高坂正堯―戦後日本と現実主義 (中公新書)

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  • 中央公論新社
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レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121025128

作品紹介・あらすじ

日本における国際政治学の最大の巨人・高坂正堯(1934~96)。中立志向の理想主義が世を覆う60年代初頭、28歳で論壇デビューした高坂は、日米安保体制を容認、勢力均衡という現実主義から日本のあり方を説く。その後の国際政治の動向は彼の主張を裏付け、確固たる地位を得た。本書は、高坂の主著、政治家のブレーンとしての活動を中心に生涯を辿る。戦後日本の知的潮流と、戦後政治のもう一つの姿を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • 現実主義者・高坂正堯の若き頃からの秀才ぶり、父・正顕からの伝統をひく京都学派としての顔。そして東大のこれまた若き秀才・坂本義和との対話が面白い。理想主義者・坂本の高坂評は「空襲を経験していないため、戦争の苦労を知らない高坂」とのこと。高坂の坂本や丸山眞男への丁寧な態度は頭が下がるところ。そして晩年62歳で癌のため死去した際の弟・節三や母との別れのシーンが感動的だった。そして多くの弟子たちに愛された様子も。私には若き日の佐藤栄作首相のブレーンとしての活躍が御用学者に見えたものの、この人は主張すべきことをしっかり主張していた信念の人だった。文明史家としてのこの人の情熱を感じ、伝説的な巨人であった素顔を知ることができたように思う。高坂が森本哲郎「ある通商国家の興亡」の解説に書いたという言葉が印象的とのことであり、最後に引用したい。「解釈にはセンスと勇気とを必要とする。その勇気がないのか、それとも事実の発掘が研究者を疲れさせるのか、あるいは専門化が進行したことがセンスを失わせるのか、面白くもなく教訓を汲み出すこともできない歴史書が多すぎる」高坂自らの著書に対する自信の言葉だ!

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  • 一般の研究者は時代と地域を限定することでまずは博士号や学術書につながる論文に専念したがる。しかし高坂はウィーン体制研究gあみ歓声のままに、戦間期や第2次大戦後に対象を広げており、知的好奇心は最初から多角的dあった。

    高坂が冷戦の厳しさを指摘しつつも、多極化を察知しているのは先見の明。安全保障は国際政治学の中心となる領域

    現実の国際政治をフォローしながら、その合間に歴史のやや本格的な研究をする方法をとってきた。
    学際的な研究としたのは、泉温の異なるもの同士が話し合うということはそのギャップを埋め、異なった領域の間の連関をつけ、全体像への接近を可能にするから。

  •  政治家でも思想家でもない、政治学者の評伝は珍しい。現実主義者、政治ブレーン、論壇という多彩な活躍のみならず、国際政治、文明史、外交史と研究対象も学際的だったことが分かる。ナンバー・ワンの存在だったのか評価は分かれるだろうが「オンリー・ワンの存在であったことに異論は少ない」との評価で本書は締め括られている。
     また「理想主義者」が多数派の時代で、「現実主義者」内の分岐も指摘しているのが新鮮だった。中曽根内閣時代、軍事力増強に消極的な「政治的リアリスト」永井陽之助、対極にある「軍事的リアリスト」中曽根や岡崎久彦、両者の中間又は折衷のような高坂。湾岸戦争に際し、国連の「警察行動」論=正戦論のアプローチと、「国益」論=現実主義のアプローチ。

  • 高坂正堯が鬼籍に入ったのは1996年。
    この年の私の読書録を読み返すと、「高坂正堯」以外にも「司馬遼太郎」「遠藤周作」の名があり、この3人が亡くなって、「これらの人の小説、評論がもう世に出てこないと思うと寂しい限り」との記載があった。本当にこの時は直接会ったこともない人の死が何故こんなに悲しいのかと思った記憶がある。
    更にこの年には、渥美清、丸山眞男、星野道夫,岡本太郎が亡くなっている。
    特に、丸山眞男の名前があったのは、高坂との因縁めいたものを感じた。
    そして没後20余年たった今年(2018年)10月に本書が出版されたので、さっそく手にした。

