日本史の内幕 - 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで (中公新書)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 1485
感想 : 155
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024558

作品紹介・あらすじ

豊臣秀吉と徳川家康が転機を迎えた「史上最強のパワースポット」とは。秀頼は本当に秀吉の子なのか。著者が発見した龍馬や西郷の書状の中身は。「昭和天皇を育てた男」の和歌集に秘められた思い――。当代随一の人気歴史家が、日本史の謎の数々に迫る。古文書の中から見えてくる、本当の歴史の面白さがここに!

感想・レビュー・書評

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  • 磯田道史さんは、巨人の菅野智之投手にそっくりだ。ぜひ、写真を見比べてほしい。ひょっとして二人は親戚ではないかと思ったりする。実は秘密の兄弟、親子だったりして。ずっと以前からこのことが気になって仕方がなかった。磯田さん自身は、春風亭昇太に似ていると言われたらしいが、どうかなあ。
    さて、本の方は全くもって素晴らしいというしかない。小学生のころから古文書を読み始めたというだけあって、あちらこちらに出没しては、古文書を発掘し、新しい歴史の一幕を解読してくれる。そこ知的興奮たるや半端ではない。磯田さんは古文書の巨人だ。私が付箋を付けたところは非常にたくさんあるのだが、一部を書いておく。
    ・三方ヶ原の戦いで徳川家康に送られた織田信長の援軍は3000とあるが、そんなはずはない。家康が十分な援軍を受けて敗れたことを隠蔽するためであるかもしれない。「前橋酒井家旧蔵問書」によれば2万とある。
    ・秀吉の大陸征服のために肥前名護屋城に日本中の大名・重臣・兵卒までが集結して対外戦争をやったため、天下・統一国家日本の現物を日本中の人間が見てしまった。日本は一つとの国民国家思想の形成の前処理がここで済んだ。
    ・香道は、香木の希少性からあまりに貴族的で和歌の教養が要る芸道として発達してきたため、茶道ほどには気楽に学ぶ人がおらず、家本流派もその数が少ない。保護が必要な芸術かもしれない。
    ・ヨーロッパでは、啓蒙主義の時代というのがあり、17~18世紀に、宗教権威を世俗の君主や知のエリートが否定して、合理的な思想をつくりあげる。しかし、同時期の江戸時代の日本では、エリートばかりか、庶民がけていきょういくですでに子弟の啓蒙を完了していた。日本は、今日においても、一般人の常識的知識の発達した国である。江戸時代の歴史が財産になっているといえる。
    ・日本では仮名交じりの木版出版文化で、本で女性や庶民へ実学が広がった。識字率の高い、労働力の質の高い社会ができあがった。いわば本こそが日本を作ったといってよい。
    ・長州も薩摩も、松陰や西郷が動かしているように見えて、実は本が彼らを動かしていた。取り込み性という日本人の特性がいかんなく発揮されている。漢学、国学、蘭学、洋学、何でもどん欲に取り込んでいく日本社会では、昔から本が主役であった。
    ・松陰は「幽因録」で、蝦夷を開墾して諸侯を封じ、間に乗じてカムチャッカ、オホーツクを奪い、琉球を参勤させ、朝鮮を攻めて人質を取り朝貢させ、さらに満州、台湾、ルソンを収めよと提言した。朝鮮は日本が攻めなければ、必ず列強が来るという、当時の厳しい状況下での松陰の理屈であった。

