外国人が見た日本-「誤解」と「再発見」の観光150年史 (中公新書)

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  • 中央公論新社
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レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121025111

作品紹介・あらすじ

明治初期、西洋が失った「古き良き」文明に魅了された欧米人は、数々の紀行文を記し、その影響で観光客は増加していく。日本側も「外国人の金を当てにするのは乞食同然」「一等国こそ賓客をもてなさねばならない」という論争を経て、国策としてのガイドブック作成、ホテル建設など、観光客誘致に邁進する。しかしそこには常に「見たいもの」と「見せたいもの」のギャップが存在していた。観光客誘致でたどる近代史。

感想・レビュー・書評

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  • 外国人観光客は、日本の何を求めて旅行に来ているのか。

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001134149

  • 最終章の提言は観光に関わったことのある人にとっては新しみはないが、前段の歴史の部分は改めて日本が辿ってきた道を確認するのにコンパクトにまとまっており読みやすい。1930年代から同じような議論をしていることがよくわかる。

  • これは日本の観光産業の歴史を綴った本です。

    明治の開国以来、外資の獲得手段の一つとして
    日本へ観光客を呼び込むことは、重要な施策
    であることは誰もが想像できると思います。

    途中に戦争や関東大震災などの不幸な出来事
    で中断はあるものの、戦後最大の中断理由は
    「貿易黒字」なのです。

    それはバブルの頃でしょうか。内需拡大なんて
    叫ばれていた時に、外資をもっと、なんて
    言えるわけがないです。

    その貿易不均衡が解消された今だからこそ、
    観光客を大勢呼び込もうと言える時代になった
    のですが、コロナが憎らしいです。

    おそらく「貿易黒字」に次ぐ、中断理由として
    歴史に残されると思うこのコロナ禍ですが
    きっとまた復活することを祈って読むべき
    一冊です。

  • ●→引用

    ●当時の西欧人には、前記のように自分たちの「伝統を擁護」しなくてはならない理由があった。いっぽうで日本人には、外国と対等にわたりあうため富国強兵を推し進め、封建時代からの「伝統を壊す」必要があった。その相違がぶつかりあった時代での見解の相違である。このことは、外国人と日本人との間で、日本の魅力に対する感じ方、ギャップの根深さを浮かび上がらせているように思える。
    ●現在書店に並ぶ旅行ガイドブックはどこへ行ったらいいか、何を食べたらいいかを教えてくれるハウ・トウー本の領域にとどまっている。その土地の歴史、文化、自然地理、芸術、文学、動植物といった教養に属する記述はほとんどない。あってもほんの数行程度である。昭和の末ごろまでは国内の旅行ガイドブックなら、地元の郷土歴史家や地方紙の文化面担当者、高校の教師や大学教授が著者となり、見どころの歴史などを案内していた。外国旅行のものならその道の権威筋といった大学教授などが著者として名を連ねていた。これらは明治時代以来の旅行案内書の特徴、さらにいえば欧米の出版社による旅行案内書の伝統を引き継いだものだった。
    ●西欧人と日本人との大きな相違の一つは、身近な日常の中に宗教が根付いているか否かではないだろうか。西欧人の多くは、日常生活の中で祈りを捧げることのほか、旅先でも教会などでは親が小さな子に壁画を指さしながら「これがペテロで、あっちがパウロで・・・」などと絵の中の話を説明している光景をよく見かける。普段絵本で読み聞かせている聖書の中の話を、出かけた先の教会でも自然にしている。旅先でも宗教が離れずにある。日本人の場合、宗教が生活の中に入っておらず、お寺との関りをもつのは法事のときくらい、という人が多い。旅と関連した庶民の間の宗教的行為といえばお伊勢参りがあるが、それも盛んに行われた時期とそうでない時期があり、旅と宗教的行為との関係は比較的薄い。
    ●政府が国内力制限を全面撤廃しなっかた最大の理由は、条約改正において格好の交渉道具と考えていたためである。よく知られているように、幕府が欧米諸国と結んだ不平等条約を改正することは、明治政府にとっての最重要課題だった。
    ●中国人へは、日本の伝統的見どころを見せても、かえって歴史が浅いと見下されてしまう。中国人へは近代的姿を見せただけである。韓国人へは、近代的側面と歴史的側面、その両方を見せた。(略)同じ東洋でも国や地域により日本が見せたいものは異なった。明治前半、外国人の遊歩区域規定が条約改正の条件闘争に利用されたように、この時代の観光には、対米感情やアジアの覇権に絡んで政治、外交の要素が色濃く入り込んでいた。
    ●明治時代以来、日本は、欧米観光客からのフジヤマ、ゲイシャといったオリエンタルなまなざしを甘受し、それを宣伝してきた。いっぽう東洋からの旅行者には近代化した日本を見せようとした。しあしそれは西洋からは近代化を被った「偽者の東洋」として見られ、東洋や南洋からは「西洋文化を模倣した偽者」として見られてしまう危険性をはらんでいた。このジレンマに気づいた小山栄三らは、大東亜共栄圏の人間に対して、日本の科学的産業的施設を見せるのにとどまらず、「皇道精神」といった日本民族の精神的崇高性を理解させるべきだと主張した。”皇道精神”を啓蒙することこそが、ジレンマに囚われることのない大東亜共栄圏の観光宣伝の帰着点としたわけである。
    ●観光国の条件としては、「気候と治安のよさ」を前提として、「文化、自然、食」の魅力が高いことが重要といわれる。ハワイはそれらを満たしている。日本も治安は合格、気候も四季おりおりで合格、アンケート結果では食の評価も高い。文化や歴史の魅力も備えているとしたら、残るのは自然である。だが、日本人は自国の自然を過小評価し、魅力を活かしきっていない。(略)本書で多数の例を述べてきたように、日本の文化や歴史に関心をもち日本にやってきた人たちも、日本各地の自然に魅せられた。日本の自然に魅力がなかったら、彼らの多くは日本滞在の年月をずっと減らしてのではないかとさえ思える。文化や歴史に興味があっても息抜きが必要で、自然の中に身をおきたくなる。日本にはそうした自然も多種多様にあり、それらとセットになればリピーターも増えていく。

