「工業化からサービス化への変化」に関連して述べられている。

    実は、アメリカやスウェーデンは工業化に伴い出生率が低下し、サービス化に伴い出生率が向上している。
    もっというと、工業化社会では女性の就労は出産にマイナスの影響を与えていたが、サービス化した社会ではプラスに働いていることがデータで示されている。
    ところがやはり日本、イタリア、ドイツといった国はサービス化した社会でも女性の就労が出生率にプラスの効果を見せていない。

    本書では、他にも正社員と非正規雇用、格差の再生産、同棲、移民政策、家事労働(各国の男女の分担状況)といった広い範囲に渡ってデータをもとに問題提起されている。

    著者は、女性の就労や出生率増加のためにアメリカ型が良いかスウェーデン型が良いか、という結論は出していない。
    というよりも、両国とも日本とは文化的価値観や社会構造が異なっているから、簡単にマネができるわけではない。

    安易に他国を真似るのではなく、日本の社会の特徴を把握した上で、日本ではどのような政策が有効かを丁寧に細かく見ていく、本書の表現を使えば「テクニカルな」対策の必要性を説いている。

    今の日本の労働と家族、出産や社会保障などの状況を広く概観し、他国と比較しながら、超少子高齢化を迎える日本がどのような社会をつくっていくかについて、みんなで知恵を絞り合意形成することを本書は提言している。

  • 高齢化社会、少子化、そして、労働人口の減少といった大きな課題を抱えている日本。 日本がこれからどのような「共働き社会」(など)といった労働環境を目指していくのかを考えさせられた。

    小さな政府の代表例のアメリカ。
    大きな政府の代表のスウェーデン。
    ともに、女性の労働人口が増えているが、おなじように出生率も増えている。

    つまり、単に、女性の社会進出が少子化を招いているということではないのがわかる。
    それぞれの国において、女性が出産し、働きやすい労働環境が整っているのだ。

    (日本とドイツは、女性の労働人口は増加すれども、少子化が進んでいる…)

    日本の労働のありかたに、「(男性社会の)労働のあり方、職務内容の無限定性、勤務地の無限定性、労働時間の無限定性にある」という指摘に納得。


    日本の労働環境を大胆に(同一労働堂賃金など)改革する必要があると思った。 筆者の説明がわかりやすく、今後の労働と家族のあり方を考えるためにも役に立つ良書だと思う。

  • 少子化や女性の労働問題などを扱っているひとたちには絶対読んでもらいたい本。

    少子化問題を論じる本で提案される対策はどれもピントがずれているというか、表面上の解決方法しか提示されないことが多いけれど、この本で主張されていることはとてもすんなり受け入れることができた。
    すなわち、少子化や女性の活躍を阻む根底にあるのは、日本特有の「長時間労働」や「無限定性」という主張である。
    これらを見直していかない限り、いくら育児休業制度や保育所の充実を図ったとしても、根本的な解決にはならないのではないかと思った。

  • 家族
    社会

  • Kindle

  • 日本の「仕事と家族」の現在の居場所を国際比較・長期推移の視点で眺めると、大きな政府/小さな政府の対比は役立たない。性別分業の克服つまり共働き社会へ移行すべき。有償労働の担い手を増やすことで、税と社会保険を通じた助け合いのための余裕をつくり出す。

    日本の働きづらさは、性別分業の無限定な働き方にある。シンプルかつ納得の結論です。

  • 20171221

    ゼミとインターン絡みで。スウェーデンとアメリカがどうして共働きと育児の両立がうまくいっているのかの対比は面白かったけど、社会構造的に日本は参考にできないっぽい。
    卒論は少子化と共働きかなぁ。

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著者プロフィール

筒井淳也| Junya Tsutsui
1970 年福岡県生まれ。立命館大学産業社会学部教授。一橋大学社会学部卒業。同大学社会学研究科博士後期課程満期退学。博士(社会学)。専門は計量社会学、家族社会学。主著に『仕事と家族』(中公新書、2015 年)、『計量社会学入門 ̶ 社会をデータで読む』(世界思想社、2015 年)、『結婚と家族のこれから』(光文社新書、2016 年)など。

「2018年 『インスタグラムと現代視覚文化論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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