贖罪のヨーロッパ - 中世修道院の祈りと書物 (中公新書 2409)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024091

作品紹介・あらすじ

中世初期、アイルランドの聖コルンバヌスによって、自らの心の内に罪を自覚し、意識的にえぐり出す思想が誕生する。この「贖罪」思想は社会に大きな影響を与え、修道院の生活を厳しく規定していく。その絶え間ない祈りと労働からは、華麗な写本も生み出された。本書は、ベネディクト戒律からカロリング・ルネサンスを経てシトー派の誕生に至るまで、修道制、修道院と王侯貴族との関係、経済、芸術等から読み解く通史である。

感想・レビュー・書評

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  • 2017.12―読了

  • 五世紀ころ聖ベネディクトが定めたベネディクト戒律は修道院における生活を厳しく律した。
    罪を告白する習慣は六世紀アイルランドの聖コルンバヌスに由来する。フランク王国においてコルンバヌス修道世が広まった。貴族は魂の救済を求め教会に土地を寄進した。地上の喜捨が天国の宝になるというアウグスティヌスの論理に基づく。
    弛緩していたガリア教会に比べ厳しい戒律を持っていた。シャルルマーニュの子ルイ敬虔帝は公開の贖罪儀式を行った。これは政治的紛争の解決の手段であった。
    修道院は多くの土地を所有し農奴による生産が行われた。中世農奴制にとって修道院は重要な存在である。
    分割後のフランク王国は、9世紀頃、ムスリム、バイキング、マジャール人らの侵略を受けた。修道院へ相当の打撃となった。
    10世紀からクリュニー修道院が再興の篝火を掲げた。修道院の系列化が図られた。ローマ教皇権力が守護者となった。

  • 5世紀から12世紀,ベネディクト戒律〜カロリング・ルネサンス〜シトー派の誕生についての社会史を扱う。世界史では目立ちにくい領域を拾い上げてくれる。

  • 5世紀から12世紀の修道院と戒律の歴史の流れがよくわかった

  • 前著「禁欲のヨーロッパ」では6世紀頃までを扱っていたが、本書は5世紀から12世紀頃までの修道院の推移。

    修道院についてはまったく知らないことばかりで、本書の内容は濃すぎて正直ついていけていない。

  • 5~12世紀の修道院文化の歴史。写本についても少々。

  • 本書の題名を見たときには今現在のヨーロッパの混乱の原因をヨーロッパ自身の罪の意識に求める贖罪思想に関連する本だと勘違いしたのだが、その贖罪思想の源流を辿れる事が結果的に出来た。原罪から派生した贖罪意識は人類共通の感情だが、キリスト教で抽象化された事で人類全体に波及し再帰的に積み上げられた人工的な概念でもあるのでは無いか?

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記は控えさせていただきます。

    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=8769

  • 中世初期、アイルランドの聖コルンバヌスによって、自らの心の内に罪を自覚し、意識的にえぐり出す思想が誕生する。この「贖罪」思想は社会に大きな影響を与え、修道院の生活を厳しく規定していく。その絶え間ない祈りと労働からは、華麗な写本も生み出された。本書は、ベネディクト戒律からカロリング・ルネサンスを経てシトー派の誕生に至るまで、修道制、修道院と王侯貴族との関係、経済、芸術等から読み解く通史である。

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著者プロフィール

1945年生まれ
1978年 早稲田大学文学研究科博士課程退学
名古屋大学文学研究科教授などを経て
現在 名古屋大学名誉教授、日本学士院会員、フランス学士院会員、博士(文学)

著書:
『修道院と農民』(名古屋大学出版会、1997年、日本学士院賞)
『ポスト・ローマ期フランク史の研究』(岩波書店、2000年)
『中世初期フランス地域史の研究』(岩波書店、2004年)
『歴史書を読む』(山川出版社、2004年)
『中世世界とは何か』(岩波書店、2008年)
『カール大帝』(山川出版社、2013年)
『禁欲のヨーロッパ』(中公新書、2014年)
『贖罪のヨーロッパ』(中公新書、2016年)
『剣と清貧のヨーロッパ』(中公新書、2017年)
『宣教のヨーロッパ』(中公新書、2018年)
『歴史探究のヨーロッパ』(中公新書、2019年)
『フランク史I クローヴィス以前』(名古屋大学出版会、2021年)
『フランク史II メロヴィング朝の模索』(名古屋大学出版会、2022年)他

「2023年 『フランク史Ⅲ カロリング朝の達成』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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