日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実 (中公新書 2465)
- 中央公論新社 (2017年12月21日発売)


- 本 ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121024657
作品紹介・あらすじ
新書大賞受賞
第30回アジア・太平洋賞特別賞受賞
310万人に及ぶ犠牲者を出した先の大戦。実はその9割が1944年以降と推算される。本書は「兵士の目線・立ち位置」から、特に敗色濃厚になった時期以降のアジア・太平洋戦争の実態を追う。
異常に高率の餓死、30万人を超えた海没死、戦場での自殺・「処置」、特攻、劣悪化していく補充兵、靴に鮫皮まで使用した物資欠乏……。
勇猛と語られる日本兵たちが、特異な軍事思想の下、凄惨な体験をせざるを得なかった現実を描く。
感想・レビュー・書評
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太平洋戦争における日本の死者数は合計で三二〇万人とされており、その内軍関係は二一〇万人となっています
そして、それらの「死」のあり様を兵士の視点から検証したのが、本書となっています
ただ、その前に、やはり是非とも覚えておきたい、いや忘れてはいけない数字があって、それは太平洋戦争における”アジア”の死者数で、一九〇〇万人以上と言われています
とりわけ”中国”は一〇〇〇万人以上と文字通り桁が違う
そりゃ簡単に怨みは消えないよ
一〇〇〇万年は消えないよ(暴論)
だから何でもかんでも言う事聞いたれってことではもちろんないんだが、やっぱりこの数字はポイってしちゃうわけにはいかないよね
はい、あらためて日本兵です
具体的な数字は分からないんだけど、日本兵の死因の最たるものは「餓死」(栄養失調に伴う体力の喪失による病死も含む)なんだそう
もうね、わいなんかただでさえ食いしん坊なんで「餓死」なんて聞いただけでもちょっと苦しくなってくるもの
だいたい作戦の中身が食料は現地調達!みたいなんが平気で実行されてたわけでね
もう、端からダメすぎるし、食料補給もままならないんじゃ、勝てるわけないじゃん!
やっぱり無謀な戦争だったんよ〜
なんてことを思うわけだけど
ちょっと待て!と
ちょ〜っと待ちなさいよ!と言いたい
じゃあ、ほぼほぼ勝てそうな戦争はOKなのか?と
もちろん本書でもそんなことはひと言も言っていないわけだが、そっちへ行っちゃう危険もちゃんと認識して進んでいきませんか、と思うわけ
無謀な戦争も、無謀じゃない戦争もダメだよ!いや無謀じゃない戦争なんてないわ!( ゚д゚ )クワッ!! -
日本軍兵士を多面的、かつ客観的に分析した本。読めば読むほど、日本軍の粗探しのような評価、残念な感情が増幅する。
軍人、軍属の戦没者230万人のうち餓死、マラリアなどの病死が140万人。特攻隊にはヒロポン。特攻隊の爆弾は機内にあって破壊力が落ちるため、激突前に爆弾を降下させた方が合理的であったが切り離せないな機体もあった、など。
また、戦況の変化についても詳細に記される。開戦から1942年5月までは日本軍の戦略的攻勢期。短期間に東南アジアから太平洋に領土を拡げた。まだ、太平洋地域で陸海軍ともアメリカを上回っていた。しかし、1942年のミッドウェー海戦で空母4隻を失い敗北。43年、ガダルカナル島での敗北により、日本の敗勢は明確に。44年、マリアナ諸島のサイパンでマリアナ沖海戦に敗北。アメリカはここにB29の発車基地を築き、日本本土を行動圏内へ。
「偏執病的な作戦至上主義」、餓死者の話が辛い。 -
先の大戦では310万人もの人が亡くなった。その9割以上が1944年以降に亡くなったそうだ。中でも餓死や自殺が大変多かったということに驚いた。
飢えだけでなく、覚醒剤中毒、虫歯、水虫などに苦しんだ様子も詳しく書かれていた。
近頃、日本軍は強かった、凄かったと礼賛する内容の話を聞いたりしたが、そんなことはなく、しっかりと負けを認め、総括することが大切だ。 -
