兼好法師 - 徒然草に記されなかった真実 (中公新書)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 148
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024633

作品紹介・あらすじ

兼好は鎌倉時代後期に京都・吉田神社の神職である卜部家に生まれ、六位蔵人を経て左兵衛佐として天皇に仕えた後、出家して徒然草を著した。――現在広く知られる彼の出自や経歴は、兼好歿後に捏造されたものである。筆者は同時代史料をつぶさに調べ、兼好の足跡を辿るとともに、徒然草の再解釈を試みた。鎌倉、京都、伊勢をゆく兼好の視点から、中世社会に新たな光を投げかける。

感想・レビュー・書評

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  •  「〇〇は捏造だった」とか「通説は間違いだらけ」という類の言説は、たいてい学問的な論証の手続きを踏まえていない場合が多く要注意だが、兼好(吉田兼好、卜部兼好)の出自・経歴に関する通説を全否定し、後世の吉田家による捏造を明らかにする本書に関しては、史料批判の方法に瑕疵はなく、研究史を完全に刷新する画期的な成果である。兼好について、現行の辞書・事典類(日本語・日本文学、歴史学問わず)は必ず六位蔵人・左衛門佐の任官歴を記すが、少なくともこれは今後書き換えなければならないだろう。兼好像の変化に伴い『徒然草』や家集の位置づけも当然変わり、本書ではこれまで誤解されたり、等閑に付されていた問題に新たな解釈を示している。巷間の「シニカルな隠者」像とは異なる、身分流動的な出家者の立場を利用して公武間を遊泳する実務家としての姿が浮かび上がる。

  • ひとに勧められて読了。自分に中世史の素養は無いが、論理的かつ分かりやすい本で面白かった。
    兼好は貴顕の側近く仕えた人「ではなく」、隠者的なイメージに反して色々と世事の雑用に携わって暮らしているし、挙句に実は吉田兼好ではなかった…と次々に通説がひっくり返されていく。
    ミステリーのようだが真面目な話で、謎解きの鍵にあたるのが引用される史料。たとえば当該官職の人は当時どういう扱いを受けていたか、家集への作品収載ルール、紙背文書の年代推定等、時代背景やお作法や常識を弁えることで史料から情報が引き出されていく。
    デジタル化により史料への表面的なアクセスは容易になっていく中、それらを本当に「読む」ための能力というのは相変わらず必要なのだなぁ。

  • 角川ソフィア文庫の『新版 徒然草』の訳者だったことに、読んで気付く。
    タイトル通り、兼好法師についての本。

    吉田兼好やら卜部兼好やら、名前が色々あって、どう呼ぶのがいいんだ、と思ってはいた。
    吉田兼好とするのがいい、とか。
    吉田という名字は兼好が生きていた後の時代に付けられたものだから、相応しくない、とか。
    でも法師は名前ではないから、兼好でいい、とか。
    結構いろいろ目を通してきたのだけど、まさかの、嘘だったとはね……。

    兼好がどういう書物に見られるのか、そこからどんな人物像が考えられるのか。
    細かいというか、丁寧すぎて、ややしんどくもある。すいません。
    まず第七章を読んでもいいかも。ネタバレだけど。

  •  兼好は、なぜ「吉田」ではないのか。
     また、「世捨て人」としてとらえることの思い込み。
     
     どんな古典であっても、まだまだいくらでも新しい研究は可能であることを明示した一冊。
     
     
     
     

  • 今に伝わる兼好の来歴は、五百年前に一人の男が捏造したものだった。同時代史料をつぶさに調べ、まったく新しい兼好像がよみがえる!

  • 鎌倉、六浦、金沢八景のあたりだけ読みました。

  • 中公新書/2463

  •  鎌倉武家北条氏は、六浦とその近隣の金沢釜利谷富岡からなる四郷の地頭職を手に入れ一門の実時を据えた。実時は、金沢郷に別業を営んで一門の号を金沢とし、両親のために建立した阿弥陀堂を起源とする称名寺を一門の信仰の拠点とした。金沢流三代貞顕がもっとも心を許す称名寺二代目長老明忍房釼阿との交流圏に、うらへのかねよし、と名乗る人物があらわれる。

    『貞顕と周辺の人々から使用済みの書状が称名寺に与えられ、集積された後、適当な大きさに切断され審海、釼阿、湛睿、熙允ら歴代長老が聖教書写に用いたのである。もとの書状のパーツは聖教の近接した丁に集まりやすいものの、文字が多くて紙が黒々しては裏面利用に適さないから、書状の一部だけが残存する例も多い。もちろん一つの書状が複数の聖教の書写に使われることもある。内容・筆跡から書状を復原していくことはピースの欠けたパズルのようなもので、その困難が察せられよう。しかも大半は差出人も不明、年代も明記されたものはごく少ない。それを推定し配列した『金沢文庫古文書』の功績は極めて大きいが、もちろん現在では修正を要するところもある。』30頁

  • このくらい書けて、初めて立派な研究者だといえる。兼好が活き活きと描かれていて、面白い。

  • 兼好法師なのか吉田兼好なのか、はたまた卜部兼好なのか、中学生のときから、わかったつもりになってスルーしていた問題であって、今頃このようなテーマが研究書になるのかと驚いた。あらためて、わかったつもりになってそのままになっている問題は多くあるのだなと実感した。私にとっては中世の時代じたいがあまり頭に入っていない。思えば勉強もそんなにしてこなかった気がする。この当時のお坊さんのあり方(俗世を離れて仏道修行に励むというお坊さん像だったが、出家した名前は歌集に載るということで出家する人たちの存在)には驚きである。

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著者プロフィール

慶應義塾大学教授

「2018年 『百人一首宗祇抄 姉小路基綱筆』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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