「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて (中公新書 2332)

著者 :
制作 : 江川 紹子 
  • 中央公論新社
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感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121023322

作品紹介・あらすじ

日中・日韓関係を極端に悪化させる歴史認識問題。なぜ過去をめぐる認識に違いが生じるのか、一致させることはできないのか。本書では、韓国併合、満洲事変から、東京裁判、日韓基本条約と日中国交正常化、慰安婦問題に至るまで、歴史的事実が歴史認識問題に転化する経緯、背景を具体的に検証。あわせて、英仏など欧米諸国が果たしていない植民地支配責任を提起し、日本の取り組みが先駆となることを指摘する。

感想・レビュー・書評

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  • 難しい問題「慰安婦問題」「侵略戦争問題」。その問題に対しての「歴史認識」の違いやこれからどう未来に進んでいくか。考えさせられる作品であり、語り手である大沼氏、聞き手である江川氏のやりとりも非常にわかり易く説明していただいていたと思う。

  • 嫌韓・嫌中、戦争責任など。極端な意見のぶつけ合いになりやすい問題について分析し、どう取り組みべきかをわかりやすく示してくれる。日本がこれまでやってきた戦後処理について自虐や独善に陥ることなく、日本が世界に先んじて進めてゆこうと。誠実な学者の仕事。とても良い本だった。

  • ある意味、日本人としては読みにくい著。
    愛国心や日本人として自認する中で、批判的に書かれているものの、事実がこうで、何故日本やドイツだけがこのように叩かれるのかということも書かれている。ネトウヨ本などが出る昨今に於いては何がfactなのかを確認しないものも増えている。この本は国際法の学者によるものであり、権威でもある方の著。信用なる内容で、自分の経験なども書いている。歴史認識問題を解決する中でマスメディアや各種のイデオロギー対立なども鮮明に書かれており、良書だと思う。

  •  「歴史認識」と書名にはあるが、内容はより幅広く、あの戦争に至るまでの20世紀前半の歴史、またその後の東京裁判、日韓・日中国交正常化、教科書問題、サハリン残留韓国人、指紋押捺等、戦争に纏わる多くの個別問題を網羅している。特にアジア女性基金については、筆者の関わりが強かったためか一つの章を割いている。インタビューの再構成なので平易で読みやすい。
     筆者はあとがきで、ある人から見れば「自虐」論者、ほかの人から見れば「御用学者」にされてしまう、と述べている。別の箇所で、80年代頃からいわゆる進歩派そしてメディアの間で、きっぱり加害と被害に分ける二分法的な物言いが目立つようになってきた、と書いているが、とかく歴史問題については、極端に走らない議論をしようとすると左右双方から攻撃されるということなのだろう。
     筆者は、たとえば東京裁判が勝者による不公正な裁きであったことや、日本のみならず欧米列強を含む他国も負の側面を抱えていることは指摘しており、また中韓の対日批判を全面的に肯定してはいない。その上で、他国からの対日批判には問い返せばいいとしつつも、「その問い返しが単に自己や日本の正当化のためであってはならない」と述べている。「自虐史観」「自尊史観」のいずれにも走らない難しいバランス感覚が必要となるが、二分法的な議論が世にはびこる中ではなかなか容易ではないだろう。

  • 筆者が「はじめに」で、「理屈だけでなく人間の感情、情感の面も大切にしながら」も、中立的にやると述べているように、本書に学術的な価値があるかは定かではない。筆者の私的感情も度々記されている。

    が、筆者は国際法学者であり、実際の活動家だったこともあり、示唆的な部分は多々ある。以下に例示する。

    歴史認識問題を考えるには、国家関係・外交関係だけでなく、大多数を占める俗人・世論の意識が最も重要になるということ。

    日韓両国の一部メディアが、過去に扇動的な記事を書くことで嫌韓反日を煽り、両国の「俗人」が強硬になってしまったことは事実である。言論の自由が保障されている両国のマスメディアが社会的影響力をもつことは当然のことであり、政府と同じレベルの公共的責任を負っているのだ、ということを自覚すべき。