ここ20年くらい前から日本近代史学界では「兵士の視点・体験」からの戦争史・軍事史研究が盛んだが、本書は1941~45年のアジア・太平洋戦争に焦点を絞った、そうした研究動向の現時点におけるコンパクトなダイジェストといえる。餓死、自殺、他殺、薬物中毒、精神疾患、感染症、私的制裁、略奪、人肉食といった極限状況における日本軍兵士の「死と病理」を生々しい記録・証言によって明らかにしている。単に兵士の悲惨な実情を示すのみならず、その構造的原因を経済・文化的背景を含めて分析することで、立体的な歴史像を構築している。注意するべきは、いわゆる「後知恵」的な批判・裁断は極力行わず、批判するにしても同時代人の軍人・軍関係者の直接の言葉をもって行っていることで、「当時の感覚」としても問題が意識化されていたことがわかるような叙述になっていることであろう。近年の根拠のない「日本軍礼賛」「日本人自画自賛」風潮への批判意識は明瞭だが、そうした先入観なく「事実」をありのままに知らしめるための工夫といえる。
なお個人的には、本書で示される日本軍の構造・特質がどうしても現在の日本企業と重なって仕方なかったことを付言しておく。過労死・過労自殺が恒常化している劣悪な職場環境や、「自己責任」の名の下で次々と弱者に抑圧が移譲される状況、作戦至上主義ならぬ成果至上主義による人間性の荒廃、問題を根本的に改めず精神主義的な対応に終始する国家の対応など、あまりにも相似している。改めて「戦前と戦後の連続性」を深刻に捉える必要を感じた。 -
アジア・太平洋戦争を対象に「凄惨な戦場の実相、兵士たちが直面した過酷な現実に少しでもせま」ることをコンセプトとしている。その他には「戦後歴史学を問い直す」「帝国陸海軍の軍事的特性との関連性を明らかにする」こともテーマにしている。第一章が主に兵士たちの死因を、第二章は兵士の心身の状態、第三章では戦争末期の無残な状況を招いた背景について、それぞれ主に扱っている。一、二章ではまさに兵士たちから見る戦争の実態を羅列し、三章はこれまでの記述をもとに戦争全体を見渡すスタンスに立つ。
もっとも印象的だった二点のうちの一つ目は、補給の軽視もあって深刻な食糧不足が数多くの餓死者や栄養失調による戦病死者を出す最大の要因となったことである。戦争末期においては兵士だけにとどまらず日本人のほとんどがろくに食うものも食えない状況で戦争の継続は不可能だったことは明らかだ。二点目は、国内の戦没者の大部分が1944年以降に亡くなっていたこと。この二点を併せれば、遅くとも「第四期」とされる1944年8月以降の「絶望的抗戦期」初期に敗北を受け容れていればと思わずにはいられない。そのほか、本書の記述からは政権や軍部だけではなく、昭和天皇も明らかに戦争指導者のひとりであったことや、国内の括りを外せば最大の被害者が中国であったという事実も見過ごせない。
兵士の立場に立って戦争の実態を顧みるという試みは、本書のタイトルやまえがきなどに謳われているとおり、その目的が果たされている。当時の悲惨な状況を追認することができると同時に、ある程度は本書が扱う戦争に関する書籍や映像などに触れたことのある読者ならば、そこまで目新しい情報というわけではないだろう。その点では、広い視野に立って敗戦の理由を探る第三章にある考察も基本的にはオーソドックスなものだとは思う。終盤に著者が示す失敗の根本原因については一理あるものの、それが解消されているはずの現在の日本において同様の失敗が起こりえないのだろうかと自問すると、それが的確な指摘なのかいまひとつ納得できずに終わった。
終盤の記述から察するに、ときには歴史修正主義的な意味合いも含む昨今の「日本スゴイ」ブームが表すような風潮への危機感も、著者の動機だったのかもしれない。 -
⚫︎単なる戦闘ではなく、日本兵士の置かれた状況がよくわかる良作。最近はこの手の本の方が面白い。
