佐藤栄作-戦後日本の政治指導者 (中公新書 2570)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (418ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121025708

作品紹介・あらすじ

1960年代半ばから7年を超える長期政権を誇った佐藤栄作。岸信介の実弟で、吉田茂に寵愛された佐藤は、寡黙な官僚政治家との批判が強く、ノーベル平和賞受賞には違和感の声さえ上がった。だが憲法改正を回避し、日米安保体制の安定を確立させる中、沖縄返還、日韓基本条約締結、急激な経済成長に対する社会開発政策など事績は多い。本書は、佐藤の軌跡を追いつつ、核兵器を保有せず大国の地位を獲得した戦後日本を描く。

感想・レビュー・書評

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  • いままさに考えさせられる内容、政党と官僚のありかた

    「政党と官僚の相互理解が民主政治の運営を円滑にする、 役人上がりには政党教育を与え、政党育ちには行政教育を与えて、一個の立派な政治家を育て上げたい」吉田茂

    野党としての在り方

    「国民を代表して政府を攻撃すること
    政府案に対して野党の案を持つべきこと
    自分が政権を取ったときに実行不可能なことは言ってはいけないこと」 ハロルド・ウィンストン

    ともに国民にみえない いま
    ということはやはり政治家の責任

    そもそも総理大臣以外に これはという顔が見えないのが変なのかもしれないな、 と本書を読み進めると思います。

  • 吉田の跡を継ぎ、専守防衛、経済大国たる日本を作った政治家。沖縄返還を戦後を終わらせる象徴として全てを賭けた政治家。日本の自主独立を目指した兄岸信介とは真逆の路線。戦前戦中派の岸と戦後派の佐藤。二人を分けたのは何か。

  • 7年の長期政権で佐藤は、憲法改正を回避し日米安保体制の安定を確立、沖縄返還を実現する。官僚政治家との批判が強い彼の真実を描く

  •  佐藤の評伝、というより戦後政治史のようでもある。まず前半4割ほどは佐藤政権前の時期を扱うが、政治家各個人、特に吉田茂の存在感の大きさを感じる。吉田系の池田・佐藤、反吉田の鳩山・岸と、吉田政権の後も含め、ある時期までは吉田を軸とした構図のようだ。また、佐藤の初入閣が議員になる前で官房長官だとか、起訴後に吉田首相に同行して又は後に私費でそれぞれ1か月半ずつの外遊だとか、現在とあまりに違う政治状況だ。
     佐藤政権期の記述では、日韓関係、非核三原則、小笠原・沖縄返還や核密約等をめぐる日米関係、と重要課題が多いが、不思議なほど行政府の各省庁が登場しない。筆者があえて省庁よりも政治面に力点を置いているのか、それともSオペや密使若泉敬に見られるようにこの時期は「政治主導」だったのか。他方で、7年も政権が続きながら、引退表明以外には佐藤個人の強烈な個性や信念というのも本書からは伝わってこない。
     筆者はあとがきで、佐藤政権の長期化の要因を、第1に新安保条約が期限である1970年という目標、第2に柔軟姿勢、第3に実務能力ときめ細やかさ、最後に目標の適切性、としている。また別の箇所で、1970年に安定期に入った「非核専守防衛大国」「九条―安保体制」は、佐藤政権が調和的な政治指導を心がけた結果、ともある。言い換えれば、強烈な個性や信念を出さなかったのが佐藤政権の特徴で、それ故に戦後体制は安定化した、ということだろうか。本書からはそんな気がする。

  • 東2法経図・6F開架:B1/5/2570/K

  • 沖縄返還、ノーベル平和賞

  • 昭和天皇と同じ年の佐藤栄作の生涯は日本戦後政治史そのものである。本人の日記が残っていた事もあり、リアルに内容が伝わって来ました。

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著者プロフィール

1972年生まれ。駒澤大学法学部教授,博士(政治学)

「2020年 『河井弥八日記 戦後篇5』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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