オスマン帝国-繁栄と衰亡の600年史 (中公新書 2518)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 49
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121025180

感想・レビュー・書評

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  • 14世紀初頭から20世紀初頭にかけて、約600年の長きにわたり存続したオスマン帝国栄枯盛衰の歴史を綴った書。

    オスマン帝国は、600年間、常に領土を巡って周辺国と争い、国内に紛争の火種を抱えていて、その版図は刻々と変わっていったようだ。まるで、日本の戦国時代が600年間続いたような感じ。読んでいてちょっとウンザリだった。戦費もかさんだろうしなあ。トルコ人は、元々はモンゴル高原起源の遊牧民だったというから、そういう先祖のDNAも関係しているのかな?

    戦乱に明け暮れつつも長きにわたり帝国が存在し続けられた秘訣は、スルタン即位時にその兄弟を処刑する「兄弟殺し」の習慣、奴隷を王子の母とする習慣(王妃の一族が外戚として力をもつのを防ぐため、王妃との間には子を作らない)、君主直属の奴隷を重用する習慣(君主権力の絶対化を図るために抜擢)、諸民族・諸宗派の共存を目指した柔軟で寛容なオスマン主義の採用、等にあるという。兄弟殺しにはさすがに唖然とした。野蛮というか、血も涙もないというか。帝国も後期になると、さすがに殺さず幽閉するようになったようだが(ずっと幽閉されていたお陰で帝位を継いだ時には気が触れてしまっていたスルタンも何人か居たようだから、残酷であることには変わりないよな)。

    最後は、オスマン帝国の宗教的・民族的な寛容性が仇になり、滅亡を早めてしまったようである。著者は、「近世までの帝国の特性である柔構造が、均一かつ同質な国民国家を形成するという潮流が世界的に加速するなかで機能不全を起こした」と書いている。

    本書から、第一次世界大戦前夜のバルカン半島の不安定な状況などが分かったのは良かった。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      norisukeさん
      親日国だから、勝手に親しみを抱いているのですが、モンゴルがルーツだったとは、、、
      怖い面ではブルガリア映画『略奪の...
      norisukeさん
      親日国だから、勝手に親しみを抱いているのですが、モンゴルがルーツだったとは、、、
      怖い面ではブルガリア映画『略奪の大地』を思い出していました。何処も近隣の国同士だと色々、、、
      2020/10/06
    • norisukeさん
      猫丸さん、コメントありがとうございます。
      遊牧民はユーラシア東西の交易を担って隠然たる力を持っていたともいいますし、本書を読んで、改めて中...
      猫丸さん、コメントありがとうございます。
      遊牧民はユーラシア東西の交易を担って隠然たる力を持っていたともいいますし、本書を読んで、改めて中東や中央アジアの人々の強靭さやバイタリティを感じました(残念ながら、欧米中心の現代社会とはマッチしていないようですが…)。トルコは最近ニュースになることが多いので、今後注目していきたい国の一つです。
      2020/10/06
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      norisukeさん
      そう言えば、EU加盟できるのかな(独り言です)
      norisukeさん
      そう言えば、EU加盟できるのかな(独り言です)
      2020/10/06
  • タイトル通り、オスマン帝国の600年史をまとめた1冊です。歴史好きの友人にオススメいただいて読了。
    「歴史を綴って意味づけていく営みの面白さ」と、「権力のコントロールの巧みさ」が興味深いと感じた1冊でした。

    前者について、卑近な例で行くと、正直自分が普段接している会社の仕事でさえ、「この部長の時はこういう方針で他部にも強く出ていて」とか「この部長の時は景気が悪かったのもあって新しいコトができなくて」みたいな振り返りすらできてない訳なのです。客観的に振り返れるほどの第三者ではない、というのはあるかもしれませんが…。
    それを、こんな何百年も前の歴史を分析して、「この時期は帝国の衰退期だと思われていたが、実際には権力構造の変革が進んだ時代で、今後の発展の礎となったと再評価されるようになった」なんて言えるのって凄いコトだなぁと。
    ひょっとすると、歴史を学ぶ効用の1つとして、歴史的な事実の連なりの中で、それに流れや意味を見出していく思考訓練になる、というのはあるのかもしれません。

    後者について、本著内でたびたび触れられ、終章でも取り上げられているように、権力構造が600年の間に移り変わっていく姿が、様々なステークホルダーの思惑も含めて描写されていて、これも面白かったです。
    特に、スルタンによる中央集権体制から、徐々に分権化が進んでいくくだりは確かにある種民主的な香りもあるなぁ…と思いました。

    ちなみに、セリム1世を指して、「冷酷王」と言うそうなんですが、振られているルビが「ヤヴズ」
    これは…!と、ちょっと中二病的なコトを思ってしまいました(笑

  •  近代ヨーロッパの本を読んでると、崩壊しかけのオスマン帝国が出てくるので気になって読んでみた。

     ただ教養として軽く読むには難しかった。聴き慣れない横文字のせいかも。でも、オスマン帝国がどのような特徴を持っている国か、現在にどう根付いているのかがなんとなくわかったと思う。もうちょっと簡単な本を読んでみて再挑戦したい。

  • オスマン朝の歴史入門というべき書籍。
    読みやすく、オスマン朝のことがさらに気になった。
    ぜひ一読いただきたい。

  • 読みやすく、分かり易い内容だった。

  • 難しいです…。
    なかなか馴染みのない、オスマントルコ。
    もっとわかりやすい、簡単なものはないかしら?
    もしくは物語だと、スルスルと頭に入ってくるのになー。
    さらに、私にあうトルコの本を探します。

  • 600年続いたオスマン帝国の栄枯盛衰が、わかりやすくまとめられている。
    最近のトルコ共和国のエルドアン大統領の強権的な言動から、オスマン帝国回帰と言われるなどの報道を見聞きしてから、ほとんど知らないオスマン帝国の歴史を知りたかったので。

  • 今までオスマン帝国の歴史をとりあげた書籍を読んだことがなかったので、新鮮であった。

  • 世界史によく出てくるけれど、今ひとつ分からなかったオスマン帝国。書店で本書を見かけて、気になって購入した。
    オスマン帝国の成り立ちから終焉まで、一通り知ることができた。

著者プロフィール

九州大学大学院人文科学研究院イスラム文明学講座准教授。博士(文学)。1974年生まれ。専門はオスマン帝国史、トルコ共和国史。主著に『イスラーム世界における王朝起源論の生成と変容――古典期オスマン帝国の系譜伝承をめぐって』(刀水書房、2014年)、『オスマン帝国――繁栄と衰亡の六〇〇年史』(中公新書、2018年)、編著に『トルコ共和国 国民の創成とその変容――アタテュルクとエルドアンのはざまで』(九州大学出版会、2019年)など。

「2020年 『歴史教育の比較史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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