  • 村山談話にも関わった著者なので偏りが大きいかと思ったら、非常にバランスの取れた批判が多く、特にリベラルや左派への批判はとても考えさせられました。

  • ちょっと読んで積読していたが、日本の近現代史の基本をおさえた上で最後まで読み直したら、よくまとめられていて面白かった。
    たとえば靖国問題など、何となく問題点は分かるけれど、ここまで怒る理由がピンとこないと思っていた外交問題の歴史的背景が明瞭になり、視野が広がった。中国の戦後のプロパガンダ映画だとか、韓国の反日報道だとか、メディアが大衆に及ぼす歴史認識への影響の大きさがよく分かる。また、西欧のかつての植民地への意識・態度については、今まで考えたこともなかったが、正に人の振り見て我が振り直せである。
    近現代史を学ぶたびに、日本の加害の歴史に胸を痛めるが、中国・韓国がそれを盾に何か要求すると、永遠にこれが続くのかなと思ってしまう。歴史の反省は忘れずにいることは前提として、冷静に理にかなっていないことは違うと自分の頭で判断していきたい。

  • 聞き手語り手の形で書かれているのでとても読みやすかったが、考え続けるべきことをたくさん受け取った本。
    自分と違う意見なも耳も傾けて考えていくこと。
    論破、というのがもてはやされている今、考えるために大事な1冊。
    次の日世代に少しでもましな状態を引き継いでいくには。

  • 南京虐殺を根拠もなしに肯定している時点で、落第点の偽善者!
    自虐史観に近い観点から述べられている。
    この著者は、「フーバー回想録」も、ヘレン・ミアーズの「アメリカの鏡・日本」も読んでないのかな?旧敵国の大統領だったり、政府機関のスタッフが書いている。
    当時の日本の立場がよくわかる。

    自虐史観にまみれた日本の歴史学会!どっかに書いてあったことを勝手に忖度して勝手に決めつけている!こんなのが学問か?
    受験生と同じじゃん?
    真理の探求は何処へ?

  • 日本の歴史認識に関する様々なテーマについて、法学者の大沼保昭教授の知識を、聞き手のジャーナリスト江川紹子さんが掘り下げる形でのインタビュー対話型で、5章構成もの。
    新書ながら、膨大なFACTチェックと参考文献の多さ、また資料として当時の首相談話などが載っており、極めて信頼性の高い本だと確認。
    さらに帯にある『自虐でも、独善でもなく』との言葉どおり、大沼教授のまとめ方は加害者被害者いずれの側の事実も入れており、出来るだけ読み手側が問題を多面的に捉えられるよう配慮されている。

    今まで日本の歴史認識について、無知ではあるもののそれに対して対処をしてこなかったので、はじめの一歩としてこの本を、各章付箋で要点をまとめながら読了。

    日本の戦争責任は、戦後から1970年代くらいまでは敗戦責任と被害者意識が強く、アジアにおける自らの加害者的行為への反省をするようになったのは、戦後25年を過ぎた頃からだという。
    このように、この本である程度の日本の、歴史認識への態度の流れを掴めたので、次はそれぞれの年代やテーマに絞って深く物事を見ていきたい。

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著者プロフィール

1946年生まれ。東京大学法学部卒業。東京大学大学院法学政治学研究科教授、明治大学法学部特任教授などを歴任。東京大学名誉教授。専攻は国際法学。著書『サハリン棄民』(中公新書、1992年)、『人権、国家、文明』(筑摩書房、1998年)、『「慰安婦」問題とは何だったのか』(中公新書、2007年)、『「歴史認識」とは何か』(中公新書、2015年)、International Law in a Transcivilizational World,(Cambridge University Press,2017)など多数。2018年10月逝去。

「2018年 『国際法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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