日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実 (中公新書)

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  • 中央公論新社
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レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024657

作品紹介・あらすじ

310万人に及ぶ犠牲者を出した先の大戦。実はその9割が1944年以降と推算される。本書は「兵士の目線・立ち位置」から、特に敗色濃厚になった時期以降のアジア・太平洋戦争の実態を追う。異常に高率の餓死、30万人を超えた海没死、戦場での自殺・「処置」、特攻、劣悪化していく補充兵、靴に鮫皮まで使用した物資欠乏……。勇猛と語られる日本兵たちが、特異な軍事思想の下、凄惨な体験をせざるを得なかった現実を描く。

感想・レビュー・書評

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  •  ここ20年くらい前から日本近代史学界では「兵士の視点・体験」からの戦争史・軍事史研究が盛んだが、本書は1941~45年のアジア・太平洋戦争に焦点を絞った、そうした研究動向の現時点におけるコンパクトなダイジェストといえる。餓死、自殺、他殺、薬物中毒、精神疾患、感染症、私的制裁、略奪、人肉食といった極限状況における日本軍兵士の「死と病理」を生々しい記録・証言によって明らかにしている。単に兵士の悲惨な実情を示すのみならず、その構造的原因を経済・文化的背景を含めて分析することで、立体的な歴史像を構築している。注意するべきは、いわゆる「後知恵」的な批判・裁断は極力行わず、批判するにしても同時代人の軍人・軍関係者の直接の言葉をもって行っていることで、「当時の感覚」としても問題が意識化されていたことがわかるような叙述になっていることであろう。近年の根拠のない「日本軍礼賛」「日本人自画自賛」風潮への批判意識は明瞭だが、そうした先入観なく「事実」をありのままに知らしめるための工夫といえる。

     なお個人的には、本書で示される日本軍の構造・特質がどうしても現在の日本企業と重なって仕方なかったことを付言しておく。過労死・過労自殺が恒常化している劣悪な職場環境や、「自己責任」の名の下で次々と弱者に抑圧が移譲される状況、作戦至上主義ならぬ成果至上主義による人間性の荒廃、問題を根本的に改めず精神主義的な対応に終始する国家の対応など、あまりにも相似している。改めて「戦前と戦後の連続性」を深刻に捉える必要を感じた。

  • 日中戦争・太平洋戦争を通じて、現場に近い日本軍の戦中史。
    「戦略レベルの戦史業書」と「戦術・個人レベルの戦場体験記」の隙間を埋める作品。

    例えば、戦地で歯医者がいない、覚醒ヒロポンの多用、必要不可欠な装備の劣化、アメリカへの過小評価、軍記・組織の乱れ、陸海軍の不統一 、機械化の遅れ=人力や根性で補う等を例に富み、帰還した現場の管理職達の証言や出版物をまとめている。
    個人の戦争体験記を、まとめただけという印象があり、物足りなさを感じる。
    しかし、時系列で一定の体系化されており、理解しやすい工夫がされている。
    また、敵であり戦勝国のアメリカと異なり、日本側の戦死者の記録が、遺族への気遣いや仲間意識により、後世の研究材料にならない杜撰な統計記録であった事は、初見であり収穫であった。改めて、日本人の弱さを考えさせてくれる。

  • 吉田先生の渾身の作品。
    この本を読むと、右の人が大好きな大東亜解放という聖戦とやらが、日本軍の人命軽視、補給軽視の戦争遂行によって実に尊い人命が無くなったかと思うとやりきれなくなる。

    もっとも、大義のために人名を軽視しがちなお偉いさんの考えたかたは戦後70年経過しても変わらないようである。

  • 特異な軍事思想の下、凄惨な体験を強いられた日本兵について反戦思想、日本賞賛ではなく、兵士の目線・立ち位置でアジア・太平洋戦争の現実について描かれた一冊です。望みなき戦を戦う悲惨事について考えさせられる本でした。平和な時代に生きる私たちができることは歴史の失敗を失敗として冷静に分析・検証すること。感情的にとらえるだけでは戦後、その失敗の責任や実情について一切を閉口した日本軍上層部と同じ過ちを未来に再び引き起しかねないと思います。歴史を学ぶとは教訓を冷静に分析し、それを今に活かすことだと強く感じました。

