日本史の論点-邪馬台国から象徴天皇制まで (中公新書)

制作 : 中公新書編集部 
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 716
感想 : 49
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121025005

作品紹介・あらすじ

「いい国(1192)つくろう鎌倉幕府」。しかし鎌倉幕府の成立を1192年とする見方は今や少数派だ、といった話を聞いたことがある人も多いだろう。日本史の研究は日々蓄積され、塗り替えられている。

「邪馬台国はどこにあったか」(古代)、「応仁の乱は画期だったか」(中世)、「江戸時代の首都は京都か、江戸か」(近世)、「明治維新は革命だったのか」(近代)、「田中角栄は名政治家なのか」(現代)など、古代から現代まで各時代の重要テーマに豪華執筆陣が迫る。

いま日本史の世界で注目されている論点は何か、どこまで分かっているのか、この1冊でつかもう。

執筆分担:古代・倉本一宏(国際日本文化研究センター教授)、中世・今谷明(帝京大学特任教授)、近世・大石学(東京学芸大学教授)、近代・清水唯一朗(慶應義塾大学教授)、現代・宮城大蔵(上智大学教授)

感想・レビュー・書評

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  • 中公新書2500点を記念して出版された一冊。古代、中世から現代まで、5人の専門家が最新の学説を踏まえ論述されています。
    いつの間にか鎌倉幕府は1192年ではなく、「戦国大名」は「地域勢力」と呼ばれるなど、知識のアップデートの大切さを再認識しました。
    江戸時代に関する指摘は、特に示唆に富みます。

    従来の「江戸時代=封建制=農民は搾取される存在」は、マルクス・唯物史観。戦後の農地解放を進めるうえで、農村=封建制というフィクションを作る必要があった。江戸をはじめとする都市研究が進んだ現在では、農民の次男三男は都市にでて町民になるし、町民で豊かなものは侍株を買って侍になるし、逆に侍が嫌で俳諧師や医師、絵師になるものがいるなど、「家」制度自体は堅固だけれど、その中でも個人はかなりの部分、地域・身分をこえて動ける、非常にフレキシブルな社会だったことが明らかになっている。

    「鎖国=閉鎖的」というのも事実と異なる。従来から、長崎(オランダ・中国)、対馬(朝鮮)、薩摩(琉球)、松前(アイヌ)と4つの交易窓口をもっていた。日米修好通商条約以降、窓口を8つ(+横浜、神戸、新潟、函館)に増やした。ゼロ→100ではなく、4→8という連続性をもった政策変更だった点が見逃されている。

    これまで、江戸と明治は断絶の側面が強調されてきた。幕府を倒した明治政府が自らの正当性、革新性を強調するため、必要以上に江戸時代をネガティブに捉え(そして宣伝し)たという側面に留意しなければならない。実際、議会の二院制については幕臣の西周も構想していたし、先進的な幕府官僚たちは列強に立ち向かうため近代軍制の整備を進めていた。明治は江戸の克服ではなく、江戸の完成形とみたほうが見通しが立ちやすい。

    中国では王朝交替のたびに、前王朝の歴史が書かれます。その際、倒した側は自らの正当性を主張するため、旧王朝の初期は善く記述し、末期に進むにしたがって、これこれの悪い行いがあって民心が離れた(ので、倒されても当然だった)と書くのだそうです。彼の国の権力闘争は筆舌に尽くしがたいからなあと、のんびり構えていたのですが、知らず知らず、その手に乗ってしまっていたようです。実証的な歴史研究の大切さがわかる著作だと思います。

  • 江戸時代以降のトピックは、現在の社会のベースにもなっている国の政策に関係するものが多かったので歴史に疎い私にとっても興味深い内容でした。
    高校で習うくらいの日本史の基礎知識があればもっと楽しめただろうなと思いました。

