小説読解入門-『ミドルマーチ』教養講義 (中公新書 2641)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121026415

作品紹介・あらすじ

小説はいかに読めるか――。読書に正解はないかもしれない。しかし、小説世界を味わうコツは存在する。本書は、19世紀英国の地方都市を舞台としたG・エリオットの傑作長編『ミドルマーチ』を実例に、前半の「小説技法篇」で作家の用いるテクニックを解説。後半の「小説読解篇」では、歴史や宗教、科学、芸術などの〈教養〉を深める11の着眼点で、小説の愉しみ方を伝授する。ベストセラー『批評理論入門』姉妹篇。

感想・レビュー・書評

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  • 『小説読解入門』/廣野由美子インタビュー|web中公新書
    https://www.chuko.co.jp/shinsho/portal/118117.html

    小説読解入門|新書|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/shinsho/2021/04/102641.html

  • 第一部は小説技法篇として、クライマックスやポリフォニーなどの定義と、それが『ミドルマーチ』において、どのような効果を得ているかが項目立てられている。

    第二部は小説読解篇として、心理や科学、倫理といった視点で『ミドルマーチ』の主題を追っていく。

    どちらも、小説をどう読むか、またどんな切り口があるかを知るにはとても良くて。
    第一部も第二部も参考になった。

    『ミドルマーチ』を読んでいたならば、よりこの新書の面白さを味わえただろうと思うだけに、少し残念な部分でもある。

  • ミドルマーチの翻訳者が同書を題材に小説の「技法」と「読解」について解説。より深く小説を味わうための手引。

    多層的な深さと広がりを持つ世界文学の名作「ミドルマーチ」を、作家の技法と多角的な着眼点から振り返っていく。小説読解入門というタイトルだが、小説全体に対する一般論というよりも、ミドルマーチの解説、復習に特化している印象がした。もともとそこを期待して読んだので自分としては満足ではある。もちろんネタバレもあるので、ミドルマーチ全編の読了後に読むべきだろう。翻訳者自らが詳細に語るミドルマーチ論は、最高の名作文学に触れたあとの副読本として最適だ。これだけの名作なのに意外と映像化されていない本小説のドラマ版についての情報は嬉しかった。

    ミドルマーチ読了後の興奮が冷めやらぬまま上記のように書いてしまったが、本書を読み終えると、小説そのものへの読解力や感性が深まった気がするので、表題は決して誇張ではないと思う。

  • 中公新書『批評理論入門』の姉妹篇。前著ではメアリー・シェリーの「フランケンシュタイン」を取り上げていましたが、今回はジョージ・エリオットの「ミドルマーチ」を扱っています。著者が編集部から出版の話を打診されたとき、ちょうど、最終巻の翻訳作業をされていたそうです。

    「小説をいかに読むかという方法を模索していくと、結局は、文学とは何かという問題に突き当たる」と著者は言います。なぜなら、文学の機能が<教養>と関わっているからです。著者の言葉に従えば、文学には人間の生きる力の土台を形成する作用が含まれているということになります。小説は人間を描くことに主眼を置いた物語形式なので、<教養>を培ううえで、大きな力を与えてくれるのです。<教養>を身につけることによって、人は新たな文化的状態へと変容していきます。物語は世界や人間に関わる様々な領域の諸学が理論的に明らかにしようとしていることについて、具体的なモデルを提示してくれます。

    本書は、<教養>を構成している幾つかの項目を取り上げて、それぞれの観点から<人間とは何か>という問いが、小説のなかで、どのような形で追究されているかを具体的に説明してくれています。なので、小説を深く読み解いていきたいと考えている人には、学ぶことの多い一冊です。

  •  「フランケンシュタイン」を素材に論じた、中公新書前著『批評理論入門』に続く本書は、イギリスの長編大作「ミドルマーチ」を題材として、小説をいかに読むか、どのようにすれば小説の面白さ、深みを味わうことができるか、について具体的な方法を示して解き明かしてくれる。

     第Iは、小説テクストの仕組みを分析する技法的側面からのアプローチ。三人称形式における介入する全知の語り手、意識の流れ、象徴性、ポリフォニーといった技法が、小説の中でどのように使われているか、どういった効果が生じるか、例をもって示される。

     第IIは、個人の細やかな感情から社会問題まで、社会全体の広範な領域にわたって取り組んだ『ミドルマーチ』について、宗教、経済、社会、政治、歴史、倫理、教育、心理、科学、犯罪、芸術の各部門に分けて、読解例が示される。


     本書と時を同じくして、著者の訳による『ミドルマーチ』が刊行されたが、その読後直後に本書を読むことができて、多角的に面白さを堪能できたのではないかと思う。

  • これは面白い。小説読んでも、結局最後は「面白かったなあ」とか「あのシーンが印象的だった」みたいな感想で終わって、1ヶ月くらいたったら毎回大部分忘れてるパターン。

    この本は小説技法やテーマごと表現について解説されていて、非常に勉強になる。例として小説の抜粋ところどころがあって、プロの分析方法が興味深い。

    古典文学はやはり後世に残るくらいの作品だから、必ずどこかに著者のメッセージやテーマが隠されている。それを読み取れるようになりたい。

  •  前著『批評理論入門』は主に批評家視点での読み方であったが、本書では批判的な読み方ではあるが一般の読者寄りの視点での読み方の解説になっている。今回は『ミドルマーチ』が題材。具体的な例を挙げながら解説するのは前著と変わらないが、より社会や経済など広い概念からの批評技法となっている。ただ、やはり批評のための読み方であり、素直に小説を読むことを許してはくれない。
     前著、本書を通して批評的な読み方をみてきたが、どうも言い訳感が拭えない。世の中にはちゃんとした批評家もいるのかも知れないが、自分が書きたくても書けなかった小説を書いているのが悔しくて、批評家という立場を使っていちゃもんをつけて溜飲を下げているだけではないか?という疑問を払拭することは出来なかった。

  • 『小説を深く読み解くための技法、教養とは?』

    19世紀のイギリス古典『ミドルマーチ』(文庫本で約1500ページの超長編)を題材に、生きる力を培うために有用な物語の読み解き方を紹介する。今まで意識したことのない多くの視点が紹介されていて、これから小説を読むのが、もっともっと楽しくなる、、かも。

  • ミドルマーチを参考に小説の構造や読み解き方をわかりやすく解説している。
    少し前に著者訳の「ミドルマーチ」1巻目を読んでいてとても面白かったので、2巻目から先を読むのがますます楽しみです。

  • フランクル心理学の視点から、エリオット作品を解釈した箇所が素晴らしい。
    まさに『ミドルマーチ』の結びの言葉に直結している。

    フランクルは、ホモ・サピエンス的人間観(知恵ある人間)を成功ー失敗、ホモ・パチエンス(苦悩する人間)的人間観を意味の実現ー絶望の軸で捉えられるという。

    ホモ・サピエンスからホモ・パチエンスへの価値観、生き様への移行こそ『ミドルマーチ』のテーマだろう。

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著者プロフィール

廣野 由美子 (ひろの・ゆみこ):一九五八年生まれ。現在、京都大学大学院人間・環境学研究科教授。京都大学文学部(独文学専攻)卒業。神戸大学大学院文化学研究科博士課程(英文学専攻)単位取得退学。学術博士。専門はイギリス小説。著書に、『批評理論入門』(中公新書)、『小説読解入門』(中公新書)、『深読みジェイン・オースティン』(NHKブックス)、『謎解き「嵐が丘」』(松籟社)、『ミステリーの人間学』(岩波新書)など。

「2023年 『変容するシェイクスピア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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