    • nejidonさん
      goya626さん、こんばんは(^^♪
      ハイジさんの突っ込みが面白くて、思わずコメントしています。
      私もこの本は2年ほど前に読みました。...
      goya626さん、こんばんは(^^♪
      ハイジさんの突っ込みが面白くて、思わずコメントしています。
      私もこの本は2年ほど前に読みました。すごく面白く書いてますよね。
      磯田さんは、とにかく楽しそうに解説してくれるので、聞いていてこちらも楽しくなります。
      「歴史の愉しみ方」とか「無私の日本人」もよい本ですよ。
      2020/04/06
    • ハイジさん
      再コメントありがとうございます(笑)
      本当に素敵な変人です!
      私の大好きな、いつまでも良くも悪くも少年で深掘りオタクさんです☆
      再コメントありがとうございます(笑)
      本当に素敵な変人です!
      私の大好きな、いつまでも良くも悪くも少年で深掘りオタクさんです☆
      2020/04/06
    • ハイジさん
      再々コメントありがとうございます(笑)
      嬉しいお言葉ありがとうございます!
      アタリですね♪
      再々コメントありがとうございます(笑)
      嬉しいお言葉ありがとうございます!
      アタリですね♪
      2020/04/06

  • 当代随一の人気歴史家が、日本史の謎の数々に迫る。古文書の中から見えてくる、本当の歴史の面白さがここに!
    というキャッチフレーズの本

    まず「まえがき」に磯田先生のアツーイ思いが満載でなかなか唸らせる

    【「まえがき」抜粋】
    日本史の内幕知りたい
    そう思うなら、古文書を読むしかない
    歴史教科書は政府や学者さんの願望に過ぎない
    古文書は一次情報にあたる
    ここが肝心である
    情報化社会、ネットの社会になって、情報検索が容易になり、同じ情報をコピーして共有するようになった
    そのため歴史小説を読んでも面白いものが少ない
    ドラマもそうで、新味を見せようとすると、現実離れした架空の作り話にするほかない
    そうしたコピペとフィクションの歴史が巷には触れている

    ~くぅ!熱い!いいですねぇ♪
    このまえがきで読もう!と思ったのでまさに掴みはOKですね(笑)



    【面白かったトピック】
    ・物見役(偵察)は士気を下げないため、敵の数を半数くらいに報告する
    ・家康は三方ヶ原の戦いで逃げ延びた際、暗闇の敗走中、左右に馬を走らせたお供の刀に痰唾を吐き続け、後日それを証拠にその者たちを賞した
    ・浜松東照宮…浜松は家康だけでなくまだ無名の秀吉が16〜18歳まで過ごしていた
    浜松でも主人に「なに一つ主人の心にかなわぬことがない」と完璧な勤めぶり
    ・「築山殿」家康の最初の正室
    本来の正室時代の名前は「駿河の御前」
    岡崎の築山御殿に隔離されつけられた別称が「築山殿」
    ・江戸期の婚礼マニュアル、宝くじの先祖は大阪の「富くじ」、昭和初年の「二重まぶたの整形手術」が現代の費用とそう変わらない!
    ・寺子屋のおかげで江戸の知識レベルの身分格差は小さかった 
    ・全人類の日本人が占める人口の割合
    弥生時代→0.03%
    江戸時代→5%
    2000年→2%
    2100年→0.75%
    かつ江戸時代のGDPはアメリカの1.75倍!
    ・中根東里と司馬遼太郎
    中根東里という儒者
    「徳川開闢以来、稀有の才」
    にも関わらずおのれの名が残らぬよう作品を燃やす
    なんとも謙遜的なつつましい立派な日本人である
    (「無私の日本人」を読まなくては)

    【この本の一番のお気に入り】
    ■我々は「本が作った国」に生きている
    ・江戸日本は世界一の「書物の国」で硬軟様々な本が流通していた
    ・頼山陽の『日本外史』、『通議』
    ・実用的で面白いのが『吉原細見』
    今で言う風俗情報誌、吉原の妓楼や遊女が細かく紹介され(遊廓内の案内図、遊女の格付けや料金まで有り!)
    ・江戸、京、大阪などの大都市だけでなく、各藩、各地域の村々にまで書物が行き渡っていた(庶民の家に多くの書物があった→これが江戸日本の特徴)
    ・寺子屋などで使われていた教科書をはじめ、職業の心得や礼儀作法を書いたもの、健康な生活への指南書がベストセラーとなった→職業知識や礼儀作法、健康知識などのインフラを築いた
    ・日本人の基礎教養は、長い時間をかけて「本」が作り上げた
    読書によって人格形成された歴史的人物が日本を動かした=本が彼ら動かしていた

