鉄道と政治-政友会、自民党の利益誘導から地方の自立へ (中公新書 2640)

著者 :
  • 中央公論新社
2.67
  • (0)
  • (3)
  • (7)
  • (2)
  • (3)
本棚登録 : 128
感想 : 13
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121026408

作品紹介・あらすじ

かつて鉄道は、地方に利益も文化ももたらしてくれるものだった。そのため「我田引鉄」と呼ばれようとも、政治家は血眼になって自らの票田に鉄道を、のちには新幹線を求めた。その結果、不自然な路線の形や駅の配置があちこちに見られる。だが、鉄道を無条件に求める時代は終わった。これからの鉄道整備はどうあるべきか。また、コロナ下で苦しむ鉄道会社に政治は何ができるのか。交通政策の歴史をひもとき未来を展望する

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ●は引用、その他は感想

    題名は「鉄道と政治」だが、内容は政治が主で鉄道を含む交通政策の歴史が従。一般的な我田引鉄も述べられているが分量的にはかなり少ない。

    ●道路整備と空港整備には特別会計が設置され、いずれも中期整備計画を立てて計画的に整備が進められた。それに対して鉄道は、特別会計も国の整備計画も存在しなかった。鉄道の整備は、国鉄による長期投資計画による新線建設や改良があったが、これは国鉄という一企業の内部の投資計画であった。私鉄についても同様で、各社が個別に設備投資計画を策定し、それを集計する形で民営鉄道協会が中期計画を公表した。

  • 政治学的な見地から書いた作品とは思えない。おそらく鉄道好きの人が書いた感じの作品。

  • 少しの違いだが期待してた鉄道の政治ではなかった

  • 我田引鉄と揶揄されるように鉄道は政治と結びつきやすい。そんな両者の歴史と近年の現況を概観した一冊。

    政治家が地元に鉄道を引くのは明治から昭和にかけての定番。都市伝説も含め多くの逸話がある。

    しかし、前提となる「鉄道=地域の発展」という発想が近年は崩れているという。長崎新幹線の通る佐賀県、中央リニア新幹線の通る静岡県から見ればタダの迷惑施設となっている。一方では富山県内や宇都宮市のLRT整備のような新たな公共交通のカタチも見え始めている。

    本書はそんな政治と鉄道の関係を明治から現代まで概観した一冊。国と地方の関係の変化や小選挙区制制などによる政治家の小物化(ビジョン提示から御用聞き、大衆迎合)など政治から見た視点が多い。

    鉄道マニア向けというより地方自治の教科書的な内容。

  • 東2法経図・6F開架:B1/5/2640/K

  • 政治と鉄道をテーマに記された本。「我田引鉄」と揶揄されることもあるように、政治と鉄道は切り離せないことであろうと思います。政治家は票のために鉄道を敷く、という明治以来の流れがストップしているのが、佐賀の西九州新幹線、静岡のリニアモーターカーであり、これら2つを記した冒頭2章のつかみは良いと思いました。
    3章からは明治以来の流れを記しておりますが、戦後の動きになると、なぜか政党の系譜を表す図が出てきたり、政治と鉄道が別個に語られてきて、なんだかな。と思いました。多分本書を手に取る人は、政党系譜図には興味がなく、鉄道敷設や改良、廃止に対して政治がどのような役割を担ったか、ということに興味があるのだと思います。そのように考えると、国鉄の分割民営化など、すでに数多の書籍で言及されてきたことと、政治史を合わせただけという記載は、どうかと思いました。
    国政だけではなく、都市においては都市計画として自治体が関与していますし、幹線改良については、高度成長期に地方自治体が鉄道債券を買って支えたということもあり、そういうことの方が読者のニーズに合うのではないかと思いました。

    そもそもタイトルの副題に「自民党の利益誘導から地方の自立へ」とあるのに、このタイトルが見掛け倒しになっていないかという疑問が湧きました。

  •  中央リニアの静岡工区、西九州新幹線の佐賀県内のフル規格化。
     これらの計画がなぜ頓挫しているのかを、第一部で解説する。

     その後、第二部で明治から現在に至るまでの鉄道と政治の関わりをダイジェストでまとめる。

     第三部で、成功している事例(万葉線、富山ライトレール、福井鉄道)と、これからのLRT計画(宇都宮LRT)、そして災害復興についてが書かれている。

     内容としては、第一部だけが読む価値アリ。
     あぁ、道理で工事が進まないのね、ということが分かる。

     第二部での新しい発見は、明治期では軌道化が道路整備の代替手段だったということを知った。
     当時の道路は舗装はおろか土の道で、雨のあとはぬかるみで馬車が動けなかったとある。
     当時の道の往来といえば、人か馬車。
     自動車なんてものはなかった。
     しかし、道の舗装には大量の砂利が必要となる。
     ここで、軌道化すればその軌道の幅だけを砂利で埋めれば良いので、軌道化こそが道路改良だったということになる。
     この事例が、千葉県営人車軌道だったという。

     へぇ。

  • リニア、九州新幹線…なぜ整備が迷走しているのか?「我田引鉄」の時代から高度成長、コロナ禍の鉄道経営まで、交通政策の歴史と未来

  • 686.1||Sa

全13件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1956年、東京都江戸川区生まれ。亜細亜大学講師、一般社団法人交通環境整備ネットワーク相談役、公益事業学会、日本交通学会会員。専攻・交通政策論、日本産業論。「鉄道ジャーナル」に論考を執筆するほか、著書に『鉄道会社の経営』『新幹線の歴史』『通勤電車のはなし』『鉄道と政治』(中公新書)、『JR北海道の危機』『JR九州の光と影』(イースト新書)、『鉄道会社はどう生き残るか』(PHPビジネス新書)などがある。

「2023年 『日本のローカル線 150年全史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

佐藤信之の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×