人類と病-国際政治から見る感染症と健康格差 (中公新書 2590)

著者 :
  • 中央公論新社
3.43
  • (1)
  • (5)
  • (7)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 130
レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121025906

作品紹介・あらすじ

古くはペストやコレラ、現代でもエボラ出血熱や新型肺炎など、人類の歴史は病との闘いである。天然痘やポリオを根絶に導いた背景には、医療の進歩のみならず、国際協力の進展があった。しかし、マラリアはいまだ蔓延し、エイズ、SARS、エボラ出血熱、そして新型コロナウイルスなど、次々に新たな病が人類に襲いかかっている。喫煙や糖分のとりすぎによる生活習慣病も重い課題だ。人類の健康をめぐる苦闘の歴史をたどる。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • コロナ禍で感染症について書かれている新書を探している中で出会った一冊。
    国際保険事業を国際政治と絡めて書かれていて、興味深い内容であった。

    感染症だけでなく、生活習慣病の話題もあり面白かった。

    世界保健機関(WHO)は国際的に中立な機関だと思っていたが、本機関の設立から現在に至るまでの感染症対策を見ていくと、国際政治の力学からは切り離せないということが、本書で理解できた。

    昨今の新型コロナウイルス感染症のパンデミックにおいて、WHOは中国寄りの態度をとっている等の批判が高まっているが、財政面で加盟国に依存していることなどを考慮すればありえないことではない、と改めて認識した。
    著者の述べるように、国際政治の影響を受けることを利用していけばよい。
    (過去、マラリア対策や天然痘撲滅においては、冷戦中の米ソが互いにイニシアティブを取ろうとしたことが、これらの感染症対策に有効だった。)

    国際政治に関する本はほとんど読んだことがなかったので、新鮮な考え方に触れられて良かった。

  • 493.8||T||B10049176

  • 東2法経図・6F開架:B1/5/2590/K

  •  国際政治専攻の自分が保健医療分野の本を書くことに迷いがあった、と著者は後書きで述べる。しかしだからこそ、国際政治との関係について分かりやすい一般書となっている。馴染みのない分野なのにぐいぐい読めた。
     『新しい地政学』の中の著者の論文を読んだ時は、国際保健協力は権力政治には馴染まないか所詮いいようにされるかに過ぎない、との印象を持った。コインの両面かもしれないが、本書では印象が少し変わる。著者は国際政治の影響を受けることや国際社会の格差・多様性は認めつつも、悪いことばかりではない、ともするのだ。国際政治とうまく噛み合った時は成果を挙げる、ということなのだろう。
     日本が国際連盟を脱退した後も保健機関との関係を数年は続け、連盟の事務総長は日本を引き戻す上で保健事業を重視していたこと。ベトナム戦争で国際的信頼を失墜させた米が天然痘について、またスターリン死亡後のソ連がポリオについて、それぞれ国際協力に前向きになった時に対策が進んだこと。冷戦の最中で米がマラリア対策に熱心だったのは、結束固めと勢力拡大のために有利だとの期待も含まれていたこと。著者はこれらの例を挙げる。国連エボラ緊急対応ミッションがPKOであるUNMILと協力したのも効果があったようだ。
     医薬品へのアクセス格差については、知的財産権保護との兼ね合いや各国国内の保険制度、製薬会社などの新しいアクターの登場もある。ただ著者は、アクター間の結束や製薬会社の前向きな姿勢など、希望を持てる局面は確実に増えているとしている。
     なお、20世紀前半までの感染症とその対策の歴史を扱う第1章では、東・東南アジアの状況がほとんどなかったのが残念だった。国際協力という点では欧州にはるかに及ばなかったのは事実だろうが。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/526811

  • 感染症の世紀を生きる
    航空券連帯税の利用でエイズや結核治療へのアクセスとは知らなんだ。
    読みやすいような、ずっと論文を読んでいるような…

  • 493.8||Ta

  • 【263冊目】新型コロナが流行っているこの時期だからこそ手に取った本。きっとこういうことでもないと読まないテーマだと思ったから、逆にこれを未知の世界に出会うチャンスだと思わないと!とはいえ、似たようなテーマの本はこの時期(そしてこの後しばらくは)たくさん出版されると思われるところ、当たり外れあるだろうなと。その点、「新しい地政学」に寄稿していた筆者なら一定程度のクオリティは担保されてるかと思い、購入。あとがきで知ったが、北岡伸一氏の弟子だとのこと。

    内容は、①感染症は国際的な保健協力によって対処されてきておりいくつもの成功例があること、そして、②保健協力にはたぶんに政治的な側面があることを示しているもの。

    冒頭、チフスやペストといった有名な感染症の歴史の概観がすでに興味深い。特に、これまで公衆衛生分野に興味を持ってこなかった者としては、流行が当時の世相を作ったり、あるいはまさに現代と同じように家にこもって隔離という措置をとっていたことが興味深かった。

    また、インフルエンザが第一次世界大戦のフランス陸軍前線兵士の半分を撤退させたなど、感染症が軍事面にも影響を及ぼしてきた事例も、後に描かれるWHO外交とあわせて、感染症が安全保障に影響を及ぼす例として面白い。

    さらに、WHOが根絶に成功した天然痘やポリオと、根絶していないマラリアでは、政策面の違いだけでなく、感染経路(ヒトヒト感染か、媒介物があるか)が異なるというのも興味深い。

    あと、最後の章を割いて医薬品への「アクセス」を説明しているのも、僕的には◎。厚労省に就職しようとか考えたことすらなかったけど、薬価に対する規制が日本における医薬品へのアクセスを容易にしている面があるとは知らなかった!厚労省(医政局)ってすごいんだなー!

    薄くて読みやすいし、感染症が国際政治や安全保障の問題だという筆者の立場を踏まえれば、内閣官房国家安全保障局の職員さんとか読めばいいのに…笑

  • ペスト、コレラ、コロナ
    人類史は病との戦いだ

全12件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

詫摩佳代

1981年生まれ。2005年、東京大学法学部第3類卒業、10年、東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻国際関係論博士課程修了。博士(学術)。東京大学東洋文化研究所助教、関西外国語大学外国語学部専任講師などを経て、15年より首都大学東京法学政治学研究科准教授。著書に『国際政治のなかの国際保健事業――国際連盟保健機関から世界保健機関、ユニセフへ』(ミネルヴァ書房、2014年:安田佳代名義)。

「2020年 『人類と病』 で使われていた紹介文から引用しています。」

詫摩佳代の作品

人類と病-国際政治から見る感染症と健康格差 (中公新書 2590)を本棚に登録しているひと

ツイートする