通勤電車のはなし - 東京・大阪、快適通勤のために (中公新書 2436)

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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024367

作品紹介・あらすじ

通勤時間はムダである。この苦痛に耐える時間を有意義に利用すれば年間7兆円もの価値が生まれるといわれる。どうすれば満員電車を少しでも快適に出来るのか。新線の建設、ダイヤの工夫、新型車両の導入など、鉄道会社は努力を重ねてきた。人口減少社会の現在も、なお改善は必要である。混雑率200%に達する総武線や田園都市線をはじめ、主要路線の問題点と対策を解説。過去から将来まで、通勤電車のすべてが分かる。

感想・レビュー・書評

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    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/689604

  • 現実味のない混雑率軽減話が多い。
    例えば「8時台に本数を2本増やせば混雑率は10ポイント下がる」「複々線化に早期着手すべきだ」「新線を作れば人は流れる」など。あと10年は何も変わらなさそう。
    時差通勤、都内一極化などの社会的側面から深掘りできたと思うが。
    あと、載せられているグラフにトリミングミスで数字が読めないものなどがあるなど、校正もされなかった本なのかなと思わせる。全体的に読みにくいし。
    著者は評論家と知り、ただ自分の好きなことを語りたかった本だと思いました。

  • 東京圏と大阪圏の鉄道の話。鉄道について、その究極の輸送力を発揮すべき通勤時の鉄道輸送力の推移をはじめ、人口動態や自動車など他の交通手段との比較等、深い科学的研究・分析がなされている。路線延伸や車両開発の歴史にも詳しい。今後将来に向けての問題点、解決案、展望等も参考になった。
    「東京の西側郊外に開発された田園都市は、最初は分譲地の販売は不調であったが、関東大震災の後は、日本橋あたりの裕福な商家の人たちが競って購入するようになり、住まいは山手、職場は都心と職住分離したことで、毎日通勤する人々が生まれるようになった」p6
    「通勤定期旅客が通勤によって失われた付加価値の1年間の総額は、6兆7000億円ということになる。なお、これは通勤時間を余暇に使うならばという数字である」p8
    「ラッシュ時の運転本数が一番多いのは、東京の地下鉄丸ノ内線で、1分50秒間隔で1時間に32本である。JRで一番運転本数が多いのは、東京の中央線の2分間隔である」p20
    「運転間隔は、駅間の運転条件と停車時間で決まる。駅間の運転条件では、前方の赤信号までに安全に停車できることが条件となる。電車が完全に停車できる距離は、通常は600mで停車できることが求められているので、衝撃なく安全に停車するには46秒かかる。少なくともこの秒数は前の電車との間隔を保つ必要がある。これに駅での停車時間を1分として、約1分45秒間隔とすると、1時間に32本までの運転は可能であると計算できる」p20
    「地下鉄が急速に路線網を広げる中で、都心部では駅構内の水平・垂直と長い距離の(徒歩)移動を強いられるケースが見られるようになった。大手町駅は、東京メトロの千代田線、東西線、丸ノ内線、半蔵門線、都営三田線の5路線が複雑に交差している。千代田線の北側の出口から、東西線の東側の出口まで徒歩の行程で400mあまりの距離がある。ゆっくり歩いて10分はかかる。この距離には、かつて都電の時代には、神田橋、大手町、丸の内一丁目の3つの電停があった。都心部では電停の停留所の間隔はおおむね200mで、きめ細かいサービスを提供していた」p40
    「都電代替バスは、合理化や地下鉄の開業によって廃止されたものも多い。もともと、都電の廃止は、交通局の経営問題から、起債の条件として自治省から求められたものであり、廃止が惜しまれる路線も多い」p42
    「(上野東京ライン)この直通化の工事のために、東京駅を発着するブルートレインと呼ばれる客車の夜行特急・急行がすべて廃止された。客車列車は、品川の車両基地から東京駅まで機関車に牽引されて回送されてくるが、東京駅では機関車の付け替え作業が必要である。そのために回送列車を牽引した機関車は別の線路を使って下り先頭位置に転線することが必要である。その間、2つのホームがつぶれることになる。そのため、ホームが不足するようになると、いったん秋葉原側の引き上げ線に列車を逃し、1本前の回送列車を牽引してきた機関車を下りの先頭に連結して、発車ホームに据え付けるという手順をとっていた。この引き上げ線が現在の上野東京ラインの本線となるため、工事が始まると使えなくなった。そこで、機関車の付け替えの必要のない電車寝台の特急「サンライズ出雲」「サンライズ瀬戸」だけを残して廃止されてしまった」p44
    「ホームの数が限られるという条件の下で運転本数を増やそうとすると折り返し電車をやめてスルーさせるのが賢い方法であるが、中距離電車の長距離運用が増えたことで、他線区の事故・故障による影響をもろにかぶることになった」p45
    「京王は、もともと新宿駅東側の新宿三丁目から出ていたが、戦時中電力供給が不安定で国鉄線を乗り越える甲州街道の跨線橋の坂を登れなくなったため、新宿西口に駅を移した」p46
    「東京では、昭和13年の陸上交通事業調整法に基づく交通調整により、近郊私鉄は山手線上をターミナルとし、その内側への乗り入れは認められなかった。戦前に開業した銀座線に続き、戦後、丸ノ内線の建設が始まるが、これも山手線の内側に収まっている。近郊私鉄のターミナルと都心を結ぶ役割を担い、近郊私鉄とは競合せず(大阪との違い)、むしろ補完する位置づけであった」p74
    「東京では、列車種別が単純化しているうえに、複々線化されている線区も線路別の複々線であるために、同じホームの対面での乗り換えができない。緩急接続が機能しているのは、特別快速と快速が同じ線路を走っている中央線ぐらいである。その点では、大阪のJRの電車の方が利便性が高いといえる」p92
    「なんば線の急行から降りた客は、2番線に停車中の梅田行きの車内を通り抜けて、垂直移動なしに1番線の梅田行き急行に乗り換えることができる」p94
    「かつては、定員の3倍を超す「殺人的ラッシュ」という表現がついたひどい状況であった」p103
    「大阪市の人口は、大阪万博が開かれた昭和45年には298万人あったが、40年経った平成22年には1割減少して266万人となった。よく横浜市と比較されることが多いが、横浜市の人口は、昭和45年の223万人から平成22年368万人へと、65%の増加を見た」p143
    「大阪では、近郊私鉄はもともと軌道法に準拠し、使用電圧も600Vと、国電や東京の私鉄の多くが1500Vであったのに比べて低い電圧を使用していた。電圧が低いと、同じ馬力を出そうとすると多くの電流が必要となるので変電所や送電設備の負荷が大きくなる。編成両数を増やすことも難しかった。そこで、大阪の私鉄では、編成両数の増加よりも運行本数の増加で対応していた」p198

