トラクターの世界史 - 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち (中公新書 2451)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024510

感想・レビュー・書評

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  • 【3/16(水)開催】MSLive! 緊急企画「歴史学者と学ぶ ウクライナのこと」(出演:藤原辰史・小山哲)ライブ視聴チケット
    https://mishimasha-books.shop/items/621e32f730344b57449c0d06

    ポーランドの知識人・文化人による「ウクライナとの連帯とロシアの侵攻阻止を求めるアピール」に寄せて | 自由と平和のための京大有志の会
    https://www.kyotounivfreedom.com/solidarnosc_z_ukraina/apel/

    ウクライナ侵攻について(藤原辰史) | みんなのミシマガジン
    https://www.mishimaga.com/books/manabu-toha/004126.html

    トラクターの世界史|新書|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/shinsho/2017/09/102451.html

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      ウクライナ – FactCheck Navi
      https://navi.fij.info/factcheck_navi_tag/ukrai...
      ウクライナ – FactCheck Navi
      https://navi.fij.info/factcheck_navi_tag/ukraine/
      2022/03/16
  •  トラクターの誕生から現代まで、二度の世界大戦を経た歴史をアメリカ、西欧、共産圏、アジア、そして日本と多岐にわたって紹介した本。トラクターといっても、農業用トラクターに特化していて、乗車して操縦するもの、徒歩で押して操縦する歩行型を主に扱っている。
     農業の近代化は、農作業の負担軽減と農業従事者の余暇確保は、余った労働力を都市に集中し、付加価値の高い労働に従事させるという政策的な背景があるのだろう。また、農業従事者にとっては、大規模な耕作は効率的であり、利益率が上がるというメリットがある。だが、農業の近代化という世界共通のイニシアティブは、これらだけでは説明がつくようなものではなかった。政治や文化に根差した反骨によって機械化が進まなかった背景もあるのだが、農業の効率化は、人類に共通する「夢」の一つであると気づいた。
     共通する崇高な「夢」であっても、試行錯誤の連続であり、そのための道具であるトラクターを軸に歴史を繙いてみても、進歩の歴史とは描かれないことは注目すべきだろう。
     本書を手に取ったのは、トレーラーを引っ張る車両としてのトラクターについて知りたかっただからなのだが、ほぼ農業用トラクターを扱っていると分かって積みっぱなしだった。積まれた本からあらわれて、以前好きだったラジオ番組で紹介されていたのを思い出して気軽に読み始めたのだが、なかなかの名著だった。
     特に、文化的背景を小説や映画を引用し説明している点が面白く、科学や技術はこうして語られることで別の価値が顕れてくるのだと感激した。私もこのような本を書いてみたい。

  • 『#トラクターの世界史』

    ほぼ日書評 Day402

    先週紹介した『農業と戦争』の著者による一冊。こちらの方が、読み物としては断然、面白い。

    乗用車普及の立役者といえば、T型フォードというのは誰しも知る話だが、トラクターを普及させたのも同社であることはあまり知られていない。ちなみにトラクターの発明者は時代に先駆けすぎた、それでは曳航を得られなかったが、後に洗濯機を発明して富を得たそうだ。

    ともあれ、フォードのトラクター「フォードソン」は、T型にも通ずる低価格設定で、一時期、何と77%という信じがたい市場シェアを取った。
    一方で、その急速な普及の背景には、第一次世界大戦に多くの男性「農業」労働者と、資材運搬目的で(犂を曳く)馬とを多数徴用されたことがある。

    資本主義の落とし子ともいうべきフォードソンは、農場での生産効率向上のため、国策としてソ連が輸入したというのは歴史の皮肉か。

    トラクター台数で見るとアメリカが一貫して頭抜けているが、単位面積あたりで見た場合には日本が2位を3倍ほども引き離してダントツTOPなのは興味深い。このあたりにも農協経由でないシェアリングエコノミーの参入余地が大きいのではないか。

    豆知識ネタとしては、小林旭の歌で知られるヤンマーの『赤いトラクター』と、同社のテーマソング『ヤン坊マー坊』の作詞はいずれも米山正夫(三百六十五歩のマーチが代表作)によるもの。

    https://amzn.to/3nRnW9r

  • 世界の農業従事者憧れトラクター。第一次世界大戦ではトラクターのキャタピラ技術が戦車に転用される悲しい歴史も。ランボルギーニ社がトラクターメーカーでフェラーリの会長に相手にされず対抗心でスポーツカーを作ったのは知っていましたが、米フォード、伊フィアット、仏ルノー、独ポルシェの有力自動車メーカーがトラクターを製造していたのは驚きでした。GPS無人運転技術で人手不足問題は解消できるかは微妙のようです。

