ラテンアメリカ文学入門 - ボルヘス、ガルシア・マルケスから新世代の旗手まで (中公新書)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 207
レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024046

作品紹介・あらすじ

文学は社会にいかなる影響を与えたのか-一九六〇〜七〇年代に旋風を巻き起こし、世界に強い衝撃をもたらしたラテンアメリカ文学。その潮流はどのように生まれ、いかなる軌跡をたどったのか。ボルヘス、ガルシア・マルケス、バルガス・ジョサ、ボラーニョら作家の活動と作品はもとより、背景となる歴史、世相、出版社の販売戦略なども描き出す。世界的ブーム後の新世代の台頭にも迫った本書は、広大で肥沃な新しい世界へ読者を誘うだろう。ブックガイドにも最適。

感想・レビュー・書評

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  • 漠然と読んでいたラテンアメリカ文学が整理されると、いろいろと目からウロコ。G・マルケスの百年の孤独が、当時のラテンアメリカ文学界にない土着の民族性を協調した「古臭さ」がウケて世界的にブレイクし、それに引っ張られてボルヘスやリョサ(本書ではジョサ表記)が次々スターになり、プイグなんかも恩恵を受け…そうだったのか!「ブームの五人衆」がマルケス、リョサ、コルタサル、フエンテス、ドノソ。
    読みどころは筆者寺尾氏の辛口批評だ。ラテンアメリカ文学ってマジックリアリズム面白いよね、という甘いイメージを持っていると全否定される。初心者が読むとバイヤスがかるんじゃないかと思うくらいだ。
    五人衆も、初期の百年の孤独や都会と犬どもなどは評価するが、ブームを経て文学への関心を失いろくなものを書かなくなる、などとさらっと書いている。アジェンデなど見る影もない。読者層が劣化・大衆化したからうけたのであり、「芸術的・学術的価値を持つ作品は全く書いていない」。アルケミスト、赤い薔薇ソースなどのベストセラー本は軒並みばっさり。
    大人気のボラーニョすら、2666は「分厚い小説をありがたがるアメリカ人読者から熱烈な指示を受けた」が、「難解な作品にはついていけないが低俗なベストセラーには満足できない読者が、カルト集団のようになんでも闇雲に崇拝する」。セサル・アイラは「玉石混合どころか玉より石を生産しており書けば書くほど評判を落としている」。
    まずは、百年の孤独(読んだ)、都会と犬ども、夜のみだらな鳥 コルタサルの短編など、評価されている本から読むのが良さそう。
    最近ではキューバのレオナルド・パドゥーラ「犬を愛した男」バスケス「廃虚の形」(ただし名声は駄作)が「地図と領土」や「HHhH」に匹敵するくらい良いと。翻訳が待たれる。

  • 単騎野を行くが如き仕事量の翻訳家、寺尾隆吉ならではのガイダンス本。巨匠の作品でも評価は辛辣。こういう著述態度で臨んでくれると、薦められた本に強い興味がわく。
    空前のブームを経て、現在では玉石混淆どころか玉が見つからなくなるように至る過程が、要点を絞って書かれている。流れをつかむ意味でも分かりやすく、また出版文化論として読んでも秀逸。

  • 凄まじい勢いで凄まじい労作を翻訳なさっている寺尾先生の作った教科書。
    索引がないのが残念だが……。
    作品論よりは、作品の完成に至る背景や南米文壇の歴史、出版社の思惑、などに力点が置かれており、その点でも面白い。
    憶えるくらいに読み込む必要あり。

  • ここ100年くらいのラテンアメリカ、スペイン語圏の小説を巡る状況と背景を理解するのに、大変役に立つ一冊です。著者ならではの毒舌的!表現も楽しめます。

  • なるほど、ブラジル人作家を始め、ラテンアメリカの作家が少ない理由が分かった。

  • 骨太なラテンアメリカ文学入門。書き手と読み手を含めた出版事情を踏まえて、文学的な潮流や作品論まで包み隠すところなく記述している。

  • ラテンアメリカの小説が黎明期からこの100年でどのように変遷し、今や欧米や日本と並ぶ文学大国に仲間入りするも、どのような現代病を患ったのか書かれています。実はガルシア・マルケスくらいしか読んだ事ないですが、興味ある分野なので、本書をブックガイドにして作品をいくつか当たってみようと思います。

  • ラテンアメリカ文学の積ん読は増える一方である。
    マルケスの全集は手付かずだし、他にもいかにも重厚そうな文学臭を醸し出すが故に思わず手に取り、結局その重圧(これは大体の場合、物理的な質量でもある)に打ち勝って読み始めることができない本が何冊も溜まっている。しかも自覚していなかったが、ボラーニョもラテンアメリカの人だと言うではないか。一体うちには何冊ラテンアメリカ文学の積ん読があるんだ。
    と途方に暮れる自分にとって、この本は少なくとも少しだけ背中を蹴ってくれるような本になった、かもしれない。散発的に手に取ったそれらの本が、歴史とともに系統立てて紹介されているので、ああ、そういう文脈でこの本は書かれたのか、と非常にわかりやすい。バラバラに放置されている積ん読たちが、それなりに秩序だったものに感じられるようになったので、ああ、そうだなあ、いい加減『百年の孤独』くらいは、今年中には読みたいところですなあ。
    それにしてもまあ、その文脈含め著者が割と容赦ない評価を作家たちに下しているので(特にボラーニョに辛口だったのは印象深かった)、その先入観は必ずしも良いものとは言えないよな、とも思うのだけれど。

  • ラテンアメリカ文学を歴史に沿って解説。作家のエピソードも豊富で読書のモチベーションが上がる。
    いま流行りのボラーニョにはちょっと厳しい。

  • この本に出て来る作家の中では、ボルヘス、マルケス、リョサ(ジョサって書かれてるけど、うちにある本はいずれもリョサなんだよなぁ、わかればどっちゃでもええけど)、ボラーニョを「読んだことある」くらいで、すべて読んでるわけじゃない、ある意味入門書には最適な読者かも知れん。
    という立場で読むと、まぁ故人も多いけれどもけっこう辛口よね。いや、読んでないから辛口評価が妥当かどうかは判断できんけど、イザベル・アジェンデとかかなりボロカス。マルケスも百年以外は叩くし、プイグとか最近日本で流行りのボラーニョも。何となく褒めまくってるだけよりは信用できる気はする。

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著者プロフィール

1971年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。現在、早稲田大学社会科学部教授。専門は現代ラテンアメリカ文学。
主な著書に、『魔術的リアリズム―二〇世紀のラテンアメリカ小説』(水声社、2012年)、『ラテンアメリカ文学入門―ボルヘス、ガルシア・マルケスから新世代の旗手まで』(中公新書、2016年)。主な訳書に、マリオ・バルガス・ジョサ『マイタの物語』(水声社、2018年)、フリオ・コルタサル『奪われた家/天国の扉 動物寓話集』(光文社古典新訳文庫、2018年)などがある。

「2020年 『100人の作家で知る ラテンアメリカ文学ガイドブック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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