ペリー来航 - 日本・琉球をゆるがした412日間 (中公新書 2380)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121023803

作品紹介・あらすじ

一八五三年五月、アメリカの東インド艦隊が那覇沖に、七月には浦賀沖に現れ、琉球王国と日本は開国と動乱の時代を迎える。「黒船」見物、琉球調査隊による発砲事件、乗組員の無断上陸、電信機実験など、そのとき多くの人びとが初めて西洋人と西洋文明に遭遇した。翌年の条約締結までの間、何が起こっていたのか。条約交渉過程を追いつつ、黒船絵巻や瓦版、日記などを博捜し、庶民が経験した事件としてのペリー来航を描く。

感想・レビュー・書評

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  •  ペリー来航と開国を扱った歴史学の書籍は数多いが、本書はペリー来航に至る経緯、来航当時の日本人の反応、徳川幕府の海防体制、神奈川条約締結過程について、非常にわかりやすく明快に叙述されており、現状入門書としては第一に推薦しうる良書といえる。特にアメリカの開国要求について、従来経済的要因に比して軽視されがちだった、漂流民(特に捕鯨船員)保護の観点を具体的な事例を通して示している点、やはり従来の一般的な通史では正当に位置づけられているとは言い難い琉球の開国過程について詳述している点は特に注目される。アメリカの砲艦外交や幕府の避戦外交に対して後知恵的な解釈や評価を行っていないのも重要であろう。

  • 著者の西川武臣氏は現・横浜開港資料館館長。横浜の歴史を中心に研究多数。とくに生糸貿易体制の研究で知られている。

    本書は176ページと新書としては薄い部類だが、ペリー来航の政治史、経済史の叙述は最低限に抑えて、その「衝撃」を人びとがどのように受け止めたのかを中心にコンパクトにまとめている。ペリー来航の予告情報がどこからどのように幕閣に伝わったのか、そして実際に1853年の浦賀来航はどのように伝えられ、それが民衆にどう伝わり、彼らがどのように反応したのか。

    「日本の近代化は、幕府や明治政府の主導だけで成し遂げられたわけではない。多くの人びとが次の時代に向けて活動し始めたからであり、その原点がペリー来航である。」(はじめに ivページ)

    そして、その活動の広がり方が面白い。第4章では幕府が一般に意見を求めたのに反応して、さまざまな建白書などが出された経緯がその内容とともに一部紹介されているが、そこに登場する信州の内藤正義の建白書の話などは非常に興味深い。また、高島秋帆と在野の蘭学者のネットワーク、海防掛に任命された幕府官僚の影響力増大など要点が明快に指摘されている。

  • ペリー来航前後の外交がよくわかった

  • 1854年に琉米修好条約が結ばれ、アメリカ合衆国は琉球と最初に近代的な条約を結んだ国となったことは、その後の沖縄とアメリカの関係を暗示しているかのようです。条約の内容はまったく違いますが、沖縄とアメリカは切っても切れない関係になってしまいました。これはその時どきの日米双方の為政者のなせる業でしょうか。琉球の民にとっては薩摩藩や清との交流時が一番幸せな期間だったかも知れません。

  • ペリー来航前からハリスに至るゴタゴタを庶民の日記や絵巻から解き明かす本。何より豊富な図版とその解説が当時の狂乱ぶりを伝えてくれて面白い。ただし、それ以外の基礎的な情報となる政治史の描写がどうも雑学的で表層的で十分な文献の読み込みがされていないように見え、蛇足にも思える。かと言ってその部分を差し引いたら100ページに遥かに満たない小冊となってしまうので、もっと図版を集めた上で体系化をして欲しかった。

  • 本書は、外国船の日本への来航が目立つようになって行った経過から、ペリー艦隊の登場とその日本や周辺での活動経過、更に彼らの来航の情報の日本国内での拡がり方や受け止められ方を纏めたものである。
    後段の彼らの来航の情報の日本国内での拡がり方や受け止められ方に関する内容が殊に面白かった…

  • 一八五三年五月、アメリカの東インド艦隊が那覇沖に、七月には浦賀沖に現れ、琉球王国と日本は開国と動乱の時代を迎える。「黒船」見物、琉球調査隊による発砲事件、乗組員の無断上陸、電信機実験など、そのとき多くの人びとが初めて西洋人と西洋文明に遭遇した。翌年の条約締結までの間、何が起こっていたのか。条約交渉過程を追いつつ、黒船絵巻や瓦版、日記などを博捜し、庶民が経験した事件としてのペリー来航を描く。

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著者プロフィール

1955年、愛知県生まれ。横浜開港資料館館長。著書に『浦賀奉行所』(有隣堂)、『ペリー来航』(中央公論新社)、『幕末明治旗本困窮記』(山川出版社)など。

「2022年 『ペリー日本遠征随行記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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