高地文明―「もう一つの四大文明」の発見 (中公新書 2647)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121026477

作品紹介・あらすじ

「四大文明」は、ナイルや黄河などの大河のほとりで生まれたとされるが、はたしてこれは正しいか。これら以外にも、独自の文明が開花し、現代の私たちにも大きな影響を与えた地域があるのではないか。それが熱帯高地だ。本書はアンデス、メキシコ、チベット、エチオピアの熱帯高地に生まれ、発展してきた4つの古代文明を紹介する。驚くほど精巧な建築物、特異な環境に根ざした独特な栽培技術や家畜飼育の方法等、知られざる文明の全貌とは?

感想・レビュー・書評

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  • 高校の教科書では、文明とは四大文明(エジプト・メソポタミア・インダス・黄河)を指していて、それらは大河のほとりにあるとされている。

    しかしそうなれば、大河の近くになければ文明は生まれないということにならないだろうか。そもそも、この四大文明はどのようにして定義されたのか。

    教科書に載っているから正しい、という表面から、人間を世界スケールで考えて、高地でも文明が発達したのではないか、という奥行きに至るまでの発想と、行動力。

    常識的に物事を考えることに飽きてきた頃に読むことをお勧めします。

  • 今週の本棚:中村桂子・評 『高地文明 「もう一つの四大文明」の発見』=山本紀夫・著 | 毎日新聞(2021/7/17有料記事)
    https://mainichi.jp/articles/20210717/ddm/015/070/027000c

    【書評】『高地文明 「もう一つの四大文明」の発見』山本紀夫著 歴史の先入観を覆す洞察 - 産経ニュース(2021/8/1)
    https://www.sankei.com/article/20210801-RT7FHZ3C7ZKLTFRXVGYODUHZWM/photo/NFBSW3PUX5NSJGHNSPDQVQATBY/

    『高地文明 -「もう一つの四大文明」の発見』 山本 紀夫 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会(2021-10-24)
    https://latin-america.jp/archives/50438

    『高地文明―「もう一つの四大文明」の発見』/山本紀夫インタビュー|web中公新書(2021/08/04)
    https://www.chuko.co.jp/shinsho/portal/117737.html

    山本 紀夫 - Webcat Plus
    https://webcatplus.jp/creator/221722

    高地文明―「もう一つの四大文明」の発見 -山本紀夫 著|新書|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/shinsho/2021/06/102647.html

  • 大河がない熱帯高地でも独自の食文化や動物の家畜化、建築技術が発達し社会制度も確立されていたという。それはメキシコ中央高原、アンデス高地、チベット高原、エチオピア高原。世界史の教科書で習った「四大文明」が相対化されて、昔の常識が揺らぐのは脳の刺激になりなかなか楽しい。

    世界の食文化に影響を与えた基幹的な文明という意味では、メキシコ原産とされるトウモロコシ、アンデス原産のジャガイモは立派な文明の資格がある。さらにエチオピアのコーヒーもそうだろう。

    著者は梅棹忠夫の下で学んだ民族植物学、環境人類学の学者。書斎派とは一線を画し、フィールド・ワークをベースに持論を展開する。著者が長く研究してきたアステカは多面的な記述があり、参考になる。ジャガイモは保存がきかないはずだが、やりようはあるということが自らの体験も交えて描かられ。フィールド・ワーカーとしてのこだわりは相当なものだ。文字がなくても紐の結び方で数字を伝達する手段があったのには感心した。

    野心的な論の展開が続くが、対立する考えも紹介されて、まだ学術的には確立されていない部分もしっかり書いている。学者としての誠実さを感じる。

    人に話してみたいテーマだった。

  • 筆者はこの道数十年の研究者であり、とくにアンデスの古代文明についてフィールドワークと研究を重ねてきている。本書はその知見を存分に盛り込んだ意欲的かつ挑戦的な啓蒙書となっている。

    著者は教科書にも記述されておなじみになっている大河を中心に生まれたとされる「四大文明」に大きな疑問を呈する。要約すれば、文明が生まれる条件として「大河」がある必要があるか、むしろ野性植物をドメスティケーションし、栽培作物として定着させ得たかどうかが重要なのではないかという疑問である。著者はそうした観点から熱帯、亜熱帯の高地(具体的に本書で取り上げられている、メキシコ、アンデス、チベット、エチオピア)が文明のセンターとして重要な役割をはたしてきたことを強調し、「高地文明」論を提唱する。

    著者が繰り返し述べているように熱帯であっても高地は驚くほど過ごしやすい。確かに高山病などのリスクはあるが、それでも人間は順応してきた。標高が富士山並の3300mであるインカ帝国の首都・クスコなどもそうだ。現在でも30万人の大都市であるクスコがアンデス文明の中心地として栄えたことに多くの人が納得するだろう。

