観応の擾乱 - 室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い (中公新書)

著者 : 亀田俊和
  • 中央公論新社 (2017年7月19日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024435

作品紹介

観応の擾乱は、征夷大将軍・足利尊氏と、幕政を主導していた弟の直義との対立から起きた全国規模の内乱である。本書は、戦乱前夜の動きも踏まえて一三五〇年から五二年にかけての内乱を読み解く。一族、執事をも巻き込んだ争いは、日本の中世に何をもたらしたのか。その全貌を描き出す。

観応の擾乱 - 室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い (中公新書)の感想・レビュー・書評

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  • 大河ドラマ「太平記」を思い出しながら,読みました。
    あまり知識のないところでしたが,非常にドラマティックな内容で,面白く読めました。

    本当によく分からないのが,尊氏が実子の直冬を疎んじた理由です。
    尊氏の直冬の扱いが酷いからといって,それを周囲の者が不満に思ったことが観応の擾乱の原因の一つというのも,いまいちピンときませんでした。

    この点については,今後,研究が進んで,新たな知見が発表されることを期待したいです。

  • ただでさえ込み入った観応の擾乱を室町期の知行制度や訴訟制度と紐付けて解説した本格的な史学の書物であるので、一般人には受けないかもしれない。佐藤進一、羽下徳彦、山本康司といった無名の歴史学者との論争もピンと来ない。

    しかし、観応の擾乱にどっぷりと漬かった著者が魂を込めて書き下ろした本であることは間違いない。南朝を正当とする伝統的歴史学者が多い中、北朝側から見た本書に拍手喝采。私も以前から南朝史観に違和感あり。とても新書に収まるテーマではないが、応仁の乱も観応の擾乱も新書にしてしまう中公新書の度量の広さは計り知れない。

    率直な感想を書くと、足利尊氏が実子直冬を、足利直義が高師直を、桃井直常が足利尊氏をそれぞれ嫌った理由は「なるほど」という水準に至っていないが、それぞれ義詮重視、出過ぎた執事への牽制、知行への不満ということで理解する。ただし、尊氏を殺す意図を持たないと著者が解釈する直義が観応の擾乱を漫然と続けた理由は分からないまま。直義はやる気がなかった、という説明では説得力がないなあ。著者の他の著作にヒントがあるかも。

  •  「室町時代」というのはどうにも派手な戦国時代に飲み込まれてしまって日本史でも影が薄いが、著者も指摘するとおり200年も続いた長期政権であり、その成立背景は大変興味深い。
     征夷大将軍足利尊氏という名前だけは有名で、「とにかく何かした」みたいに扱われがちなところ、しかしその時代を拡大していけば生き生きと立ち回る武士や天皇がそこにいるのである。
     大枠だけは有名で細部がよくわからないというのは歴史研究ではよくあることで、しかも有名な小説になっているとあるエピソードが史実なのか創作なのか、史実として伝わっている創作なのか、そこを一つ一つ明らかにしていかなければならないわけで、いうなれば出来上がっている模型をいったん全部ばらして、一つ一つのパーツを確かめて、偽物を除外し、時には新しいパーツを採用して組み上げる途方もない作業である。

     本書で取り上げられた感応の擾乱は1350年から52年というわずか2年程度の出来事であるが、勢力も趨勢も目まぐるしく入れ替わる。今でこそ居ながらにして全国どころか世界のニュースも調べられるご時勢だが、当時の人々はどうやって情勢を知っていたのだろうか。敵だと思って戦っていたら、実は味方の味方になっていた相手だったなんてことはなかったのだろうか。
     情報だけでなく、実際に登場人物たちも京から九州、そして北陸を経由し関東なんて風に全国を移動する。敵を大群で囲んでいたかと思えばいつの間にか瓦解し逆に追い込まれていたりする。そういった目まぐるしい情勢の変化が、押さえつつも生き生きとした筆致で描かれる。著者も楽しんで書いていることが伝わってきて非常に好ましい。

     以前に読んだ「奪われた『三種の神器』」(渡邊大門著)においては南北朝期の皇室の混乱が描かれていたが、本書はそれを幕府側から見ているということになろうか。本書だけでもとても面白いものだが、歴史というのは(あるいは知識全般に言えることとして)多面的に見ることでより面白くなるように思う。

  • 日本の中世で(ひょっとしたら通史でも)2大訳の分からん争い(もうひとつは当然、応仁の乱)とも言うべき、「観応の擾乱(“じょうらん”と読みます)」の解説書。
    あ、でも、とりあえず足利尊氏、直義、義詮、直冬、高師直あたりを押さえとけばいいので、応仁の乱よりシンプルかも?