  • 自分と興味の方向性の違う本を人におススメ頂くのが大好きで、本書も人におススメいただいた本です。

    「トラクターの世界史」・・・文字通りトラクターの登場の背景から現在、そして未来への流れについて書かれた本です。自分では絶対に手に取らない種類の本ですが、興味深い内容でとても面白かったです。

    19世紀半ばごろの欧米で、蒸気機関型のトラクターや脱穀機が生産されはじめましたが、当初は重量が重く、石の橋でも重量に耐えられず崩落事故が多発し、また、爆発事故も多くトラクターは危険なものでした。
    それでも人がトラクターを求め続けた理由は、役畜の世話、長時間の農作業などから解放されたかったからです。
    実際にトラクターの登場により農作業は効率化され、人は時間的拘束から解放され様々な自由を手にすることが出来ました。

    ただし、家畜を手放したせいで肥料を生み出さない、牧草の代わりにガソリンと潤滑油を購入品けれればならない、怪我をしやすい、というリスクが新たに浮上します。
    さらに、糞尿が出ないため、農家は化学肥料も購入することになり、空いた時間で別の仕事をして稼がなかればならない羽目に陥ったり、もちろんトラクター導入のためにローンを組み、機械化貧乏の道を歩む農民も多く輩出します。

    これだけでもデメリットがかなりあるという印象でしたが、話しはそれだけで終わりません。
    ダストボウル(砂の器)という、化学肥料の多投とトラクターの土壌圧縮によって、土壌の団粒構造が失われ、サラサラの砂塵となり(砂漠化)、それが風にあおられて空を覆う。
    当時は黒い雲、赤い雪が降り、大きな被害となったそうです。現在でも土壌浸食が起きた土地は手放され、別の土地を求める、という手法は現在に至るまで続けられていて(特にアフリカで)深刻な問題であり続けいるそうです。

    現在のトラクターは農業のさらなる合理化が叫ばれる21世紀において、無人化の研究が進んでいるそうです。
    人間が機械を通じて自然界や人間界とどう付き合っていくべきか考えされられました。
    砂漠化、待ったなしの深刻な状況ですね・・・。

  • ユニークな切り口。

  • こういう視点で歴史を掘り下げるのは刺激的で面白い。貴重な資料。近代農業の本質が見えてくる。

  • 一点。ヤンマーの「ヤン坊マー坊天気予報」と「赤いトラクター」の作詞・作曲者が同じであったとは!

  • とても面白い。大げさではなく、人類の歴史を根底から変えた技術、トラクター。
    馬や牛といった動物を使った耕耘で実現していた有機物の循環を断ち切り、よそから化石燃料を持ち込み、動物は単純に食べ物になった。このことの意味は大きい。
    また、農業経営の形態も、家族経営から集団化経営の夢を見させたという点で、大きく変わった。
    林業についても、多くの示唆を与えてくれる一冊。

  • 世界各国でのトラクターの出現、浸透、定着を通して人類の歴史を語る一冊。果たしてトラクターが農村や国の形をどう変えてきたのか、そして無人トラクターが実用化に近づいている現代、こるから農村や農業がどう変化していくのかを考えるのに適した一冊。専門分野に関わらず農業関係者必読かと思う。

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著者プロフィール

1976年生まれ。京都大学人文科学研究所准教授。専門は農業史、食の思想史。2006年、『ナチス・ドイツの有機農業』(柏書房)で日本ドイツ学会奨励賞、2013年、『ナチスのキッチン』(水声社/決定版:共和国)で河合隼雄学芸賞、2019年、日本学術振興会賞、『給食の歴史』(岩波新書)で辻静雄食文化賞、『分解の哲学』(青土社)でサントリー学芸賞を受賞。著書に、『カブラの冬』(人文書院)、『稲の大東亜共栄圏』(吉川弘文館)、『食べること考えること』(共和国)、『トラクターの世界史』(中公新書)、『食べるとはどういうことか』(農山漁村文化協会)、『縁食論』(ミシマ社)、『農の原理の史的研究』(創元社)、『歴史の屑拾い』(講談社)ほか。共著に『農学と戦争』、『言葉をもみほぐす』(共に岩波書店)、『中学生から知りたいウクライナのこと』(ミシマ社)などがある。

「2022年 『植物考』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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