    戦後日本における進歩的知識人と言われた「岩波・朝日文化人」が闊歩していた1960年代に、28歳の若さでその時流に反旗をかざした「現実主義者の平和論」を発表し、衝撃的な論壇デビューを飾り(もっとも高坂はこの論文発表の後に「落下傘で降りたらまわりは敵ばかりだった」と述懐しているのは面白い)、その後豊富な歴史の知識を背景として、安全保障、国際政治経済、文明論など複数の領域を融合できる稀有な存在として、学術論文や多彩なメデア、また時の総理のブレーンとしても活躍した高坂正堯の伝記。

    本書は幼年期から亡くなるまでの高坂の考え方の変遷、また高坂の生きていた時代背景や政治・論壇の様子、高坂に影響を与えた人達を、隈なく冷静にかつ平易に纏めており、非常に読みやすいものになっている。

    本書を読んで、高坂は当初は保守と言われながらも「護憲派」であり、現行憲法の解釈の仕方で自衛隊を運用すべきと考えていたが、冷戦終了後の湾岸戦争を転機として「一国平和主義」では日本は衰亡しかねないとして、「改憲派」に変わったというのを始めて知った。

    著者は、「高坂をよく知る大家や国際政治学史を専門とする研究者が多くいるにもかかわらず、本書を公刊するのは僭越ではないかとの思いが脱稿したいまも頭を離れない。それでも執筆をあきらめ切れなかったのは、高坂を直接知らない世代が学界の中枢を占めるようになった今日ですら、評伝が弟御の高坂節三『昭和の宿命を見つめた眼―父・高坂正顕と兄・高坂正堯』しかなく、このままでは国際政治学者たちの知的潮流や現実政治とのかかわりを把握することが次第に困難になると感じたからである」と述べている。

    終章には高坂の若い時期の言葉だが「私は日本が好きだし、日本は悪くない国だと思っている。しかし自分は愛国者であると自認するとことには、なんとなくためらいを感ずる。また、私は自分のしていることが日本のためになって欲しいと思っている。しかし、自分は国家のために働いているのだといいたくはない。しかも、なお自ら愛国者と名乗りたくないが、何十年か後で、人びとが私のことを『彼は愛国者だった』といってくれたらうれしいと思うだろう」という引用がある。
    これを読んでいると、高坂の早い死に対して思わず涙が溢れて来る。

    名著である。

  • 東2法経図・6F開架 B1/5/2512/K

  • 没後四半世紀に近くなった高坂の一般向け評伝としては、初めて読んだもの。

  • 【版元】
    初版刊行日 2018/10/22
    判型 新書判
    ページ数 424ページ
    定価 本体1000円(税別)
    ISBN 978-4-12-102512-8
    http://www.chuko.co.jp/shinsho/2018/10/102512.html

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著者プロフィール

1968年東京都生まれ。92年京都大学法学部卒業。97年神戸大学大学院法学研究科単位取得退学。博士(政治学)。現在、中央大学総合政策学部教授。日本政治外交史・東アジア国際政治史専攻。著書に『東アジア国際環境の変動と日本外交 1918-1931』(有斐閣/吉田茂賞受賞)、『広田弘毅――「悲劇の宰相」の実像』(中公新書)、『日中歴史認識――「田中上奏文」をめぐる相剋 1927-2010』(東京大学出版会)、『日中国交正常化――田中角栄、大平正芳、官僚たちの挑戦』(中公新書/大佛次郎論壇賞、アジア・太平洋賞特別賞受賞)、『大平正芳 理念と外交』(岩波現代全書)、『外交ドキュメント 歴史認識』(岩波新書)、『中曽根康弘――「大統領的首相」の軌跡』(中公新書)ほか多数。

「2016年 『田中角栄 昭和の光と闇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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