  • 古代から現代まで、各時代の専門家が最新の研究成果に基づき、論点となっている史実について解説した著作

  • 鎌倉幕府の成立が1192年ではないなど、歴史研究の進展による見直しが進み、教科書の内容は昔と大きく変わっていると言われる。本書は、このように見直しが進むポイント・論点を各時代の専門家がまとめたもの。
    歴史が過ぎたことを記憶する学問、暗記物ではなく、固定的でないのは新鮮に感じる。
    一方で戦後史、とりわけここ20-30年の出来事はまだ歴史にはなりきっておらず解釈・異論があるところ。
    もっと手前で切り上げが方が良かった気がする。

  • 「邪馬台国はどこにあったのか」から、「象徴天皇はなぜ続いているのか」といった日本史で論点となっているテーマを、「古代」「中世」「近世」「近代」「現代」の5つの時代区分に分けて、5人の執筆者が書いている。

    歴史の研究は常に進んでいて、こういう論点が史料の発見等をきっかけに、決着がついたり、これまで定説とされていたことが塗り替えられたりする。

    日本の通史を270頁ほどに圧縮してるのであり、「今こんなテーマがありますよー」的なダイジェスト本と言える。巻末にずらり、執筆陣が紹介している「日本史をつかむための百冊」がある。これを眺めているだけで、興味をそそられるものがある。

    「中世はいつ始まったか」というテーマは、西洋史の区分が取り込まれたとか、誰かが初めて江戸時代からを「近世」と呼んだのが始まりだとか、封建制のある時代の前半が「中世」、後半が「近世」だとか、封建制があったのかなかったのかとか、そもそも封建制ってなんぞやとか、歴史の究明というのは楽しいようで、実は面倒なものだなとも感じる。

    気楽に趣味として読んでる分はよいが研究者は大変だ。

    この本では、個人的には「近世」と「現代」が面白かった。江戸時代(明治維新の前に)に、ほぼ現代の仕組みの基礎が作り上げられているという展開が面白かった。大名や旗本をサラリーマンと見なしたり、官僚化していくプロセスに触れられてたり、江戸の改革を「大きな政府」「小さな政府」の志向の繰り返しと述べられてたり。「近世」を執筆している大石学氏の本は別に読んでみたいと思った。

    「現代」は生きてきた時代の再現という意味で興味深く読んだ。確かに「象徴天皇」って抽象的だ。

    1000年後、2000年後、数万年後の「近代」とか「現代」って、どういう区分になってるのだろうか?

  • 本書は、古代(倉本一宏・国際日本文化研究センター教授)、中世(今谷明・帝京大学特任教授)、近世(大石学・東京学芸大学教授)、近代(清水唯一朗・慶応義塾大学教授)、現代(宮城大蔵・上智大学教授)のそれぞれについて、学会で注目されている最新テーマから歴史ファンが関心をもつ謎まで、29の論点について、それぞれの時代を研究する気鋭の研究者が解説している。
    取り上げられているのは、どれも日本史を考える上で興味深い論点ばかりで、日本史好きにはたまらない一冊である。これを読めば、日本史を古代から現代まで、一通り振り返りつつ、最新の学説についても理解を深められる。
    一方、こういうコンセプトの本の場合、自説は控え目にして、従来の説を踏まえた上で、最新の学説をバランスよく紹介してほしいところだが、各章を担当する研究者によって、そのあたりがあまり統一されていないのは少し残念だった。中世や近代は、期待どおりの記述であったが、古代や近世は担当者の自説にかなり偏っているように感じた。ただ、紹介されている自説自体は、新規性のある視点が多く、なかなか興味深かいものではあったが。冒頭の「邪馬台国はどこにあったのか」で、十分な論証もなく、邪馬台国は九州にあり、近畿の倭政権と並列していたと断定調で書かれているのは、流石にいかがなものかと思った。

  • 古代から現代までの5章、29の論点について、明快に切り込んだ歴史書。
    興味をそそる内容です。

  • 210.1-C
    閲覧新書

  • ざっくり歴史を見返すのに向いていると思います。

  • 古代から現代まで知っておきたい29の論点を。「邪馬台国はどこにあったのか」「応仁の乱は画期なのか」「江戸時代は鎖国だったのか」「明治維新は革命なのか」「田中角栄は名宰相か」など、古代・中世・近世・近代・現代の29の謎に豪華執筆陣が迫る。

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