  • 2018/08/15。
    荻上チキさんのSession 22 8/14に著者がゲストとしていらしてました。

  • この時期には先の戦争を振り返る読書をする。悲惨な内容だった。歯科治療もない、トラウマは根性で乗り越えさせる、知的障害は・・・処置?なんじゃそりゃ。まったくもって愚かな戦争だ。愚かな戦争指導部(上層部)のせいでひどい目にあうのはいつも末端の兵士だ。われわれは美化するのではなく直視しなければならないのだ。

  •  イデオロギー色がないわけではないが濃くはない。軍医や衛生兵の証言を多く引用するなど、研究者の本らしく抑え目の表現ながら生々しい。死者の9割が1944年以降で、戦病死者や餓死者、自殺者数が戦闘の死者数を上回るという数々の推定。硫黄島の戦いでも戦闘の死者は3割のみとの証言。栄養や補給、工業化なども含めた総合国力が軍の強さでもあり、日本軍はこの点で明らかに弱かった様子が分かる。消耗戦を戦い抜くだけの国力はないとの「強い自覚」は軍にもあったと著者も書いているのに。
     著者は、国力を超えた戦線の拡大や戦争終結の意思決定の遅れの背景として、明治憲法体制の欠陥である「統帥権の独立」と「国家諸機関の分立制」を挙げている。しかし、両者は矛盾する面もあるかと思う。前者だけなら「軍部(=軍令)の暴走」と単純化すればよいが、実際には内閣や大政翼賛会など他のプレーヤーも戦争の過程にいた。また後者に重点を置けば、軍部の暴走というよりも、むしろ国家のどの機関も決定的な力を持たなかったことが欠陥だったのではないか。
     なお、男子人口に占める軍人の割合は同時代のドイツよりもずっと低く、この隘路に対し、植民地出身者や当時の欧米で行われていた女性の軍事動員は消極的で、その分少年兵を重視したという。

  • 太平洋戦争における日本軍の無謀、無策な戦闘行為はよく知られている。神風特攻隊やインパール作戦、離島での玉砕など、戦術も見通しもないし、援軍も補給も期待できない戦闘の中で個々の兵士は何を考え、どのように生き、どのように死んでいったのか。名もなき兵士の「リアル」を戦中、戦後の史料や兵士たちの手記から明らかにする。

    自分の体重とほぼ同じ重さの荷物を背負い、すぐに壊れる靴と不潔な下着で行軍する。歯磨きをする道具も時間もなく、多くの兵士は歯痛に苦しめられる。ときおり、爆発音がすれば、それは体力の果てた味方兵士の爆弾自殺であった。動けなくなった者には1つだけの弾丸が入った銃が与えられて、放置される。

    軍上層部はそんな兵士たちの日常を気にすることなく、作戦計画を立てる。兵士たちはただ翻弄されるだけの存在だった。

  • 2018年6月読了。
    戦史に対する歴史学からの視線、兵士(の特に肉体や精神)の目線から見た戦争について。
    本書を読むと如何に日本の軍隊は個人の肉体や精神を犠牲にして運用されていたかを体感することができる(まるで個々の兵隊には肉体や精神等ないかのような組織の運営をしている)。
    日本の組織に多かれ少なかれ見られる現象が日本の軍隊の中で起きていたと見るのは、読者の考え過ぎだろうか。

  • 日本軍兵士の実態について記述している。とても英霊などいえたものではないことがわかる。

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プロフィール

2018年1月現在西日本旅客鉄道株式会社安全研究所 主席研究員(主席)

「2018年 『鉄道トンネル火災事故の検証』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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