人類と病-国際政治から見る感染症と健康格差 (中公新書 2590)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 235
レビュー : 25
  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121025906

作品紹介・あらすじ

古くはペストやコレラ、現代でもエボラ出血熱や新型肺炎など、人類の歴史は病との闘いである。天然痘やポリオを根絶に導いた背景には、医療の進歩のみならず、国際協力の進展があった。しかし、マラリアはいまだ蔓延し、エイズ、SARS、エボラ出血熱、そして新型コロナウイルスなど、次々に新たな病が人類に襲いかかっている。喫煙や糖分のとりすぎによる生活習慣病も重い課題だ。人類の健康をめぐる苦闘の歴史をたどる。

感想・レビュー・書評

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  • コロナ禍以降、感染症関連の書籍や記事をいくつか読んできた。それらの多くは、感染症の歴史を俯瞰したタテの視点を提供してくれた。本書は、グローバル化社会にあって重要な国際関係、ヨコの視点を提供してくれる。

    本書が扱うのは、ペスト、コレラ、マラリア、エイズ、新型コロナ等の感染症に加えて、タバコ問題、糖尿病等の生活習慣病、そして国力の違いがもたらす健康格差と幅が広い。本書を読むと第一次大戦後、いかに国際社会が協調して健康問題にあたってきたか、はたまた逆に、国同士のパワーバランスがいかに健康問題の解決を遅らせてしまったかがよくわかる。

    かつては英国と米国、ソ連が、今は米国と中国が世界のトッププレイヤーだろう。WHO設立の立役者である米国が自国主義を掲げて、そのWHOからの脱退を表明したことも、中国が情報を隠蔽し、国際協調を軽視して自国のプロパガンダに走ることも、百害あって一利なしであることが示される。
    実は日本も両国を笑う立場にはない。タバコ問題にあっては足を引っ張る側にあると国際的に指摘されているという。もちろんそれらの影には経済的な利得が見え隠れする。

    WHOの定義では、健康とは「身体的・精神的、社会的複利のことで、単に疾病又は病弱の存在しないことではない」とされる。すなわち、健康とは守られるべき基本的人権なのである。
    病は国境を容易に越える。コロナ関連の本では、今、本書は一番読まれるべきものかもしれない。

  • 社会学者女性やジェンダー論女性の書いた情感豊かな文章ばかり読んでいただめ、大変失礼ながら、あとがきで筆者が女性であったことを知り驚いた。

  • なんとなく知ってるような知らないような伝染病のことが一通りわかる。旅行先でけねんとなるマラリヤやチフスよく聞くけどなんのことかわからないスペイン風邪のことなど。
    地域を跨いで感染することや、そもそも戦争行為により感染地域が非常に拡大すること、皮肉にも前後して国際的な防疫の取り組みがなされること、などがよくわかる。2021年にもなって、何世紀も前と変わらないことやってるんだな、て絶望感も。

  • 21/05/02読了
    ペストに始まり生活習慣病にいたるまで、健康をめぐる国際政治の流れをまとめたもの。
    配られたカードでたたかう、てことを改めて思わされた

  • 2021年4月現在、新型コロナウイルス感染が確認され1年半が過ぎ、第4波のまっただ中。本書は、2015年に企画が始まり、著者のワークライフバランスもあり、新型コロナウイルス感染第1波の渦中に発売された。

     国際政治を専攻する筆者が、国際保険分野の専門家との交流を通じて、感染症の歴史を国際政治学の視点を加えて検証します。ペストと隔離、コレラと公衆衛生や赤十字社の設立を紐解きます。2度の世界大戦と感染症との関係では、マラリアやスペイン風邪に対する国際政治の背景を解説。そして、第二次世界大戦後のWHOの設立、天然痘の根絶、ポリオ根絶への道、一方でマラリアとの苦悩などの経過を追います。近年の、エイズの撲滅、サーズの恐怖、エボラ出血熱の教訓、そして新型コロナウイルスと国際政治を概観します。一方で、感染症と生活習慣病対策、自由と健康のせめぎ合いの中で、喫煙の問題にも踏み込みます。最後に、健康への権利をめぐる闘いとして、アクセスと注目の格差に焦点をあて、発展途上国を中心とした、未だに顧みられない熱帯病への研究、資金援助の問題提起をします。健康権、感染症、貧困と格差など、あらためて国際協調が重要であることを強調します。

  • 「人類の歴史は病との闘いだ。」

    所蔵情報
    https://keiai-media.opac.jp/opac/Holding_list?rgtn=B19679

  • 人類の歴史は病との戦いである。本書はペストやコレラなど感染症の脅威に対し、人類がどのように対峙してきたかを国際政治の視点から検証する。
    パンデミックといわれるような人類全体の脅威には、国境を越える国際保健協力が必要になる。だが、その過程で国家間の利害や思惑が作用し、これまで数々の挫折と失敗が繰り返されてきた。
    WHOの設立については、アメリカがスペイン風邪を教訓にイニシアティブを発揮して進めたが、加盟国をどうするかについてのイギリスと対立や、組織構成や本部の位置についてソ連とのせめぎ合いなど様々な駆け引きや妥協があった。
    だが、天然痘は根絶、ポリオに関しても、生ワクチン実用化に向け米ソが協力した。
    新型コロナウイルス危機で、国際的な協力の重要性があらためて再認識されている現代、WHOを中心とする国際協力の原点に立ち返ることが必要だと著者は訴える。
    このほか、いまだ根絶できないマラリアとの苦闘、エイズ、SARS、エボラ出血熱など新たな脅威、喫煙や糖分の取りすぎによる生活習慣病対策、途上国の健康への権利を巡ってトリップス協定による医薬品の特許保護に柔軟性を持たせることなど国際協力を問う様々な要素が盛り込まれている。


  • いろいろ言われるWHOだが、その設立の経緯やこれまでの取り組みについては大変参考になり印象が変わる

  • 【配架場所】 図・3F文庫・新書  中公新書 No.2590
    【OPACへのリンク】
     https://opac.lib.tut.ac.jp/opac/volume/445916

  • 感染症への対応で世界が大混乱した2020年だが、毎年それ以上の死者を出している非感染症疾患(生活習慣病)については、普段気にされることも無い。この不合理な例に示されるように、人類がどう捉えるかによって、病の位置づけが大きく異なってくるのは、盲点と感じた。またマラリアのように、根絶を断念し、共存前提とせざるを得なくなった病は多々あり、これからもある。恐れによる過剰な対応より、正しい知識(予防)を身につける習慣こそ、ニューノーマルであるべきなのだろう。世界が狭まり、感染症の拡大が不可避の状況は、必然各国の思惑が入り乱れるが、絡み合う事から生まれる連携や発展もある。悪い事ばかりとは必ずしも言い切れない。

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著者プロフィール

詫摩佳代

1981年生まれ。2005年、東京大学法学部第3類卒業、10年、東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻国際関係論博士課程修了。博士(学術)。東京大学東洋文化研究所助教、関西外国語大学外国語学部専任講師などを経て、15年より首都大学東京法学政治学研究科准教授。著書に『国際政治のなかの国際保健事業――国際連盟保健機関から世界保健機関、ユニセフへ』(ミネルヴァ書房、2014年:安田佳代名義)。

「2020年 『人類と病』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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