人口減少時代の土地問題 - 「所有者不明化」と相続、空き家、制度のゆくえ (中公新書)

著者 : 吉原祥子
  • 中央公論新社 (2017年7月19日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024466

作品紹介

持ち主の居所や生死が判明しない土地の「所有者不明化」。この問題が農村から都市に広がっている。空き家、耕作放棄地問題の本質であり、人口増前提だった日本の土地制度の矛盾の露呈だ。過疎化、面倒な手続き、地価の下落による相続放棄、国・自治体の受け取り拒否などで急増している。本書はその実情から、相続・登記など問題の根源、行政の解決断念の実態までを描く。

人口減少時代の土地問題 - 「所有者不明化」と相続、空き家、制度のゆくえ (中公新書)の感想・レビュー・書評

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  • 少し前に自宅用の土地を購入したが、その時にいろいろ疑問に思った土地のことについて知りたいと思い手に取った。
    本書の重要な指摘は2点。
    一つは、利用されない土地をどう管理していくかが問題になるという指摘。もう一つは、土地管理の大前提となる土地情報の集積の問題の指摘。
    最初の点。土地はこれまで希少なリソースをどう分配するか(現有者を保護しつつ利用を促進するか)という問題だった。これからは、それに加えて誰も欲しがらない、利用されない負のリソースをどう分担していくかの問題になる、というもの。
    この点は実は今後の取り組み課題として提示されるだけで詳しくは書かれていないけれど、大きな転換点で行先困難なことは間違いない。
    二つ目の点。こちらが本書の主題で、帯にもあるように、すでに国土のうち九州に匹敵する面積が所有者不明になってしまっており、今後も改善の見込みがないなど、今後の政策を進める上で大きなボトルネックになるという。
    土地を売買した経験がある人は「そんなことない、ものすごく煩雑な書類を書いた」と思うはず。私もそう。
    本書の指摘は、1)登記が義務ではないため放置されること、2)土地台帳が目的別に分散していて土地そのものを管理するデータベースがないこと、が根本にあるという。
    2)はたしかに致命的。今のところ固定資産税用が一番網羅的なのに、それが1)の問題によりどんどん陳腐化しているという。
    それで誰がどう、困るのか?売買する本人だけならまだ民間の問題、個人の問題だったが、東日本大震災のあとの再開発や移転先の決定や建築が「所有者不明」のために遅延するなど公共の問題になってきているという。また、所有者不明=管理者不在=荒廃にもつながる。先日の新聞にも、裏山が土砂崩れを起こして自宅の一部が損壊したが所有者不明のため賠償請求もできないし修復工事もされないし大変困っているという記事を見かけた。
    政治家の仕事はこれまでは富の再分配だったが、これからは負の再分配も範囲、という政治家がいて素晴らしいと思ったことがあるが、この所有者不明、管理者不在という土地もその一つになるんだろう。

  • 所有者不明の土地が全国で増えている。
    直接的な原因は相続放棄や相続未登記。直接的要因は、登記なしでも土地取引ができること、名義変更の手続きが煩雑なこと、資産価値の低い土地の場合むしろデメリットが大きい場合があることなど。また、自治体による地籍調査の遅れも指摘される。
    さらにその背景には、日本の法制度がある。土地への所有権がきわめて強く設定されている点と、不動産登記制度の成り立ち。現在の登記簿は不動産の物理的状況を明確にする機能と権利移転の状況を明確にする機能を兼ねているが、本来前者は土地台帳として地租徴収のため国が管理、後者は法務局で管理していた。戦後に前者が法務局に引き継がれたことにより、国が土地所有者の情報を管理しなくなった。

    地図情報を使った便利なアプリやサービスが作られている一方で、同じ土地に関する情報でありながら、人の生活にかなり直接影響を及ぼすこうした問題が未解決のままになっているのかと驚く。もちろん未解決になるにはなるだけの面倒さがあり、調査に膨大なコストがかかる上、所有権やプライバシーといった面倒な問題も絡む。孤児著作物の問題とも似通う点がある。

  • 2017/12/09 京大合同ビブリオバトル 一回戦

  • うーん、、、。イマイチでした。

    問題提起はわかりやすい。が、その先がイマイチ。。問題があります、なぜ起きてます、
    まず、著者は政策アドバイスがお仕事?なようで、最後の章はこうしたらいいんでは?という話であって、

  • 「土地に対しては利益となる場合よりも負担(毎年の税金)になる場合が多いので、相続人も引き受けたがらない」(1万人未満)、「相続人が地元に残っていない。山林・田畑について、所有する土地がどこにあるかわからない人が多い」(1万人未満)、「過疎地で固定資産の価値も低い上、所有者の子が地元に帰ることがますます少なくなり、固定資産に対する愛着がなくなってゆく」(5万〜10万人)など、土地に対する相続人の関心の低下を指摘する記述があった。(p.72)

     地籍調査も相続登記も、自治体や個人の判断にもとづいて行われるものであり、国が強制するものではない。しかし、土地の境界の確定や相続登記がなかなか進まないという、日々の小さなことが積み重なって、いざというときの地域の円滑な土地利用の支障となっていく。土地の「所有者不明化」問題の根底には、こうした制度上の構造的な課題があるのだ。(p.120)

    「空き家バンク」
     新たな仕組みを検討するうえで重要なのが、先述のとおり、「利用を前提としない保全のあり方」を考えることである。
     今後の急速な人口減少を考えると、住民や行政の目の行き届かない低・未利用の土地が増えていくことは避けられない。土地の需要が減少すれば、移住促進や空き地の愛利用など、利用促進だけでは解決できない課題が増えてくるであろう。(p.155)

  • 基礎基本書。それにしても、日本の地籍調査が半世紀もたって半分しか完了していないことに驚く。

  • 空き家問題に興味を持っていたので手に取った。主に不動産登記にかかわる「所有者不明」問題について、制度的、構造的、歴史的な視野を踏まえた問題提起、また全国888自治体への調査で事態の切迫さを織り込みながら、漸進的で現実的な解を模索する。200頁弱とは思えない内容の充実さにおどろき、そしてその問題の重さに身をつまされた。必読。

  • 土地の所有者不明化問題を中心に据えた課題研究を上梓したもので、政策提案がすぐに行政の変革に繋がらないもどかしさを感じる。現在の土地登記制度が税制と切り離され、相続登記が義務化されていない現状を変えるには、相当な荒療治が必要かと思う。業務用の参考図書を読んできたことで、本書の内容の理解が進んだ。

  • 東2法経図・開架 B1/5/2446/K

  • 「明治時代に日本が民法を制定するうえで手本としたフランスは、土地の収用、収益、処分のいずれについても所有者個人の自由であるという、いわゆる絶対的所有権の考え方をとっている。しかし、(中略)個人の所有権に一定の制限を課し、必要な公的利用が円滑に進むよう制度改正が重ねられてきている。たとえば、地方公共団体など公的機関による先買権、すなわち、自治体などが個人より優先的に土地を買うことのできる権利を強化するなどだ。
    土地収用制度も発達しており、先進諸国の中では、収用権の発動がもっとも頻繁に行われる国といわれている。」p.124

    「(中略)『所有者不明化』問題の拡大防止と対応策について、論点は大きく3点に整理できる。①相続登記、②『受け皿』づくり、③土地情報基盤のあり方である。」p.140

    市場の取引では解決できない問題。また、問題があらわになるのはいま現在ではなく将来世代。このような問題こそ行政が解決する必要があると感じる。

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