競馬の世界史 - サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで (中公新書)

著者 :
  • 中央公論新社
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レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121023919

感想・レビュー・書評

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  • 歴史のダイナミクスと馬産や競馬のつながりがわかって面白い。

  • 競馬の世界史と題しているが、新書とあって時代と地域ごとの記述は薄く、また重複する内容が多い。あとがきで筆者が「執筆は楽しかった」と述べているように勢いよく書いたのだろうなぁと伝わってくる。
    でも、そんな些細なことはどうだって良い。筆者はプロローグでシーキングザパールのモーリス・ド・ゲスト賞に立ち会った経験を挙げ、「誰彼となく、このすばらしい勝利の意味をわかちあってほしい。騎手でも調教師でも馬主でもないのに、この瞬間に立ち会った喜びに酔いしれるのだった。」と語っている。
    これなのだ。誰もが歴史の目撃者になれるのが競馬の魅力であり、人はそのドラマに酔いしれる。筆者の競馬愛が伝わってくる良書だった。

  • わたしはこれまで実際のレースやゲームを通して競馬に興味を持ち、テレビで競馬関係のドキュメンタリー番組をときどき見たり、あるいは必要に応じてWikipediaを読みあさるなどしてきたけれど、自分の知識が断片的になってしまっている自覚があった。実際、日本の競馬についてはそこそこ興味を持ってきたものの、海外の競馬についてあまり知らなかったし、自分の競馬知識を一度俯瞰して整理しておきたいとぼんやりおもっていた。そんなときに『競馬の世界史』というタイトルの新書を偶然見かけて、もう反射的に手に取ってしまった。

    結論から言うと、本書は期待以上の内容だった。競馬には、豊富な財力のある人たちが集まって自慢の所有馬を競わせるという面と、その模様を民衆が観戦し、出走馬にお金を賭けるという面、大きく言ってふたつの側面がある。本書はこの両面をしっかり踏まえているので、記述に大変説得力がある。そして競馬が発展する中で、レース施行の条件を整備し、レースを公正に行う役割を果たす組織としてジョッキークラブが現れてくる。競馬というと、どうしても個々の人や馬を中心に見てしまいがちだけれども、ルールを「制定」し「裁定」する機関について書くという目線が斬新に感じられる。たとえば競走馬の血統書が発行されるようになったのは、売買時に良血だと偽ることが横行したからだろうとわたしは考えていたけれど、それだけではなかった。レースのときには良血馬だと負担重量が増量されることがあり、それをさけるのに血統が悪いふりをするケースもあったという。血統書には、レースでの負担重量を軽くするために血統を偽る不正への対策の面があったというのはやや盲点だった。もちろん最近でこそあまり言われなくなったものの、以前は日本でもマル外の馬がクラシックに出られないとか、マル父のレースがあったわけで、考えてみれば不思議はないのだけど。

    本書で描かれる馬運車開発のエピソードもおもしろい。競走馬を競馬場まで運ぶとき、昔は人が馬を曳いて徒歩で連れていくのがふつうだった。ところがあるとき馬を徒歩で運んでいたのではレースに間に合わなくなる事態が発生したらしく、出走馬を大急ぎで運ぶのに馬運車が作られたという。馬運車が開発されたのは19世紀の前半で、自動車が普及するよりもはるかに昔のこと。だから当時の馬運車の動力は馬だった。馬を運ぶのに6頭引きの馬車を使ったというから、逆転の発想というか、苦肉の策というか、金にものを言わせた解決法でつい吹きだしてしまう。ところが馬運車で運ばれたこの馬は、通常であれば歩かされるはずだった道のりをずっと休まされていたので元気があったのだろう、なんと大レースを勝ってしまう。馬運車は言ってみればルールの穴を突くような形で登場したけれど、この一件をきっかけに馬運車を使う人があらわれはじめたという。

