トラクターの世界史 - 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち (中公新書)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024510

感想・レビュー・書評

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  • 世界の農業従事者憧れトラクター。第一次世界大戦ではトラクターのキャタピラ技術が戦車に転用される悲しい歴史も。ランボルギーニ社がトラクターメーカーでフェラーリの会長に相手にされず対抗心でスポーツカーを作ったのは知っていましたが、米フォード、伊フィアット、仏ルノー、独ポルシェの有力自動車メーカーがトラクターを製造していたのは驚きでした。GPS無人運転技術で人手不足問題は解消できるかは微妙のようです。

  • こういう視点で歴史を掘り下げるのは刺激的で面白い。貴重な資料。近代農業の本質が見えてくる。

  • 一点。ヤンマーの「ヤン坊マー坊天気予報」と「赤いトラクター」の作詞・作曲者が同じであったとは!

  • とても面白い。大げさではなく、人類の歴史を根底から変えた技術、トラクター。
    馬や牛といった動物を使った耕耘で実現していた有機物の循環を断ち切り、よそから化石燃料を持ち込み、動物は単純に食べ物になった。このことの意味は大きい。
    また、農業経営の形態も、家族経営から集団化経営の夢を見させたという点で、大きく変わった。
    林業についても、多くの示唆を与えてくれる一冊。

  • 世界各国でのトラクターの出現、浸透、定着を通して人類の歴史を語る一冊。果たしてトラクターが農村や国の形をどう変えてきたのか、そして無人トラクターが実用化に近づいている現代、こるから農村や農業がどう変化していくのかを考えるのに適した一冊。専門分野に関わらず農業関係者必読かと思う。

  • トラクターなしに現代農業を語れはしないだろうに、それを主題にした本を見つけるのは難しい。
    農業革命というと肥料や品種改良ばかりが注目され、失敗というと政策や気候についてのみ語られるが、
    農機具の進化が如何な役割を果たしたのかが語られないのは何故だろうか。

    本書はその調査対象を各国の農業史や歴史書、企業広告等は当然として、ポーランドの歴史小説からベトナムの短編小説、戦時中のソ連映画、19世紀のドイツの風刺雑誌、1937年公開のナチスと日本の合作映画など、トラクターが作った轍をすべて辿りつくすかのような徹底ぶりを見せる。
    この本を抜きにしてトラクターを語ることは出来ないだろう。

    19世紀末にアメリカで発明されて以来、ときに激動の歴史の渦に巻き込まれ、ときに新しい時代を後押しし、人々の生活と関わってきた。

    多額のローンを組んだのに故障の多さに泣く独立自営農民。
    家畜の有意さを信じて疑わない古い農民。
    新しい農業共同体を信じる共産政治家。
    労働力不足解消のためにトラクターを大量輸入する政府。
    慣れない操作に戸惑い事故で死ぬ共同労働者。
    生産力向上による農作物価格の下落。
    銀行と金融による土地の集積と大規模化と零細農の放逐。
    農業集団化のシンボルとしてプロパガンダに用いる共産主義国家。
    日本の水田に適合した小型トラクターを開発する発明家。

    ほとんどの進歩というものがそうであるように、多くの混乱の果てに必需品となったトラクター。
    もはや昨今の自然主義者であろうとも、トラクターを手放せとは言わないだろう。
    今の世界人口は完全にトラクターありきの生産力に支えられている。
    予想される進化の先には完全無人化があるが、それを超えるようなイノベーションは起こるのだろうか。
    まだまだ積み重なるこれからのトラクターの世界史に期待したい。

  • ☆20世紀前半に展開した。

  • 著者の他の本を読みたくなってきた。

  • 「トラクター」を通して、世界の農業史を振り返る一冊。

    農家にとって、トラクターは「一度頼るとそれから離れられない農機具」。それを「政治的に農業と農民を管理する手段(p.84)」として使ったスターリン時代のソ連など、興味深い事例が多く紹介されている一冊。

    歴史資料として「トラクターが出てくる小説」を多く取り上げているのも特徴。なかでも秀逸なのが、戦前・戦後のウクライナの政治・農業史を振り返る資料として紹介される「ウクライナ語版トラクター小史(=邦訳『おっぱいとトラクター』)」(p.114-)。舞台となるウクライナでもトラクターを通して農民を管理・抑圧する動きはあったことを示唆しつつ、一方でトラクター技術者としての誇りももつ、という主人公の存在は非常に興味深い。

    日本でのトラクター史も紹介はされている。ただ、それは海外(特に米ソ)では主流の大型トラクターの技術を、日本の小規模で粘土質が多い田畑に適した小型トラクター(耕運機)に生かしていくか、という日本技術者の動きに注目されており、日本の農村社会への踏み込みはこの著書の中では限定的。そこはちょっと物足りなかった。

    ただ、油断してると「田畑・農村・農民間におけるトラクターの立ち位置」にとらわれがちなトラクターへの視点を、世界史という全体を俯瞰できる視点に引き上げてくれる一冊として、興味深い一冊だった。

  • 著者は農業の歴史の研究者である。そして、本書は農業に革命を起こしたトラクターの歴史について世界史的な視点から書かれた本である。通常、経済史の世界では内燃機関を搭載した輸送機械としての自動車の発明とその大々的な普及については特筆され、輸送革命、交通革命として論じられることが多いが、トラクターは輸送でも交通でもなく、人類史上画期的な農業生産性の向上を伴う「農業革命」の主役であった。またそれは大量の化学肥料投入と対になって進行した(牛馬の糞尿が肥料として使われなくなった)。

    資本主義、社会主義などの社会体制を越えてトラクターが及ぼした変革の力はもっともっと考えられるべきテーマであろう。本書はその導きの糸となるものである。

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著者プロフィール

1976年生まれ。京都大学人文科学研究所准教授。専門は農業史、食の思想史。2006年『ナチス・ドイツの有機農業』で日本ドイツ学会奨励賞、2013年『ナチスのキッチン』で河合隼雄学芸賞、2019年日本学術振興会賞、同年『給食の歴史』で辻静雄食文化賞、『分解の哲学』でサントリー学芸賞を受賞。『カブラの冬』『稲の大東亜共栄圏』『食べること考えること』『トラクターの世界史』『食べるとはどういうことか』ほか著書多数。

「2020年 『縁食論 ――孤食と共食のあいだ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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