    本書を読んでいて昔読んだ中尾佐助の『栽培食物と農耕の起源』を思い出した。中尾氏のこの名著はアジア中心で佐々木高明氏らとともに提唱された「照葉樹林文化論」の基本的文献だが、山本氏の本書はそのフィールドを南米やアフリカにまで拡げていったものとしても読める。とくにアンデスにおけるイモの役割の重要性を述べた部分は圧巻である。アンデスについてはとくに2章分が割かれて詳述されている。

    しかし「四大文明」の発案者?提唱者?が騎馬民族説の江上波夫だったとは知らなかった。

  • 大河に着目した四大文明に対し、高原文明との逆説を提示する一冊。背景には農業とアンデスの素養を基盤とする著者のこだわりが…。特にイモにこだわりがあるようだ。

  • おもろいなあ、気宇壮大やなあ。梅棹先生が「やれやれ」と言った姿が目に浮かぶ。本書を読みながら常に梅棹先生や梅原猛先生の本を読んでいるときと同じような感覚にとらわれていた。歴史が書き換えられるその現場に立ち会っている気がしたのだ。何の疑いもなく世界史を勉強し、40年以上四大文明を信じてきた。後に安田喜憲先生の著書で長江が加わり、インカとかマヤとかアステカとかも気になりながら、そのつながりなど全く分からないままできた。本書も当初、気になりながら即購入はせず、その後ふと立ち読みをして、梅棹先生が押しているということをあとがきで知って読み始めた。もうこれは大正解でした。まず、熱帯は暑いところという印象が一気に崩れた。2000,3000mと高地に上がれば気温が下がるのは当然なのに、そんなことに意識が回っていなかった。さらに、マラリアなどの疫病を媒介する蚊が高地にはいないという事実。なるほど、いったん高山病を乗り越えてしまえば、非常に住みやすいのだ。そして食料になる植物の栽培。アンデスのチューニョ、エチオピアのエンセーテなどは一度味わってみたい。大河がなくても文明は起こる。十分な食糧が確保できて、人が集まれば。各高地での平行進化という発想は梅棹先生を引き継がれているのだろうなあと思いながら読んだ。もう80歳に近い著者が、メソポタミアやインダス、黄河に長江と自分の目で確かめたいとおっしゃっているのには頭が下がる。

  •  世界4大文明はいずれも大河の辺りで発生しているため、文明に大河は不可欠と思いがちであるが、マヤ文明やアンデス文明、チベット文明、エチオピア文明も植物や動物のドメスティケーションを独自に始めている。高地であるということが文明の発生に関わっているのではという見地から論じているのだが、少し退屈な議論であると思われた。

  • マヤとインカと専門家、エチオピアをもっと詳しく知りたかったな

  • 著者の提唱する高地文明について、アンデス・メキシコ・チベット・エチオピアの事例が示されている。素人目にはいささか強引にも感じられる推論も散見されるが、フィールドワークに基づく豊富な現地状況の紹介は面白い。

  • 著者の専門とするアンデスについては特にこれまでの研究成果が積み重ねられており、きわめて説得力が高い。著者のフィールドワークの賜物。

    しかし、現時点で他の地域に関してまだ情報の蓄積が十分でないように思える。例えばイネの野生祖先種が長江流域に見つからないという点についても、イネの発祥についての各種論文を読む限り、事は著者が断じるほど単純でも無いように思える。この段階で「高地文明」を世界史に敷衍するのは恣意的に思える。さらなる研究の蓄積が必要だろう。

    ただし、アンデス地域における文明の誕生とその発展についてその著述は優れた概説だと思われる

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著者プロフィール

1943年生まれ。京都大学大学院博士課程修了、農学博士。現在、国立民族学博物館教授、総合研究大学院大学併任教授。専門は民族学、民族植物学、山岳人類学。1968年よりアンデス、アマゾン、ヒマラヤ、チベット、アフリカ高地などで主として先住民による環境利用の調査研究に従事。1984〜87年にはペルー、リマ市に本部をもつ国際ポテトセンター社会科学部門客員研究員。主な著書に『インカの末裔たち』(日本放送出版協会、1992年)、『ジャガイモとインカ帝国』(東京大学出版会、2004年)、『ラテンアメリカ楽器紀行』(山川出版社、2005年)、『雲の上で暮らす——アンデス・ヒマラヤ高地民族の世界』(ナカニシヤ出版、2006年)、編著に『世界の食文化——中南米』(農産漁村文化協会、2007年)。アンデス・ヒマラヤにおける高地民族の山岳人類学的研究により今年(平成18年)度の秩父宮記念山岳賞などを受賞。

「2007年 『アンデス高地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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