ケアとは何か-看護・福祉で大事なこと (中公新書, 2646)
- 中央公論新社 (2021年6月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121026460
作品紹介・あらすじ
病やケガ、衰弱や死は避けて通れない。自分や親しい人が苦境に立たされたとき、私たちは「独りでは生きていけない」ことを痛感する。そうした人間の弱さを前提とした上で、生を肯定し、支える営みがケアである。本書では、看護の現象学の第一人者が、当事者やケアワーカーへの聞き取りをもとに、医療行為を超えたところで求められるケアの本質について論じる。育児や地域福祉、貧困対策のあり方にも通底する「当事者主体の支援」とは。〈実践〉のための哲学書。
感想・レビュー・書評
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非常に面白く読めた。史実的な行為がクローズアップされるが、それに至るまでのコミニュケーションが大事。意思疎通を図ろうとする努力そのものがケアである。
人が人を相手にする仕事だからこそ様々な形でのコミニュケーションがある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タイトルにある問いかけへの回答は十分に尽くされている。当事者が必要とするのは「人間として扱われているという感覚」であり、ケアに求められるのは「相手の声を聴き」「相手の位置に立って考えること」により相手の存在を肯定することであって、必ずしも治すことを試みることではないという説明が腑に落ちる。全五章に分かれてはいるが、この核となる見解はいずれの章でも一貫している。それだけに同じ内容が何度も繰り返される単調さも感じなくはなかった。
文献と聞き取りから得られたケアに関する具体例は数多く収録されている。帯に「実践の現場から学ぶ」とあるとおり、様々なケアラーの方々への聞き取りも収められてはいるが、どちらかといえば文献からの引用のほうが目立つ。本書内から窺い知れるケアにまつわる筆者の実践的な活動は、本書にはそこまで反映されていないように見える。もっと筆者が直接見知った情報を多く取り入れた内容を期待していただけに物足りなさは残った。
本書を読んでいて思い出したのは佐々木倫子の漫画、『おたんこナース』だった。「ケア」という言葉がまだそれほど定着していない頃に描かれたていたが、病院を舞台としてまさにケアが何かというテーマを模索しながらユーモアたっぷりの作品として仕上げられていたことを思い返した。本書中で紹介されているエピソードのなかでとくに印象に残ったのは、入院中の星野源が一般病棟に移って窓の外から感じる風や子どもたちの遊ぶ声をきっかけに回復していった話だった。 -
仕事柄、病や逆境と向き合う患者さんと多く接してきた。その接し方で見えてきたことの答え合わせをしたくて手にした本。
患者さんの中には、悲嘆から抜け出せないでいたり、希望を持てないでいる方も多く、声掛けにも応じず、否定が重なる。まさに人生の歯車が止まっている状態だ。ここに関わる者は、ケアラーとして役に立てず自分が不甲斐なく感じることはないだろうか。
確かに病や死は避けたくても避けられない。受け入れるしかないものである。しかし、これらの逆境は人との関わりが断たれるだけでなく、その孤独を表明することすらできなくなる辛さを伴う。
ケアラーとして、良いケアを考える時にヒントとなるのは、逆境の淵にいる人が再び自分らしさを取り戻して動き出すための触媒となることだった。
本書には、ケアラーの立ち位置や向き合い方について、相手の反応の受け取り方を大切に、自分が考えていたことよりも大変温かく、繊細に表現してくれている。 -
弱さの肯定
当事者主体であること。医療の枠組みから外れていても
素の自分になってケアをする -
ナラティブによる、ケアについて
専門職が仕事の中で語って来たことを民俗学的に集め、ケアとは何か?を専門職の語りから表現して行く。
口語体の部分もあり、はっきりとしておらず、
どうにでも解釈できる。
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ケアとは。ケアするとは。ケアされるとは。
ケアについて様々な角度から考察されています。
赤ちゃんから母親のSOSをキャッチする、のエピソードや、ピアの活動など、「そうだよねぇ」と思わず頷いてしまう場面がいくつも紹介されていました。
ソーシャルワーカーの私にとっては、頭の中で未整理だった経験が整理され、言葉が与えられていく感覚になれる本でした。 -
ケアとは何か? どうやって生きるべきか? いろいろ考えさせられました。
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ケアの在り方、声かけや傾聴の重要性を学んだ。
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研究用