日本の品種はすごい-うまい植物をめぐる物語 (中公新書 (2572))

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 214
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121025722

作品紹介・あらすじ

より美味で、かつ丈夫、収穫量が多く、栽培しやすい品種を――。誰もが夢見る新種を生み出すため、自然と格闘する仕事が育種家だ。りんごの「ふじ」のように歴史に名を刻む有名種や、競争に敗れて頂点から転落した梨の「長十郎」など、品種改良をめぐる歴史は、育種家たちの情熱の結晶である。本書では、じゃがいもや大豆、大根、わさびなど7つの身近な食用植物を取り上げ、その進化と普及にいたるドラマを描き出す。

感想・レビュー・書評

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  • [評価]
    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    ジャガイモ、ナシ、リンゴあたりは普段から品種を気にすることはあるが、ダイズ、カブ、ダイコン、ワサビにも当然ではあるが品種があることを考えさせる内容だった。
    単純に日本がすごい事を書いている内容ではなく、近代以前から様々な品種改良が行われていたことを丁寧に解説しており、農家やブリーダーが不断の努力を重ねることで私達は美味しい野菜や果物を食べることができているのだと強く感じる内容になっていた。
    それと日本においてはリンゴよりもナシの歴史のほうが長いことには驚いた。現代においてはリンゴのほうがポピュラーな果物として認識されているのはなぜだろうか。

  • とてもドラマティックな、知らなかった世界。
    私たちの食生活は、ブリーダーさんの努力のもと成り立っているのかも。

  • 615-T
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  • 「古い在来種が消滅していくのはF1品種のせい、F1品種を商品化する育種会社のせいだという人がいる」
    ここに育種家の憤り・不満が表現されているなって思いました。
    https://seisenudoku.seesaa.net/article/492301930.html

  • ふむ

  • なかなか面白かった。

    著者はキリンビールで花の品種を開発してきた育種家。
    ところで、植物の育種家のことも、ブリーダーというそうだ。
    そんなことも、本書で知ったことだ。

    ジャガイモ、リンゴ、ナシ、大豆、カブ、大根、そしてワサビの品種開発の話が取り上げられている。
    一つ一つ、へぇ、の連続だ。

    ジャガイモは栄養繁殖性。
    種イモから育てる、クローン繁殖だ。
    だから、病気が流行ると一気に広がる恐ろしさがある。
    育種にも、安全保障的な考え方が必要だと学ぶ。
    ついでに、メイクイーンのえぐみは、ポテトグリコアルカロイドなる物質のせいで、冷蔵庫の光でも増えるそうだ。
    暮らしにも役立つ――!

    ガンマ―フィールドなるもの。
    放射線を当てて育種する施設があるそうで、そこで開発されたナシが「ゴールド二十世紀」。
    二十世紀ナシの変異種だそうだ。
    ナシは日本で独自進化した数少ない作物だという指摘も面白かった。
    梨といえば韓国だが、あれとはかなり違うのか。

    リンゴといえばふじ。
    しかし、最初はちっともうけいれられなかったらしい。
    今や世界的に栽培されている品種なのに、品種権の考えが未熟であったために、育種者は報われなかったらしい。
    こういう話はリンゴに限らず、本書で何度か出てくる。
    ついでに、サン○○というリンゴの品種名は、袋かけをしないことを意味することを知ることができて、ちょっとうれしい。

    あとは、スグキとスンキが別物であることも知った。
    漬物好きの人なら知っていて当然かもしれないことだが。

    ワサビ嫌いの若者が増えているとも書いてあり、驚いた。
    ワサビを50%以上使用した商品には「本わさび使用」、それ以下の含有量の商品には「本わさび入り」と記載されているそうだ。
    で、代わりに何が入っているかというと、ワサビダイコン(ホースラディッシュ)なのだとか。
    知らなかった。パッケージを観察してみよう。

    それにしても、ワサビは何と繊細な作物だろう。
    ほんのちょっと場所が違うだけで、育たなくなる。
    現在の代表的品種は真妻という種。
    だが、育種よりも栽培技術の開発の方が大変だそうだ。

    しかし、メリクロン苗(組織培養で増やしたクローン苗)をハウスで育てる方法が考えだされ、今や一大産業になりつつあるという。
    現在進行中の話題で、今後の展開が気になる。