⚫︎陸海軍は単なる軍隊ではなく、大変な官僚機構であったことも大変興味深い。資源もない中で、あれだけ戦線を広げて、よくもまあ日々の事務処理が流れていったものだと変に感心してしまう。まあ、実際には流れてないからダメダメな部分もあるのだろうが、今後はそういう視点の本も出てきて欲しい。
⚫︎兵士もあくまで人間、ほんとにタイミングで、生死が別れる特殊な環境だと実感する。
⚫︎悲しいかな、資源のなさを後半は痛感しまくるのであった… -
2019年新書大賞受賞作。
先の大戦を題材とした書籍は星の数ほどあるが、膨大な史料を分析して、兵士という目線で当時の日本軍の実相が描かれているのが本書の大きな特徴だ。新書らしくわかりやすくコンパクトにまとまっている。
一口に戦死といっても、餓死、海没死、発狂死、処置という名の傷病兵殺害、兵士による人肉食、肉攻、私的制裁、私闘など。
戦争ほど悲惨なものはない。改めて痛感。
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文化を外国人にほめてもらう、海外での日本人の活躍ぶりを紹介するメディアが増えている中、このタイトルの本を読んでみようと思ったのは日本軍兵士の勇ましさエピソードに期待したから。筆者はそういう人こそ日本軍兵士の凄惨な現実を直視する必要があると思ってこの本を書いたそう。
この本はアジア・太平洋戦争で日本が敗戦濃厚となってからの兵士の健康・疫病問題や、軍が思想や指導のあり方で現場にどのような負荷をかけてきたかを多くのデータと手記を交えて説明したもの。
日本の戦没者の多くが敗戦濃厚となった1944.8-1945.8に集中しているそう。要因も餓死を中心にした病気によるものが多く、海没、自殺や傷病兵の殺害など、戦死でないものが多い。
兵士の平均体重も装備の質も軍紀もみるみる落ちていく様が示される。
それらの要因となった歴史的背景も思想や政府といった目線から解説してくれる。
学ぶことが多かったんだけど、下の階級の兵士が文献として日本軍の問題点を多く残していることに1番驚いた。下が問題を認識しているのに上は解決しようと動かないのは現代でもよくあること。
戦争がらみの本の中には固有名詞や専門用語が多く、読んでられないものが多い中、この本はめちゃくちゃ読みやすい。だいたいの章の最後に一言結論を書いてくれるのも頭の中がまとまっていい。おすすめ。 -
著者は、戦争を賛美する風潮に反発したことや、兵士たちの手記を読むことで、この悲惨な記憶を風化させてはならないと思ったことからこの本を書いたようである。
実際、悲惨の一言に尽きる。日本軍は近代化に失敗した軍隊で、虫歯や栄養失調で弱った身体にマラリヤなどの病気が蔓延し、戦死と言えないような死に方をした兵士も多かった。また、戦争末期にはまともな装備も与えられず訓練もろくに出来ていない老年や少年たちが招集されている。
通信機器が遅れていて有線にこだわった為、結局は徒歩の伝令や伝書鳩に頼ることになったとか、日本製の機械や自動車が未熟で、末期にはものすごい重さの荷物を背負って運ぶことになった為、効率が悪かったとか、日本軍あるあるが沢山書かれていて、兵隊はつらいなぁ、と感じた。
弱いものいじめが横行した為、自殺者や敵軍に走る兵士が出てきたなども、全体を見る人が足りなかったからか、と思った。
これでもか、と書かれた日本軍の有様を読むと、戦争は絶対にしてはいけないと痛感する。日本人として読む価値はある。
著者プロフィール
吉田裕の作品






人類の希望と言われています
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またガ島を思い出しました(´;Д;`)
またガ島を思い出しました(´;Д;`)
本作でもガ島の戦いに触れてたね
そしてたまに見かける「この攻防戦は日本軍の”強さ”を証明するものだ!」という論を完全否定してまし...
本作でもガ島の戦いに触れてたね
そしてたまに見かける「この攻防戦は日本軍の”強さ”を証明するものだ!」という論を完全否定してました
あほか、日本軍惨敗やんかって