    ~現代の日本の基盤を作って下さった先祖先輩に感謝である
    他国では恐らく庶民にまで書物が浸透していなかったのであろう
    寺子屋も然りですな
    (こういう言い方をあまり大っぴらにするのは宜しくないかもしれないが)日本国民の民度の高さを感じる
    現代、本を読まない日本人が増えている…ということは、すなわちこの逆の現象になる
    末恐ろしさを感じる



    (恐らく皆さんも同じだと思うが)日頃本を読む時間を捻出するのに苦労している
    よく言われるのが隙間時間の活用であり、「移動時間」が主な隙間時間と言われている
    平日電車通勤しているのだが、電車乗車時間が有難いことに(?)たったの6分しかない!
    そのため、どうしても長編的な本や先が気になりすぎるミステリーは読みづらい
    しかしながらこの本はこの6分+電車待ちの数分の時間に読むのに非常に適していた!(全て3〜4ページの内容)通勤のおともにピッタリである
    それはともかく、マニアなことに熱心な方の本は本当に面白い
    深堀マニアさんが大好きである
    年々小説を読まなくなり、どうしてもノンフィクション系の内容の本に比重が集まっていく
    地道にご自身の足で歩いて、目でみて、身体を張って書いた本というのはやはり面白いのである
    マニアックであればあるほど、その人の経験でしか書けない価値のある内容になるのだ
    こういった真実を追求した内容の本に対し、「内容が薄い」、「期待外れだ」という意見も多いみたいであるが、現実、真実ってそんな派手なもんじゃない…と思うのである
    偽りの派手なことよりも地味ながら味わい深い真実の良さがわかるのも、年を重ねた醍醐味だと感じている
    (確かに本の宣伝文句はちょっと盛り過ぎかも(笑)これに惹かれて読むとガッカリするかも…)

    磯田先生が15歳で古文書の解読を始めたことにも感動
    好きなことしか仕事にできないでしょ?ってホリエモンが言いそうなことをふと感じた

    • goya626さん
      「日本史の内幕」を読み終えました。最高に面白かったです。
      「日本史の内幕」を読み終えました。最高に面白かったです。
      2020/04/05
    • goya626さん
      磯田さんは、素晴らしくよい変人ですね。
      磯田さんは、素晴らしくよい変人ですね。
      2020/04/06
    • goya626さん
      ハイジさんの本棚でこの本を見たので、読んでみたのです。当たりでしたね。
      ハイジさんの本棚でこの本を見たので、読んでみたのです。当たりでしたね。
      2020/04/06
  • 著者は15歳の時に地元の古本屋さんで古文書解読用の事典を買い、そこから古文書が読めるようになっていったという。
    今では、紙質と書体で書かれた年代が大体分かるのだとか。なんと羨ましい。
    そんな著者が、歴史の現場で残された遺留品=古文書から歴史の内幕をみて、そこから物事を考えようというのが本書の主旨。
    新聞や雑誌に掲載された文章をまとめたものなので、ひとつがそれぞれ3ページずつと大変短い。読みやすさもあるが、あっけなさ・物足りなさもある。
    壮大な歴史ロマン秘話などではないのでそこはご注意を。(タイトル、少し盛りすぎかも・笑)

    「武士の家計簿」と「殿、利息でござる!」は見ておいて良かったと、まずはほっとしている。
    第1章で盛んに登場する。
    そうそう、古文書を入手するまでの過程と、古文書の縁が縁を呼ぶ人間関係も詳細に書いてあり、そこも興味深い。
    特に面白かったのは4章の「この国を支える文化の話」。
    能は見るより舞うもの、毒味をさせた毒味役、かぐわしき名香の物語、秘伝書が伝える生け花の化学、上方の富くじは太っ腹、江戸期の婚礼マニュアル、などが楽しい。
    また、寺子屋文化の遺産と、日本人は本が作った国に生きているという記述で、メディアでお見かけする穏やかな顔の著者とは違い、熱く語っている。
    ここで7ページをさいて、日本が独立を保ってこられたのは自らの出版文化を持ち独自の思想と情報の交流が行われたからだと主張する。この歴史の重みを、もう一度かみしめた方が良いと。
    粗製乱造を廃して出版物を吟味し、良い著者を育てていかないとね。
    それには、私たちが良い読者とならねば、である。