    本書ではクラシック競走成立の経緯についても触れられている。昔は競走馬の能力は7歳から8歳ごろにピークをむかえると考えられていたようで、またレースの方式も出走馬を固定して複数回レースをして勝敗を決めるヒート競走が主流だった。距離も4マイル以上を走るのが当たり前だったという。だから3歳馬による一発勝負のレースとして企画されたセントレジャーステークスやオークス、ダービーが当時としては非常に斬新だった、というのもうなずける。いまや、セントレジャー、あるいは日本の菊花賞にしても距離が長いと言われレベルの低下が言われることもあるわけだけど。

    さらに本書ではサラブレッドの三大始祖を筆頭に、歴史的に重要な馬たちが時代順に紹介されていく。とりわけ後半、戦後に入るとわたしでも名前を知っている世界的な超有名馬が次々に出てくるのだけど、バラバラの点でしかなかった知識が線になってつながっていくのはかなり快感だった。

    日本の競馬についても開国期の時代から書かれていて興味深いけれど、分量的にはそれほど多くない。ただ日本各地にあった競馬倶楽部(競馬の施行団体)が統合されて日本競馬会が設立されたという記述は興味深い。大きな流れで見れば、日本の中央競馬も「1940年体制」と考えられるのかもしれない。

    以上に述べたように、本書では競馬にまつわる話題がかなり手広く手際よく紹介されていて、競馬の歴史を概観するにはかなり読みやすいと感じる。一方、個々の人や馬のエピソードなどはどうしても淡白になってしまうので、競馬になじみのない人がいきなり本書を読むと味気なく感じるかもしれない。その反対に、競馬のことをある程度知っている人でも、もの足りなさを感じるかもしれない。アレフランスが出てくるのにダリアは出てこないの?とか、バックパサーが出てくるのにドクターフェイガーやダマスカスは出てこないの?とかカブヤラオーが出てくるのにテスコガビーは出てこないの?などなど。

    本書ではセントサイモンが当然取り上げられている。セントサイモンが種牡馬として一気に栄華を極めた時代については書かれているけれど、その後セントサイモンの父系が急激に細ってしまったこと(いわゆる「セントサイモンの悲劇」)についてはとくに言及がなく、この点もややもの足りなく感じる。一方20世紀のはじめごろに、英ダービーを制する牝馬が次々現れた(1908,1912,1916)ものの、それ以降牝馬の勝った例はないことについては書かれている。これはひとつの説だけれど、有力種牡馬がいなくなり「端境期」みたいなものが生まれたときに牝馬が活躍をはじめるという話がある。このあたりの説はたとえばサンデーサイレンス亡き後の日本の競馬について言われてきたことではあるけれど、「セントサイモンの悲劇」と対比させる形で、20世紀初頭の牝馬によるダービー制覇について触れてみてもおもしろかったのではないだろうか。

    また本書は公正な競馬を実現するために重ねられたいろいろな努力を紙幅を割いて説明しているので、せっかくだからたとえば発馬機(ゲート)の歴史に触れてみてもよかったのではないか。あるいはレースの格付け(グレード制)の歴史をかるく解説してみてもおもしろかったのではないか。著者はエピローグで「日本の競馬のレヴェルはもはや野球やサッカー以上に世界レヴェルにある」と書いている。その主張の当否については議論があるだろうけど、それなら日本が「パートI」国に昇格し、格付けが国際化したことなどを踏まえておくと、主張にもっと厚みを出せただろうとおもう。20世紀以降の競馬について、本書の記述は有名馬の活躍や有名なレースを列挙する方向に重心が傾いてしまっている感がある。一方、20世紀以降でも競馬にまつわるルールを整備するような努力は続くわけで、そういう話題をもっと取り入れるとバランスがよくなったのではないだろうか。

