浄土真宗とは何か - 親鸞の教えとその系譜 (中公新書)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024169

作品紹介・あらすじ

日本最大の仏教宗派、浄土真宗。開祖・親鸞は、絶対他力の教え、悪人正機説など、思想の革新性で知られている。本書では、さらに平安時代の浄土信仰や、密教呪術とのつながりにも目を向け、親鸞の教えと、それがどのように広まったのかを、豊富な史料とエピソードに基づき描きだす。師・法然から、親鸞、その子孫、室町時代に教団を確立した蓮如、そして東西分裂後まで、浄土真宗の思想と歴史を一望する。

感想・レビュー・書評

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  • 『浄土真宗とは何か』
    2023年5月22日

    親鸞の生涯やその思想について、簡潔にまとまった一冊。浄土真宗の入門にふさわしい。
    本書では、親鸞以前の平安時代における密教から平安浄土教、さらには源信による臨終行儀にも触れる。浄土真宗の前夜を説明することで、親鸞の思想における矛盾への理解がしやすくなっているだろう。

    本書は、親鸞の人間らしい側面に焦点を当てており、大変興味深かった。歴史上の人物、ことに宗教家ともなると、完璧超人いう理想化したイメージを抱きがちである。しかし、本書では人間味あふれる親鸞像が提示され、その苦悩にあふれた一端に触れることができ、親しみをもって読むことができた。

    親鸞の思想といえば「他力本願」が有名だが、親鸞自身も真に「他力本願」となるのは難しいと語っている。妻・恵信尼が娘に与えた手紙には、親鸞が病気でうなされている際に、『無量寿経』を唱えてしまったことが書かれる。自力の心(自分の力によって運命を変えようとすること)に気づいた親鸞は、よくよく気を付けねばならないとしている。

    また、彼の説いた教説には誤解を与えかねないものも多い。親鸞の思想では、他力の信心を得たときに極楽往生が確約されるため、臨終時の来迎を待つ必要はないとしている。それにも関わらず、曇鸞や法然の臨終時の奇瑞を称えているのだ。これでは、臨終行儀を行った方がよいと考える信者がいても無理はない。

    自身の子・善鸞の義絶についても、理想化されすぎた親鸞からの視点からのみ論じ、善鸞を「親不孝者」とする論説に疑問を呈している。善鸞にも言い分があったはずだが、文書が残っていないこともあり無視されてきた。後世に生きる我々は想像するしかない部分もあるが、善鸞側の意見を考えるとまた違った見方ができるだろう。

    上記のように、親鸞にも人間としての苦悩や揺れあった。完璧な人間ではなかったのだ。また、一人東国に向かった善鸞においても、必要に応じてその思想が変化するのは仕方なかったのではないだろうか。現在となっては、真相はわからないが、理想化されたままの親鸞像で語ることの危険性を説いている。

    自身の理想的な思想と現実の間で苦悩したり、90年という長い生涯の中で言説に揺れがあったり。よくよく考えれば人間として普通のことだ。本書では、そのような「人間」親鸞に迫った大変興味深い一冊だった。

  • 歴史的な背景や一族の系譜も踏まえて書かれていて、理解が深まる。

  • 浄土真宗の系譜を読み解く作品。
    自分自身浄土真宗について誤解していた点が多く、勉強になった。特に他の神仏に対する参拝とか。
    やはり、殺生が生きていくのに不可避であった中世において浄土真宗はやはり革新的であったし、その一方で現世利益のまえに呪術や加持祈祷が当たり前だった鎌倉時代においては、マイノリティだったのだ。
    浄土真宗を西欧の宗教改革とまで位置づけるのはちょっと無理があるのかなぁ。

  • 日本の仏教に求められていた現世利益をもたらす呪術的行為(加持祈祷)と『往生要集』に端を発する平安浄土教による臨終行儀に代表される自力信仰の影響は、他力本願を提唱し革新的と考えられていた親鸞とその家族、そして子孫たちに多大な影響を及ぼしていた。彼らの教義とその実際の信仰生活はまた別物であったことがよくわかった。

  • 比較的読みやすく読み進める事が出来ました。
    「良くも悪くも学者・研究者だなあ~」と言う感想。
    「宗祖・開祖としての親鸞ではなく歴史上の親鸞を」
    という試みとしては成功しているんでしょうが・・・。
    タイトルの「浄土真宗とは何か」は少しミスマッチかと。

  • 歴史学の立場から、浄土真宗について、開祖親鸞やその家族、継承者らの信仰の実態を明らかにしている。
    これまで浄土真宗の開祖として理想化するかたちで語られがちであった親鸞、そしてその家族・継承者について、史料に基づいて、他力に徹しきれず、理想と現実の間で揺れ動く等身大の姿を描こうとしているところに本書の特色がある。
    本書を通じて、宗教者といえども、完璧ではなく、迷い、揺れ動く人間なのだということを感じた。また、本書は、臨終行儀への着目など、歴史学研究としても水準が高いものだと感じた。
    ただ、「浄土真宗とは何か」と表題を掲げているにしては、必ずしも教義どおりになっていない歴史的実態を明らかにすることに力を入れ過ぎ、肝心の浄土真宗のそもそもの教義・思想についての記述が薄いのではないかという気はした。また、終章の最後で「親鸞の教えは、現代社会における諸問題解決の糸口になるかもしれない」とまとめられていたのは、非常に唐突に感じた。

  • 17/02/01。

  • 日本最大の仏教宗派、浄土真宗。開祖・親鸞は、絶対他力の教え、悪人正機説など、思想の革新性で知られている。本書では、さらに平安時代の浄土信仰や、密教呪術とのつながりにも目を向け、親鸞の教えと、それがどのように広まったのかを、豊富な史料とエピソードに基づき描きだす。師・法然から、親鸞、その子孫、室町時代に教団を確立した蓮如、そして東西分裂後まで、浄土真宗の思想と歴史を一望する。

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著者プロフィール

日本女子大学人間社会学部社会福祉学科教授。
障害児者施設3か所にて13年間勤務。ミシガン州立大学教育学部大学院リハビリテーションカウンセリング専攻修了(MA)。同志社大学社会学研究科社会福祉学専攻博士課程後期修了(Ph.D. 社会福祉学)。
[主な著書]
『援助論教育と物語――対人援助の「仕方」から「され方」へ』(生活書院、2014年、単著)、
『SOGIをめぐる法整備はいま――LGBTQが直面する法的な現状と課題』(LGBT法連合会編、かもがわ出版、2023年、共著)など。

「2024年 『演劇/ドラマの手法とソーシャルワーク教育』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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