定年後 - 50歳からの生き方、終わり方 (中公新書)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024312

作品紹介・あらすじ

自営業などを除けば誰もがいつか迎える定年。社会と密接に関わってきた人も、組織を離れてしまうと、仕事や仲間を失って孤立しかねない。お金や健康、時間のゆとりだけでは問題は解決しない。家族や地域社会との良好な関係も重要だ。第二の人生をどう充実させたらよいか。シニア社員、定年退職者、地域で活動する人たちへの取材を通じ、定年後に待ち受ける「現実」を明らかにし、真に豊かに生きるためのヒントを提示する。

感想・レビュー・書評

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  • 仏典には「臨終(死)について学んでから、他の事を学ぶべきだ」とあるという。

    著者は、大学院卒業後生命保険会社に勤務し、定年を迎えた後この本を出版した。
    人生の折り返し点を過ぎたら、「死」から逆算して人生を考え生き抜いていくのだというのが本書のテーマだ。

    脇目も振らず働いて一人前の社会人として実力を身につけていくべき青年期。
    その経験を基にして社会で活躍をしていく壮年期。

    著者の大きな転機は2回。
    40歳で阪神淡路大震災に遭遇したこと。
    47歳で体調を崩し長期休職したことだという。

    この経験が、自分自身への接し方、社会に対する見方を大きく変えたという。

    急速な医療の発達で、日本人の平均寿命は圧倒的に伸びた。
    ただ、その増えた年月の過ごし方を指し示す指標は存在しない。

    定年まで会社に縛られ、奉仕し、家族のためと、耐え抜き、働き抜いた男たち。

    だが、定年と同時にその肩書きは通用しなくなる。

    趣味に生きるのも良い。
    地域の活動に精を出すのも素晴らしい。

    そこで大事になるのは、肩書きや過去の経歴をひけらかすことでなく、積極的に役割を担い責任を果たしていこうという姿勢だという。

    「自分にとって本当に大事なものや、自分が果たすべき役割に気づいた人は、優しい眼差しを持った穏やかな表情になる」

    多くの定年後の人たちを取材してたどりついた言葉には重みがある。

  • 副題のとおり
    生きるためには生き抜くためには
    理想通りに行くかな?

  • まさに自分の状況にうってつけの時期に出た。新聞広告はたぶんオビと同じ「人生は後半戦が勝負」と大きく出ていた気がする。この4月で一応職業人生は終わり、また同時に子育ても終わっていて、が、なにか働かないでずっと家にいるのになじめない6月に読んだ。

    定年後は、オビのピックアップの言葉、
    ・終わりよければすべてよし に尽きるのだろう。

    そして死ぬまでの時間は実は働いた総時間よりたっぷりあり、
    ・自由にできる8万時間(84歳まで生きるとして睡眠食事等を除いた時間を計算) もあるのだが、

    しかし元気なのは、
    ・75歳までの「黄金の15年」。

    文中では2002年のアメリカ映画「アバウト・シュミット」で定年退職した主人公が自分が生まれた土地や通った大学にも行ってみるが、過去のいい思い出は蘇らず、逆に厳しい現実が次々と主人公を襲う。~過去を振り返ってみてもしょうがないのか。

    多くの定年者のインタビューではありあまる時間を有効に使い、悠々自適に過ごしている人は少なかった。

    作家の森村誠一氏は60歳から70歳が本当は自分の能力が一番発揮され”何をしてもいい自由を選べる「誉生」”の時期といったが、楠木氏は「しなくてもいい自由」の余生も素晴らしく、要は退職後の一日一日を「いい顔」で過ごせるかどうか、だという。

    現役中はもっと自由な時間があれば、もっと本も読めるのに、もっと映画もみられるのに、もっと音楽も聴けるのに、楽器にも挑戦したいのに、パッチワークもできるのに、と「もっと自由な時間があれば」というのがあったが、いざ自由な時間があると、上のどれもしていない。

    最大の理由、それは思いもかけないことだったが、興味の対象が変わっていた。

    本などは仕事がらみでどんどん必要と興味が沸き読んでいたが、仕事がらみのものにはパタっと興味が無くなった。まあ、しかし別な興味は沸いてきて、旅行に行ったイギリスに関する事が目下の興味。

    映画や、音楽も以前ほど興味が沸かない。若い人の恋愛物語はなにか見る気が起こらず、あれほど生活を覆っていたロック、ジャズもほとんど聴いていない。

    時間ができたら、とためておいた布地、これは8月に簡単なブラウスを作りミシンの感覚が戻ってきたので、パッチワークもするかもしれない。

    しかーし、最大の関門は体力の変化である。これはミシンをかけて実感したが、細かい手元がよく見えなくなっている。また8月には同じ日に2回も転び、やはり定年後は「体力」が最大のキーワードであるように思った。