    競馬は創作か実話かわからないようなエピソードが豊富なので、そう考えると本書の記述は総花的で記述に厚みがないように見えるかもしれない。でも逆にいえば、本書に登場する固有名詞を検索したり、Wikipediaを読むなど、「続きはWebで」方式でさらに楽しめるということでもある。そういう意味で、競馬に関する個々の細かいエピソードは断片的に知っているけれど、全体的な歴史や流れはよくわからないという人なら、本書は十分楽しめるのではないかとおもう。巻末には馬名索引がついているので、名馬カタログ的にパラパラながめてみるのもありかもしれない。

    中公新書というとお堅いイメージがあるけれど、本書は意外にもかなり気楽に読めた。一方これは余談だけど、わたしの手元にある本書の初版には、わたしでも気づくような誤字らしき箇所がいくつか見られた。あと、文章が若干こなれていないように感じられる下りもあり、校閲に不安を感じてしまった。

  • 2017/5/2読了。
    教科書ですね。p135とp210に付箋。

  • タイトル通り競馬の歴史について俯瞰する本。古代の競馬から最近の競馬までザックリと解説する。
    競馬の楽しみはいろいろあるが、おそらく大半は馬よりもお金が好きな人達だ。この本には金儲けのノウハウが全く書いていないので、ギャンブル好きには読む価値は無いと思うが、文化としての競馬が好きな人には大変面白い内容で、この本を通読すれば、競馬が
    どのように発展してきたかがよく判る。
    著者は東大の名誉教授。歴史が専攻で他にも馬の文化についての著書がある。世界中の競馬場を巡り、歴史的なレースにも立ち会ってきた経験があり、所々に自
    身の体験が紹介されている。
    競馬は多くの人が関わる催し物であり、1頭の馬を巡って様々なドラマがある。馬に纏わる話(血統、レース)関わった人々(騎手、調教師、馬主、主催者)や
    レースの内容など、知らなかった話がいろいろあって大変面白く読めた。

  • 今まで、こういう本ってありそうでなかった。

  • 平地競馬の誕生や馬券の取り組みなどを欧米や日本様々な地域でどのように競馬が今日まで発展していったかの変遷を書いた一冊。

    ヒート競走から現在の競走になる変遷、サラブレッドの誕生、競走年齢の低下や距離短縮など今からは想像もできないような競馬が行われていたことやまた馬券の面で見ると不正が横行するなかでの制度の整備に苦心したことが本書で学ぶことができました。

    また本書では時代に活躍した名馬についても書かれており、名前だけしか聞いたことのない馬の当時の様子や強さも知れてそちらも勉強になりました。

    日本馬のレベルの向上による活躍や海外でのレースも買えるようになり、ますます日本競馬における世界との距離が近くなるなかでルーツを知ることのできる貴重な一冊だと感じました。

  • やはりこのテーマを新書で出すにはボリューム不足の印象。

  • 内容はともかく、なんとなく中公の編集の質が下がっている気がする。企画はいいと思うのだけど。

    内容は、世界の競馬をこのボリュームに入れるのだから、忙しくなるのは仕方ないよねって感じ。

  • 競馬版、世界史の教科書とでも言うべき一冊で、興味深く読ませてもらった。広く様々な国や時代に触れている分、内容が浅く留まるのは否めないが、競馬がいかにして今のような姿になったかをざっくりと感じることはできる。
    その競馬の歴史的な流れを理解することは、海外馬券が解禁された今の競馬ファンには重要なことだし、各国の競馬の違いを踏まえた、より正確な予想の一助となるやもしれない。

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プロフィール

早稲田大学国際教養学部特任教授、東京大学名誉教授
1947年、熊本県生まれ。1973年一橋大学社会学部卒業、1980年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。
東京大学教養学部教授、同大学院総合文化研究科教授を経て、現職。専門は古代ローマ史。
『薄闇のローマ世界』でサントリー学芸賞、『馬の世界史』でJRA賞馬事文化賞、一連の業績にて地中海学会賞を受賞。
おもな著書に『教養としての「世界史」の読み方』 『教養としての「ローマ史」の読み方』(以上、PHP研究所)、『興亡の世界史 地中海世界とローマ帝国』(講談社)など多数。

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