  • 日光東照宮、吉原遊廓、原爆ドーム……外国人は日本で何を見たかったのか、日本人はなにを見せたかったのか。明治から現代までを通観

  • 〈要約〉
    訪日外国人数は近年急激に増加しており、政府は高い目標を設定してるが外部要因による影響を大きく受けやすい。リスクヘッジの為にも、外国人が体験したいと考えていることと日本人が体験して欲しいことのギャップを念頭に歴史を学び分析し、きめ細やかなマーケティングを行うことが欠かせない。


    〈感想〉
    「観光」という観点から日本の近現代史を俯瞰した「歴史の教科書」です。

    幕末から現代に至るまでの外国人から見た日本、興味がある日本と、それを受けて日本の観光に対しての意識がどのように変遷してきたのかが分かりやすく書かれています。

    最終章では、更なる外国人観光客の増加を見込む日本に対しての、著者からの課題提案で締めくくられます。

    これまで学校で学んできた歴史とは全く違う観点から語られる外国人と日本の関わり方の話はどれも興味深く、多種多様な文献や、詳細なデータを列挙した解説は信頼できるものでした。

    並行して読んでいた「日本はどう報じられているか」において、国際関係における経済、安全保障のために、海外に向けた戦略的な情報発信を行う必要性が説かれていましたが、まさに観光もその一翼を担う事業と言えるのではないでしょうか。
    観光とは単なる娯楽ではなく、国にとってすれば外貨獲得の重要な手段であり、その国をイメージ付ける戦略として考えるべきことなのでしょう。

    バブル期に日本が外国(主にアメリカ)との経済摩擦を考慮して訪日外国人誘致に消極的になったタイミングと、バブル崩壊後に起きた日本のイメージ低下(日本異質論の残滓)は無関係とは思えないのです。

    政府は外国人観光客の更なる増加を目標にしています。
    幕末から「外国人が見たいもの」と「日本人が見せたいもの」には大きなギャップが連綿として続き、その理由として根本的な徹マーケティングの不足を挙げ、これが水モノである観光産業のリスクヘッジにつながることを説いています。

    昔、地方へ税金をばら撒いた結果、日本各地にくだらない建造物が乱立し、当然のごとく無駄遣いに終わりました。当然地方としては県外からの来客数増のために行ったことでしょうが、何も考えず、見せたいものを作ろう考えよう、の結果です。

    斜めに見たことを書きますが、よくある広告屋のように、「おれたちが流行を作る」という奢った考え方ではなく、今求められているものを丁寧に分析して現状を把握し、ニーズとトレンドに沿ったPRを油断することなく行って行くことが大事なのでしょう。

    この本の主題とはズレますが、ミクロに考えると、これは人とのコミュニケーションにおいても同じことが言えるな、と読みながら思った次第です。

    多くの面で新たな視点を与えてくれる良書でした。

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00260672

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著者プロフィール

1957年東京生まれ。早稲田大学第一文学部心理学科卒業。実業之日本社でブルーガイド編集長などを務める。国内だけでなくイタリアなどのガイドブックも編集。また自身が編集したガイドは台湾・韓国で翻訳出版されている。主著『明治大正 凸凹地図 東京散歩』(実業之日本社、2015)、『東京鉄道遺産100選』(中公新書、2015)、『関東大震災と鉄道』(新潮社、2012)、『「水」が教えてくれる東京の微地形散歩』(実業之日本社、2013)ほか。

「2018年 『外国人が見た日本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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