    更に貝原益軒の「養生訓」が後世にまで残したもの。
    文章家としての司馬遼太郎がどのように生まれたか、などを読むと、まるで日本人の心のルーツを紐といているような面白さを感じる。が、どちらもやはり短い・笑
    たぶん、これ以上のことは自分で調べてねということかな。
    歴史に興味を抱く入り口として、間口も広いし分かりやすい一冊。
    ラストは熊本城石垣の補強法が書かれている。
    文化財も人間も安全に守れる復興が、すみやかに進みますように。

    • けいたんさん
      こんばんは(^-^)/

      先日磯田さんの講演を聴いてファンになりました(⁎˃ᴗ˂⁎)
      進行の方がテレビによく出ていると言っていたので...
      こんばんは(^-^)/

      先日磯田さんの講演を聴いてファンになりました(⁎˃ᴗ˂⁎)
      進行の方がテレビによく出ていると言っていたのですが、記憶になく…。
      とても面白いお話で本も読んでみたくなりました。
      nejidonさんは知っているのですね。
      またまた参考になりました(^-^)/

      先日の返信もさせてください。
      私も一気に親近感アップです!
      だって、桃李くん仲間ですものね〜♪
      これからもよろしくお願いします(⁎˃ᴗ˂⁎)
      nejidonさんはnejidonさんのままでですね。

      黒兎のことも見てもらって嬉しいです♪
      「しろいうさぎとくろいうさぎ」は名作ですよね〜
      黒兎を抱っこしたらどうなるか…
      正解は蹴られます(笑)
      うさぎは臆病なので逃げようとしますね。
      でも、随分と慣れて最近では結構抱っこさせてくれます。
      2018/02/18
    • nejidonさん
      けいちゃん、こんばんは(^^♪
        ↑
      (きゃあ!きゃあ!なんだかすごい!)
      コメントありがとうございます。
      はい、磯田さんはよくテ...
      けいちゃん、こんばんは(^^♪
        ↑
      (きゃあ!きゃあ!なんだかすごい!)
      コメントありがとうございます。
      はい、磯田さんはよくテレビにも出ていらっしゃいますよ。
      とても気さくな感じの方で、歴史のことを楽しそうにお話されます。
      講演会に行かれたのですか?わぁお、羨ましいです!面白かったでしょうね。

      おお、まさかの桃李君仲間だとは!彼のファンはとても多いですね。
      あまりTVドラマは見ないのですが、数年前の大河に出演していて、それで一気に好きになりました。
      ええ?あの可愛いうさぎさんは抱っこすると蹴るのですか?  知らなかったわ・・
      そうか、怖がらせないように気を付けないといけないのですね。
      いつも猫とばかり一緒にいるので、可愛い=抱っこになってしまいます。
      では、エア抱っこでもして喜ぶことにします(笑)。
      2018/02/18
  • 歴史を専門とする大学教授の多くは「お勉強ができたからこの道に進んだ」という印象を受けますが、磯田さんの場合は「もう歴史が好きで好きでたまらない人」という感じがします。
    デートをしていても歴史について延々と語りそう。

    磯田さん自身も
    「私はなかなか結婚できなかった。古文書のオタクだから仕方がないと、あきらめていた」
    「ところが、変わった女もいて、あるとき突然結婚でき、子供も生まれた」
    とおっしゃっています。
    しかも、お子さんのお名前は磯田道史の「道」をとって「道真」だそうです。
    菅原道真…。