    ようするに上記武将が同盟したり敵対したりを繰り返しながらふたつの朝廷とくっついたり離れたりに終始した一連の戦いのこと(文字にすると余計に分からんなw)。

    その他の武将は自己都合全開で、どれかに味方していたので、マニアでなければスルーしとけばOKです。

    今も派閥争いに明け暮れている人たちがあちこちにいるけど、人類は600年前から進歩してないっすね(諦観)。

  • 「応仁の乱」がベストセラーになるなかで、さらに地味なテーマを投入してきた。さすがは中公。日本史好きは泣いて喜ぶね。
    人気や知名度はいまいちだけど、将軍と弟の対決、父と子の確執、裏切りを次々と繰り返す家臣団、第三勢力としての南朝、奥州から九州まで広範な舞台……と話題には事欠かない。ここまで要素を詰め込んでおいて、どうして人気がないのか。
    読んでて思うのが、兵を動かすこと戦闘を行うことの感覚が、現代とは全く違うんだな、ということ。簡単に挙兵して、簡単に寝返る。寝返っても再び帰順すればすぐ許される。交渉のちょっとした駆け引きくらいの感覚っぽい。幕府といえども絶対的権力・軍事力を持っているわけでなく諸勢力との関係で成り立っていることの表れだろうし、すぐに沸騰して喧嘩っ早いという中世日本人のメンタリティもあるだろう。

  • 観応の擾乱とは何だったのか。結果的には高師直と足利直義が失脚して、足利尊氏と義詮体制が確立されたわけだけど、そのプロセスは結構複雑である。武将たちが立場をコロコロと変えるので、正直名前をフォローしきれない。誰と誰がどの派閥で、誰が帰参して誰が裏切ったのか途中から分からなくなる。大河ドラマ向きではなさそう。

  • 高校の日本史の教科書で名前だけは覚える「観応の擾乱」だが、これがこんなに短期間で形勢が極端に変動し、地滑り的な離合集散が続くダイナミックなものだとは知らなかった。また、観応の擾乱以降、「努力が報われる政治」が定着し、室町幕府の全盛期につながったという点で、観応の擾乱が初期室町幕府にとって重要な意義を有するものであるということを理解することができた。足利尊氏、足利直義、高師直などの人間像も興味深かった。

  • 良書。

    観応の擾乱というドマニアックな領域ながら、
    非常に丁寧な説明でわかりやすい。

    ただ、当然ながら人を選ぶ。
    歴史系に興味のない方だと、おそらく最後まで読み切るのがかなり苦痛だと思われる。

    ある程度歴史に興味・関心のある方ならかなりおすすめ。

    個人的には初期室町幕府のありようと、
    尊氏のあり方がかなり印象が変わったかな。
    とても面白かった。

  • 面白かった、のだが、知らない登場人物が多くて、今ひとつ入りこめない。しかし、今まで知らなかった尊氏、義詮、直義、師直を知ることができた。
    次は義満を知りたい。

  • 私にとってお城巡りの醍醐味は、その場所で時空を超えた感慨を味わうことです。650年以上前の時代、結果的には主流派となったタフな室町幕府初代将軍足利尊氏と二代義詮が反主流の尊氏の弟の直義、尊氏の庶子直冬の争いに、高師直や佐々木道誉などに南北の朝廷を交えた主導権争い。
    この時代「あれ、あなたは尊氏派?」とか「今から南朝に参加ですか?」のオンパレードです。学生時代に私本太平記の文庫本を楽しく読んだ世代としては馴染みの世界です。特に兵庫県在住者として恥ずかしながら初めて登城した、尊氏が抜けなかった光明寺や、義詮が留まった石龕寺は要害の地にあり、当時を創造するのに絶好の地でした。また書写山や石清水八幡宮も今ではロープウェイやケーブルカーでお手軽ですが、籠城するには最適地であったと思いました。
    それにしても京都を守護することは戦術的には愚作であることも改めて認識しました。
     本書で充分に時空の旅を楽しめますが、一読では難しいところもありましたので、再読すべく太平記の横に並べて置きます。

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