  • ●→本文引用

    ●60歳からの人生における自由時間は8万時間もある。これは20歳から働いて60歳まで40年間勤めた総実労働時間よりも多いのである。定年後の持ち時間は決して少なくない。また多くの会社員や定年退職者の話を聞いて感じるのは、「終わりよければすべてよし」ということだ。若い時に華々しく活躍する人も多い。それはそれで素晴らしい。ただ悲しいことに、人は若い時の喜びをいつまでも貯金しておくことはできない。大会社の役員であっても、会社を辞めれば”ただの人”である。一方で若い時には注目されず、中高年になっても不遇な会社人生を送った人でも、定年後が輝けば過去の人生は一変する。そういう意味では、「人生は後半戦が勝負」なのである。
    ●なぜ「会社は天国」なのか(略)とにかく会社に行けば人に会える。昼食を一緒に食べながらいろいろな情報交換ができる。若い人とも話ができる。出張は小旅行、接待は遊び。歓迎会、送別会はみんなと語り合える。遊び仲間、飲み友達もできる。時には会社のお金でゴルフもできる。規則正しい生活になる。上司が叱ってくれる。暇にならないように仕事を与えてくれる。おまけに給料やボーナスまでもらえる。スーツを着ればシャキッとする。会社は家以外の居場所になる。などなど挙げていけばいくらでも出てきた。
    ●小さい頃に得意だったこと、好きで好きで仕方がなかったことが、次のステップのカギを握っているケースがある。(略)またそういったポジティブな事柄だけにとどまらず、子どもの頃にコミットしていたことや、コンプレックスが重要なカギを握っていることもある。
    ●どのような社会とのつながりを目指したとしてもそこに優劣はない。しかし数多くの事例を見てきた立場から言えば、次の2点はこだわった方がいい。1点目は、何に取り組むにしても趣味の範囲にとどめないで、報酬がもらえることを考えるべきである。(略)何かに取り組む時に、他人の評価をお金に換算する態度は持っていた方がいい。(略)2点目は、望むべくは自分の向き不向きを見極め、自らの個性で勝負できるものに取り組むことだ。定年後の60歳から74歳までは自分自身を縛るものが少なく、かつ裁量をもって動ける黄金の15年である。人生後半戦の最大のポイントだという意気込みで、自分ならではのものを見出したいものである。
    ●多少割り切って言えば、中高年から全く新たなことに取り組んでも、長年の組織での仕事で培ったレベルに到達することは容易ではない。今まで取り組んできた仕事を直接、間接にカスタマイズして社会の要請に応えられるものにすることが力を持つ。
    ●やはり人は生きてきた道を還るのではないかと思ったのだ。(略)故郷は居場所の一つだけにとどまらず、自分の還る道筋ではないかと思った次第である。
    ●過去と未来につながっている自分は、誰とも比較を許さない唯一無二の存在である。そこには抽象的な自分は存在しない。(略)定年後において新たな自分を発見するためには、未来の自分、過去の自分に手助けを求めることがポイントだ。

  • 著者自身、知人インタビューを通じて、様々な定年後の時間の過ごし方がリアルに伝わる内容で、とても参考になった。
    - 第1章では、日本のいわゆる大企業における定年事情、定年制の必要性が理解できた。また、隠居と定年の違いの説明は納得感があった。
    - 第2章、第3章では、図書館、スポーツジム、さまざまな定年後がリアルにイメージできた。自分もその50代を目前にして、遠くない将来のことと思え、リタイア後の人々、特に男性の行動が理解できる。
    - 第4章「黄金の15年」を輝かせるために、と題している。いわゆる平均的な健康寿命である60歳から75歳までを黄金期ととらえている。多くの人が子供も自立した時期で、健康であれば、自分の好きなように行動できる時期ということだ。もしかしたら自分の寿命は60歳かもしれないが、その後の黄金期に向けても今から計画、行動しておくことも必要と感じた。
    - 第5章、第6章の社会とどう繋がるか、居場所をつくるか、ということはとても大事だ。今からさまざまな人生を経験する意味でもワークライフバランスを修正し、興味のあることにチャレンジしたいと思った。
    - 第7章 死から逆算してみる、の部分は最も心を打たれたパートだ。当たり前であるが全ての人間には必ず死が訪れる。そのことを考えるだけでも、自分の心がとてもつらくなり耐えられなくなる、家族と会えなくなることを考えるだけでも心がつぶされそうになる。多くの偉人、著名な人々のような、社会に大きな貢献、功績をあげられなかった、また会社生活でも一部の成功者とは程遠い自分であっても、せめて自分の最期を幸せに迎えられるよう、人生を全うしたいと感じた。そうしないととてもではないが、心がつぶされそうになると思った。自分の死生観を改めて考えさせられる内容であった。

