トラクターの世界史 - 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち (中公新書)

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  • 中央公論新社
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感想 : 41
  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024510

感想・レビュー・書評

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  •  トラクターの誕生から現代まで、二度の世界大戦を経た歴史をアメリカ、西欧、共産圏、アジア、そして日本と多岐にわたって紹介した本。トラクターといっても、農業用トラクターに特化していて、乗車して操縦するもの、徒歩で押して操縦する歩行型を主に扱っている。
     農業の近代化は、農作業の負担軽減と農業従事者の余暇確保は、余った労働力を都市に集中し、付加価値の高い労働に従事させるという政策的な背景があるのだろう。また、農業従事者にとっては、大規模な耕作は効率的であり、利益率が上がるというメリットがある。だが、農業の近代化という世界共通のイニシアティブは、これらだけでは説明がつくようなものではなかった。政治や文化に根差した反骨によって機械化が進まなかった背景もあるのだが、農業の効率化は、人類に共通する「夢」の一つであると気づいた。
     共通する崇高な「夢」であっても、試行錯誤の連続であり、そのための道具であるトラクターを軸に歴史を繙いてみても、進歩の歴史とは描かれないことは注目すべきだろう。
     本書を手に取ったのは、トレーラーを引っ張る車両としてのトラクターについて知りたかっただからなのだが、ほぼ農業用トラクターを扱っていると分かって積みっぱなしだった。積まれた本からあらわれて、以前好きだったラジオ番組で紹介されていたのを思い出して気軽に読み始めたのだが、なかなかの名著だった。
     特に、文化的背景を小説や映画を引用し説明している点が面白く、科学や技術はこうして語られることで別の価値が顕れてくるのだと感激した。私もこのような本を書いてみたい。

  • 『#トラクターの世界史』

    ほぼ日書評 Day402

    先週紹介した『農業と戦争』の著者による一冊。こちらの方が、読み物としては断然、面白い。

    乗用車普及の立役者といえば、T型フォードというのは誰しも知る話だが、トラクターを普及させたのも同社であることはあまり知られていない。ちなみにトラクターの発明者は時代に先駆けすぎた、それでは曳航を得られなかったが、後に洗濯機を発明して富を得たそうだ。

    ともあれ、フォードのトラクター「フォードソン」は、T型にも通ずる低価格設定で、一時期、何と77%という信じがたい市場シェアを取った。
    一方で、その急速な普及の背景には、第一次世界大戦に多くの男性「農業」労働者と、資材運搬目的で(犂を曳く)馬とを多数徴用されたことがある。

    資本主義の落とし子ともいうべきフォードソンは、農場での生産効率向上のため、国策としてソ連が輸入したというのは歴史の皮肉か。

    トラクター台数で見るとアメリカが一貫して頭抜けているが、単位面積あたりで見た場合には日本が2位を3倍ほども引き離してダントツTOPなのは興味深い。このあたりにも農協経由でないシェアリングエコノミーの参入余地が大きいのではないか。

    豆知識ネタとしては、小林旭の歌で知られるヤンマーの『赤いトラクター』と、同社のテーマソング『ヤン坊マー坊』の作詞はいずれも米山正夫(三百六十五歩のマーチが代表作)によるもの。

    https://amzn.to/3nRnW9r

  • 世界の農業従事者憧れトラクター。第一次世界大戦ではトラクターのキャタピラ技術が戦車に転用される悲しい歴史も。ランボルギーニ社がトラクターメーカーでフェラーリの会長に相手にされず対抗心でスポーツカーを作ったのは知っていましたが、米フォード、伊フィアット、仏ルノー、独ポルシェの有力自動車メーカーがトラクターを製造していたのは驚きでした。GPS無人運転技術で人手不足問題は解消できるかは微妙のようです。

  • 信州大学附属図書館 農学部図書館の推薦図書です。

  • <信州大学附属図書館 農学部図書館のコメント>
    農作業には欠かせない存在である「トラクター」が、二〇世紀の歴史を通じて世界に何をもたらしたのかを読み解いていく刺激的な本。日常の風景の一部となっているトラクターを見る目が変わります。普段何気なく接しているものごとを別の視点から眺めることができるのは、読書の醍醐味の1つです。

    ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB24428670

  • ユニークな切り口。

  • こういう視点で歴史を掘り下げるのは刺激的で面白い。貴重な資料。近代農業の本質が見えてくる。

  • 一点。ヤンマーの「ヤン坊マー坊天気予報」と「赤いトラクター」の作詞・作曲者が同じであったとは!

  • とても面白い。大げさではなく、人類の歴史を根底から変えた技術、トラクター。
    馬や牛といった動物を使った耕耘で実現していた有機物の循環を断ち切り、よそから化石燃料を持ち込み、動物は単純に食べ物になった。このことの意味は大きい。
    また、農業経営の形態も、家族経営から集団化経営の夢を見させたという点で、大きく変わった。
    林業についても、多くの示唆を与えてくれる一冊。

  • 世界各国でのトラクターの出現、浸透、定着を通して人類の歴史を語る一冊。果たしてトラクターが農村や国の形をどう変えてきたのか、そして無人トラクターが実用化に近づいている現代、こるから農村や農業がどう変化していくのかを考えるのに適した一冊。専門分野に関わらず農業関係者必読かと思う。

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著者プロフィール

藤原辰史(ふじはら・たつし)
1976年生まれ。京都大学人間・環境学研究科博士課程中途退学。現在、東京大学大学院農学・生命科学研究科講師。専攻は、農業思想史・農業技術史。著書に『カブラの冬―第一次世界大戦期ドイツの飢饉と民衆』(人文書院、2011)、『トラクターの世界史―人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち』(中公新書、2017)『給食の歴史』(岩波新書、2018)、『分解の哲学―腐敗と発酵をめぐる思考』(青土社、2019)など。

「2021年 『環世界の人文学 生と創造の探究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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