  • 大阪圏の内容が杜撰。鉄道と人口動態の関係を追う内容であるのに、滋賀と和歌山を抜いている。なのに、兵庫と京都北部の電車通勤とは縁が薄いところに言及するとは。

  • 東京と大阪の通勤電車発達の歴史は面白かった。住んでたところと、住んでるところだし。
    地形を頭に浮かべる事が出来れば面白いが、そうでない人はどうなんだろう。話が学術的になってくるとつまらなくなる。もうちょっと野次馬的視点で見ても良かったのでは。

  • 一縷の望みを持って読んだが、東京圏の混雑はなくならないと確信した。

  • 電車の長さを長くする、幅を広げる。井の頭線。
    丸ノ内線は1分50秒間隔、中央線は2分間隔。

    赤坂見附で乗り換えると便利。

  • 若い頃より興味が薄れたことに気が付きました!

  • 中公新書らしく、用語解説が乏しく(あるていど知識興味を有した人を対象にしている)質実剛健な内容。
    たいへん細かな話ではあるが、図解がわかりにくく、図解について触れている文章と掲載ページがズレている等、ややストレスに感じた。いま現在の混雑の解消と今後の施策が知りたいのに、そもそもの歴史の振り返りが長々と続くところも興ざめ。

  • 2017/06/28 037

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著者プロフィール

1956年、東京都江戸川区生まれ。亜細亜大学講師、一般社団法人交通環境整備ネットワーク相談役、公益事業学会、日本交通学会会員。専攻・交通政策論、日本産業論。「鉄道ジャーナル」に論考を執筆するほか、著書に『鉄道会社の経営』『新幹線の歴史』『通勤電車のはなし』『鉄道と政治』(中公新書)、『JR北海道の危機』『JR九州の光と影』(イースト新書)、『鉄道会社はどう生き残るか』(PHPビジネス新書)などがある。

「2023年 『日本のローカル線 150年全史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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