  • 「昔に比べて野菜が不味くなった」とお嘆き
    の貴兄は読むべし、です。

    多くの食材は品種改良により、より美味しく
    よりたくさん、より一年中食べられるように
    なっています。

    コメの品種改良は多くの媒体で取り上げられ
    ているので、ここでは触れられていません。

    ジャガイモ、ナシ、林檎、大根、様々な食材
    を紹介しています。

    ポテトチップの原料であるジャガイモは、国
    産であることが良く知られていますが、一方
    でマクドナルドのポテトは全て米国産です。

    なぜか。

    ここに品種というものが密接に関係していま
    す。

    普段何気なく食べている野菜に対して「品種」
    というこだわりに興味を持つきっかけになる
    こと間違いなしの一冊です。

  • 【目次】(「BOOK」データベースより)
    序章 ブリーダーの特殊技能/第1章 ジャガイモー次々現れる敵との激闘の数々/第2章 ナシー日本発祥の珍しき果樹/第3章 リンゴーサムライの誇りで結実した外来植物/第4章 ダイズー縄文から日本の食文化を育んできた豆/第5章 カブー持統天皇肝いりで植えられた作物/第6章 ダイコンー遺伝学者の想像を超えた品種たち/第7章 ワサビー家康が惚れ込み世界に広がった和の辛味

  • 著者は花き園芸のスペシャリスト。
    美味しく、性質強健、収穫量が多く、栽培しやすい品種を、生み出してきた歴史を紐解く。
    じゃがいも、大豆、大根、ワサビなど7つの身近な食用植物を取り上げ、進化と普及に到る物語を描く。

  • ジャガイモ、ナシ、リンゴ、ダイズ、カブ、ダイコン、ワサビの七種を「採り上げ」て、うまい品種の歴史をわかりやすくひもとく。トリビアの宝庫で、この七種だけでなく、もっといろんな品種の話を聞いてみたいと思う。
    (ジャガイモ)
    ・マックのポテトがやたら長いのは専用品種「ラセットバーバンク」が巨大だから
    ・日本のジャガイモ出荷量は年190万トン、このうちカルビーが27万トン。マクドナルドが年間に購入するジャガイモは150万トンで全量輸入。
    ・コナフブキ、男爵に続く日本年間生産量第3位の「トヨシロ」はポテトチップス用品種、コロッケ用としては男爵が根強いがきたかむいが注目株、ポテトサラダ用にはさやか」が理想的、など使用用途別に品種が別れている
    (ナシ)
    ・栽培種の起源は野生種のニホンヤマナシ。長十郎、二十世紀、幸水が代表品種
    ・長十郎の欠点は日持ちの悪さ、黒斑病対策された(それでも弱い)二十世紀が天下をとるも、早生品種であり真夏に収穫期を迎える1989年に黒星病に対する弱さにもかかわらず「幸水」が生産量一位に。
    (リンゴ)
    ・「林檎の唄」のリンゴは紅玉、アメリカ名はジョナサン
    ・「ふじ」の前世代のナンバーワン品種は国光、
    戦前戦後にはこれと国光のほぼ2品種
    ・ふじは国光にデリシャスの花粉をかけたもの、世界ナンバーワン生産品種で一説によると世界シェア30%
    ・ジョナゴールドは母親が紅玉(ジョナサン)、父親がゴールデンデリシャス。つがるはその逆。
    (ダイズ)
    ・国産大豆の用途は豆腐53%、納豆16%、煮豆総菜10%、味噌醤油10%。大豆の自給率は7%。
    ・1kgの大豆からとれる豆腐は11丁から13丁
    ・豆腐には高タンパクで粒が大きいフクユタカ、納豆には小粒の品種が向く
    ・枝豆は豆ではなく野菜分類

    カブ、ダイコン、ワサビには品種についての面白いトピックは少なめで、野菜そのものの雑学が多いがそれはそれでおもしろい。

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著者プロフィール

品種ナビゲーター/育種家
東京都生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、キリンビールに入社。新規事業として花の育種プログラムを立ち上げ、国内外で130品種を商品化。2004年には北米の園芸産業発展に貢献した育種家に贈る「ブリーダーズカップ」の初代受賞者に世界でただひとり選ばれる。現在は、農作物・食文化・イノベーション・人材育成・健康の切り口から、様々な情報発信やセミナー等を行う。主な著書に『日本の品種はすごい うまい植物をめぐる物語』(中央公論新社)など。

「2022年 『野菜と果物 すごい品種図鑑』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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