日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実 (中公新書)

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  • 中央公論新社
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レビュー : 36
  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024657

作品紹介・あらすじ

310万人に及ぶ犠牲者を出した先の大戦。実はその9割が1944年以降と推算される。本書は「兵士の目線・立ち位置」から、特に敗色濃厚になった時期以降のアジア・太平洋戦争の実態を追う。異常に高率の餓死、30万人を超えた海没死、戦場での自殺・「処置」、特攻、劣悪化していく補充兵、靴に鮫皮まで使用した物資欠乏……。勇猛と語られる日本兵たちが、特異な軍事思想の下、凄惨な体験をせざるを得なかった現実を描く。

感想・レビュー・書評

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  •  ここ20年くらい前から日本近代史学界では「兵士の視点・体験」からの戦争史・軍事史研究が盛んだが、本書は1941~45年のアジア・太平洋戦争に焦点を絞った、そうした研究動向の現時点におけるコンパクトなダイジェストといえる。餓死、自殺、他殺、薬物中毒、精神疾患、感染症、私的制裁、略奪、人肉食といった極限状況における日本軍兵士の「死と病理」を生々しい記録・証言によって明らかにしている。単に兵士の悲惨な実情を示すのみならず、その構造的原因を経済・文化的背景を含めて分析することで、立体的な歴史像を構築している。注意するべきは、いわゆる「後知恵」的な批判・裁断は極力行わず、批判するにしても同時代人の軍人・軍関係者の直接の言葉をもって行っていることで、「当時の感覚」としても問題が意識化されていたことがわかるような叙述になっていることであろう。近年の根拠のない「日本軍礼賛」「日本人自画自賛」風潮への批判意識は明瞭だが、そうした先入観なく「事実」をありのままに知らしめるための工夫といえる。

     なお個人的には、本書で示される日本軍の構造・特質がどうしても現在の日本企業と重なって仕方なかったことを付言しておく。過労死・過労自殺が恒常化している劣悪な職場環境や、「自己責任」の名の下で次々と弱者に抑圧が移譲される状況、作戦至上主義ならぬ成果至上主義による人間性の荒廃、問題を根本的に改めず精神主義的な対応に終始する国家の対応など、あまりにも相似している。改めて「戦前と戦後の連続性」を深刻に捉える必要を感じた。

  • 日中戦争・太平洋戦争を通じて、現場に近い日本軍の戦中史。
    「戦略レベルの戦史業書」と「戦術・個人レベルの戦場体験記」の隙間を埋める作品。

    例えば、戦地で歯医者がいない、覚醒ヒロポンの多用、必要不可欠な装備の劣化、アメリカへの過小評価、軍記・組織の乱れ、陸海軍の不統一 、機械化の遅れ=人力や根性で補う等を例に富み、帰還した現場の管理職達の証言や出版物をまとめている。
    個人の戦争体験記を、まとめただけという印象があり、物足りなさを感じる。
    しかし、時系列で一定の体系化されており、理解しやすい工夫がされている。
    また、敵であり戦勝国のアメリカと異なり、日本側の戦死者の記録が、遺族への気遣いや仲間意識により、後世の研究材料にならない杜撰な統計記録であった事は、初見であり収穫であった。改めて、日本人の弱さを考えさせてくれる。

  • 吉田先生の渾身の作品。
    この本を読むと、右の人が大好きな大東亜解放という聖戦とやらが、日本軍の人命軽視、補給軽視の戦争遂行によって実に尊い人命が無くなったかと思うとやりきれなくなる。

    もっとも、大義のために人名を軽視しがちなお偉いさんの考えたかたは戦後70年経過しても変わらないようである。

  • 悲惨な戦争最前線。
    国として兵隊を軽視していたことがよく判る。

  • 戦死した兵士のほとんどは戦闘中での死ではなく、病死、餓死だったようだ。日中戦争、太平洋戦争の兵士にスポットをあて、あくまで事実を客観的に紹介している。

  • 序章 アジア・太平洋戦争の長期化
    第1章 死にゆく兵士たち―絶望的抗戦期の実態1
    第2章 身体から見た戦争―絶望的抗戦期の実態2
    第3章 無残な死、その歴史的背景
    終章 深く刻まれた「戦争の傷跡」

    著者:吉田裕(1954-、入間市、日本史)

  • 戦略の立て方を誤ると、現場はこうなる、ということが書き記された本。

    一旦物事が進み始めたら、意思決定者を除く全ての関係者は、どんなに非合理な与件も、与件として飲み込み、その範疇で、部外者からは正気とは思えぬ仕事でも、進めざるを得ない。

    無理なものは無理、と僕でも分かること、が、その当時の英俊に分からぬことはありえないのではないか。
    が、それでも突き進んで行かざるを得なかった。
    このメカニズムを抽象化して、今後の「敗戦」を避ける叡智が求められているのではないか。

    そこまで踏み込んだ記述は読み取れなかったが、問題提起としては良き本なのかもしれない。

    かくすればかくなるものとしりながらやむにやまれぬやまとだましい という歌。
    よいことのように感じる人も多いようだか、そういうところが、先の大戦を敗戦に導いた根っことも言えるのかもしれない。

  •  映画「眼下の敵」で、ドイツ潜水艦長がこう言う。「…昔の戦争はよかった。例え負けても名誉は残った…」、「…誰でも勇ましい思い出が欲しい…」。
     第2次世界大戦では異様な思想の下で無駄に命が失われた。餓死・海没死・自殺・特攻などの悲惨な現実が数値で示され言葉を失う。
     昨今、架空戦記や日本礼賛の書籍やテレビ番組が多く作られることに強い不快感を感じていた。制作者もそうだが、事実と異なる情報を拠り所にしてしまう人々に警鐘を鳴らしたい。

  • 特異な軍事思想の下、凄惨な体験を強いられた日本兵について反戦思想、日本賞賛ではなく、兵士の目線・立ち位置でアジア・太平洋戦争の現実について描かれた一冊です。望みなき戦を戦う悲惨事について考えさせられる本でした。平和な時代に生きる私たちができることは歴史の失敗を失敗として冷静に分析・検証すること。感情的にとらえるだけでは戦後、その失敗の責任や実情について一切を閉口した日本軍上層部と同じ過ちを未来に再び引き起しかねないと思います。歴史を学ぶとは教訓を冷静に分析し、それを今に活かすことだと強く感じました。

  • 2018/08/15。
    荻上チキさんのSession 22 8/14に著者がゲストとしていらしてました。

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著者プロフィール

2018年1月現在西日本旅客鉄道株式会社安全研究所 主席研究員(主席)

「2018年 『鉄道トンネル火災事故の検証』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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