    興味深く読んだのは、京都で香を聞いた話。
    じつはこれ、林真理子さんのエッセイでも読んでいて、
    磯田さんが同席されていたことは知っていました。
    しかし真理子さんに比べて磯田さんは予想通りマニアック。
    このような形で一つのイベントをいろいろな方のエッセイで読むのも、乙なもの。

    そしてこの本の登場人物で私の好きなベスト3。
    仙台近郊の浅野屋甚内&穀田屋十三郎兄弟。
    備中松山藩の山田方谷。
    下野国佐野の中根東里。

    食べてみたいのは浜松の「もちかつお」。

  • 帯には「小説や教科書ではわからない魅力」とある。
    著者ご本人も、まえがきで「教科書的な、表向きの歴史理解にとどまって、歴史常識を維持したい方は、読まれないほうが良い本かもしれない」と述べている。

    自分はどちらかというと、「歴史は暗記」というイメージを持ち続けていた。これは学生時代の教師が良くなかったのだと、本書を読んでやっとわかった。小学校や中学校の先生が、著者のような先生だったら、きっと歴史の授業は楽しくて仕方がなかっただろう。

    著者は、古文書を読める。ダイレクトにその時代と接点を持つ。誰かから聞いた間接的な情報ではなく、自分の目で直接真実を追求し、そこから見えてくるものをさらに深堀していく。

    通りいっぺんの教科書の歴史は無味乾燥だが、本書を読めば、生々しい当時の真実にアプローチする著者とまるで一緒に古文書を読んでいるかのようで、もっと言えば時代をさかのぼってその時代の現場までいってしまったようなリアリティを感じることができる。

    卑弥呼の時代には卑弥呼の時代の現実があり、家康の時代には家康の時代の現実があったんだな。今とは異なる戦国時代のトイレの実情があったんだな。戦いだけが歴史ではなく、能にも、香にも、生け花にも、そういう文化的なものにも歴史というものがあるんだな。・・・とそういう風に、リアリティを感じさせてくれるのが、磯田氏の歴史であるなと思う。

  • 古文書オタクとも称する著者の本領発揮ともいえる、古文書から解き明かした「日本史の内幕」エッセイ。
    歴史好きの読者なら、見逃せない一冊。
    目次だけを見ても、興味津々となる。
    「城の便所の天井は高く」「美女処刑と信長の死」「龍馬が導いた西郷書状」「吉田松陰の複雑な側面」「江戸期の婚礼マニュアル」…etc
    歴史の実像は、古文書という一次情報からしかわからないと、著者は説く。
    歴史を語る一方で、現代の課題にも言及する。
    古代の中国人韓信の自制の故事を引いて、かつて日本は大和魂を叫び中国を馬鹿にして韓信の自制を失って失敗したが、いま大国意識を振りかざす中国も、自制を失うと同じ陥穽にはまるのではないかと。
    さらに、他のアジアの国々と違い、日本が植民地とならずに独立を保ってこられたのも、江戸時代が世界一の「書物の国」で自らの出版文化を持ち独自の思想と情報の交流が行われたからと説き、粗雑本を濫造する現状の出版界を自戒する。

  • この本を読むきっかけは、著者をテレビで拝見して面白かったからだか、本で読むと私の歴史の知識の少なさ故にあまり楽しめなかった。
    そもそも歴史上の人物にはそれほど興味がなく、興味があるのは日本の文化史の方だと気がついた。

    「我々は『本が作った国』に生きている」はとてもよかった。一部抜粋。

    西郷隆盛も、情勢判断の知識と哲学は書物から得ている。
    読書によって人格形成している。
    長州も薩摩も松陰や西郷が動かしているように見えて、実は「本」が彼らを動かしていた。「取り込み性」という日本人の特性がいかんなく発揮されている。
    何でも貪欲に取り込んで行く日本社会では昔から「本」が主役であった。

  • 歴史を研究する鉄則のひとつとして「一次資料をあたる」ことが大切ですが、一次資料である古文書をとことん研究し、私たちにおもしろい話を提示してくれる、私の憧れの歴史学者の一人、磯田道史さんの本です。