  • 楠木新(1954年~)氏は、京大法学部卒、大手生命保険会社で人事・労務、経営企画、支社長等を経験したが、47歳の時うつ病で休職したことをきっかけに、勤務と並行して、大阪府立大学大学院経営学研究科MBAを取得、関西大学商学部非常勤講師を務め、「働く意味」をテーマに取材・執筆・講演に取り組む。定年退職後、楠木ライフ&キャリア研究所代表、神戸松蔭女子学院大学人間科学部都市生活学科教授。
    私は、5年ほど前に一度転職を経験した50代後半の会社員だが、人生後半の生き方には多分に漏れず不安を持っており、これまで、五木寛之、斎藤孝、出口治明、佐藤優、弘兼憲史、大前研一らの書いた指南本を読んできて、それぞれに書かれていることは異なる(どんな社会的成功者・有識者であろうと、これまで送ってきた人生は皆ひとつであり、経験も考え方も性格も違うのだから、異なって当然)ものの、様々な気付きが得られた。しかし、彼らには唯一共通する点があり、それはいわゆる普通のサラリーマンではないということである。
    その点、本書は、著者が典型的なサラリーマンとして社会人生活を送ってきており、本人の経験についても、多数の人々への取材の内容についても、目線がそこにあることが、類書と大きく異なる。
    そして、通読してみると、書かれている内容やアドバイス自体には、特段目新しさがあるわけではないのだが、ひとつひとつの記述が非常に現実的で、改めて自らの今後を考えねばという気持ちにさせられた次第である。
    サラリーマン生活を送ってきた中年層が、人生の後半の準備をするためには、参考になる一冊と思う。(尚、この手の本は、様々な内容のものをいくつか読むのがいいだろう)
    (2022年6月了)

  • ●読んで得たもの
     定年後とは現役と大きく違う(報酬、生活環境)

    ●感想
     まずは今、認識を改めて気を引き締める。
     ゆとりある老後を過ごせるか、後悔しない生き方ができるか考慮しつつ、適宜生活を見直していく。
     74歳までの黄金の15年は能動的に考えて生きていきたい。

  • 会社に使われる人 会社を使う人を読めば、基本的には十分。より、定年後、にフォーカスした本。

  • <目次>
    プロローグ 人生は後半戦が勝負
    第1章   全員が合格点
    第2章   イキイキした人は2割未満
    第3章   亭主元気で留守がいい
    第4章   「黄金の15年」を輝かせるために
    第5章   社会とどうつながるか
    第6章   居場所を探す
    第7章   「死」から逆算してみる

    <内容>
    自分もソロソロ近づいてきた「定年」。このジャンルでは定評のある著者のベストセラー(2017年刊)。語り口がわかりやすく、実体験や多くのインタビューから構成されているので、信憑性が高い。分析は当たり前の感じだが、そのあたりが妥当なのだろう。ともかく趣味でも仕事でもいいので、新しいところで社会とつながること。少し大変な方が楽しい。現役時代の感覚は捨てること(これが一番難しいかも)。などかな?最近新刊が出ている(『定年準備』)も目を通したい。

  • 自分の人生について、長い時間軸で考えたいなと思い、人生計画の本や自分より上の年代向けに書かれた本を、読むようにしています。

    この本はまず、定年退職を迎えた人たちがどのような暮らしを送っているか? リアルな姿を書いています。
    その内容を読むと、男性、とくに都市部で会社員生活を送っていた人はかなりの割合で、「寂しい」定年後の暮らしを送っていることがわかります。

    その前提を踏まえ、後半では、「いきいきした」定年後の暮らしを送るにはどうしたら良いか、著者がインタビューした人たちの事例を交えて、アドバイスしています。

    全体を通じてまず、定年を迎えてからもしくは直前になって、「何をしようか」と考えるのはかなりリスクがあることなのだと、認識しました。
    著者自身も、保険会社で勤務しながら、定年を迎える前から著述家として副収入を得ていたとのこと。
    できれば45歳頃から、定年に備えた行動を取ることを勧めています。

    そしてこれまでは漠然と、定年を迎える前と後、という大きなくくりで考えていたのですが、体力の衰えを踏まえると、60歳から75歳と75歳以降に、分けて考える必要があるのだなと、気づかせてもらいました。

    毎日通勤して多くの人の中で仕事をする、収入を得る。
    そのような暮らしをしている間はある意味で「苦行」のように感じる会社員生活ですが、そのリズムがなくなった時にどのようなことが起こるのか、どのように感じるのか、具体的なイメージを持つことができました。

    備えあれば憂いなし。
    この分野については他の関連書籍も読むようにして、早めに取り組んでいきたいと思います。

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著者プロフィール

楠木 新(クスノキ アラタ)
楠木ライフ&キャリア研究所代表
1954年神戸市生まれ。1979年京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。人事・労務関係を中心に経営企画、支社長等を経験。47歳のときにうつ状態になり休職と復職を繰り返したことを契機に、50歳から勤務と並行して「働く意味」をテーマに取材・執筆・講演に取り組む。2015年に定年退職した後も精力的に活動を続けている。2018年から4年間、神戸松蔭女子学院大学教授を務めた。現在、楠木ライフ&キャリア研究所代表。著書に、『人事部は見ている。』(日経プレミアシリーズ)、『定年後の居場所』(朝日新書)、『定年後』『定年準備』『転身力』(共に中公新書)など多数。

「2022年 『自分が喜ぶように、働けばいい。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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