    出版されてずいぶん経ってしまいましたが、図書館で借りた本を読みこなす合間を縫いながらやっと読了できました。

    文章は決して難しくはありません。「古文書から歴史を読み解く」がテーマの本ではありますが、古文書のような文章が並んでいるわけでもありません。

    古文書からわかった歴史をわかりやすく解説してくれるだけでなく、その古文書が見つかった背景やエピソードも満載。
    磯田さんの楽しげな様子もよくわかり、楽しく読めます。

    そしてこの本を読み終わった今、無性にGEOに行きたいんですよね。TSUTAYAでもいいですが。
    「殿、利息でござる!」が観たい。今更ですけど。
    映画ができる裏話も載っているので、読んだ後はこの映画、観たくなりますよ。

  • 何年か前から時折大河ドラマを見るようになって、歴史を知っていた方が面白いと思うようになり、気が向いたら歴史関連書を手に取るように。

    なので難しい歴史書は読めないです。
    その点、磯田先生の本はとても詳しいのに大変読みやすく分かりやすい。本書は自分のような歴史ビギナー(?)からかなりのマニアな方まで楽しめるであろう良書。

    何よりも本書からは磯田先生の歴史を知ること・歴史から学ぶこと・文化や伝統など価値ある無形有形財を厚く保存伝承して行くことへの情熱をジリジリと感じます。

    同年代として、これほどひとつことに熱中して究める物事に出会えたのは羨ましくあり、また大変尊敬することでもあります。

    このような分かりやすく手に取りやすい内容の歴史書をこれからも是非読みたいですね。
    自分のような、歴史にこれまで関心の薄かった人が歴史の面白さに目覚めるきっかけとなる一冊だと思います。

  • 先祖が戊辰戦争に参戦していたことを知った
    15歳の磯田少年は「日本史の現場を見たい!」
    と、地元の古書店に向けてペダルを漕ぐ。
    500円で古文書解読事典を購入。
    以来、様々な参戦者の残した記録を
    解読していき、やがて眼前には
    戊辰戦争の実像がありありと立ち昇る。
    本書は著者がこれまで読み解いた
    古文書を手掛かりとし、
    山川の教科書には出てこない、
    戦国期から江戸・幕末期にかけての「細部」に
    フォーカスしたエピソード60話余を収録。

    学校で学ぶ歴史は、日々の営為の集積記録を
    「国造り」「戦さ」「政治行政政策」といった
    視点で切り取ったものを概観しているに過ぎない。
    ずっと戦さをしているわけではないのに
    ついついそういう印象を抱く。
    「安土桃山時代は昨日までで、
    今日からは江戸時代なんだ!」なんて、
    当時の人々は知ったこっちゃなく、
    後世、学者が便宜上「政権交代と遷都」で
    時代を区切ったに過ぎない。

    著者の歴史開陳話が面白いのは、
    フィルターのかかっている
    二次・三次資料でない、
    あくまでも一次史料の古文書の山に分け入り、
    「真相」という果実を掌中に
    しっかと収めているから。

    例えば、家康が武田信玄に大敗を喫した
    三方ヶ原の合戦も、家康の視点と信玄の視点で
    書かれた古文書では、 群勢の数からして
    まったく異なる。
    そう、時の権力の都合で、
    いつの世も情報は操作されるのである。

    今日、我々が英雄と見なしている龍馬だって
    徳川や会津側から見れば、
    一介の浪人テロリストである。
    歴史というのは実に振り幅が大きいことを
    教えてくれる格好の書でありました。

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著者プロフィール

磯田道史
1970年、岡山県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(史学)。茨城大学准教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2016年4月より国際日本文化研究センター准教授。『武士の家計簿』(新潮新書、新潮ドキュメント賞受賞)、『無私の日本人』(文春文庫)、『天災から日本史を読みなおす』(中公新書、日本エッセイストクラブ賞受賞)など著書多数。

「2022年 『日本史を暴く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

磯田道史の作品

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