南北朝時代―五胡十六国から隋の統一まで (中公新書 2667)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121026675

作品紹介・あらすじ

中国の南北朝時代とは、五胡十六国後の北魏による華北統一(439年)から隋の中華再統一(589年)までの150年を指す。北方遊牧民による北朝(北魏・東魏・西魏・北斉・北周)と漢人の貴族社会による南朝(宋・斉・梁・陳)の諸王朝が興っては滅んだ。北朝と南朝の抗争や、六鎮の乱や侯景の乱といった反乱が続き、仏教弾圧や専制君主による「暴政」も頻発した一方、漢人と遊牧民の文化が融合した転換期でもあった。激動の時代を活写する。

感想・レビュー・書評

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  •  南朝については、近時復刊された『侯景の乱始末記』や文庫化された『梁の武帝』を読んできたので、比較的馴染みを感じていたところ、この時代の通史として、手に取りやすい新書で出された『南北朝時代』。
     
     北魏の華北統一によって始まった南北朝時代。
     北朝と南朝それぞれ取り上げられているが、北魏については中途から中国化したこととか、均田制を始めたことくらいの知識しかなかったので、大変勉強になった。
     例えば、「子貫母死」制。皇帝の実母や外戚による権力掌握を防ぐため、後継者の決定後にその生母を殺すというもの。また、中国的中央官制(外朝)と北魏独自の制度である内朝官(皇帝に仕える侍臣)の併設。
     そして孝文帝により、いわゆる中国化政策が進められる。その背景事情としては、建国当初の遊牧中心の社会から、華北支配の浸透による農耕経済中心の社会へ変貌しつつあったこと、北族と漢人の通婚も増え、中国文化の受容も進んでいたことがある。具体的には洛陽遷都や礼制改革、内朝官を廃止し中国的官制に一本化などがなされた。
     著者は、孝文帝がこうした大胆な改革を実施したのは、天下統一を新たな国家目標とし、中華皇帝を頂点とする貴族制社会を目指したからだとする。

     諸改革によって北族内の格差が広がり、北辺に居住する中下層北族の不満が高まっていたところに、六鎮の乱が勃発、拡大していく。
     実力者の変転、皇帝が短期間に変わり、とうとう高歓が実権を握る東魏(都は鄴)と、宇文泰が実権を握る西魏(長安が王都)とに分裂する。東魏は、漢人貴族と軍事力を担った勲貴と呼ばれる中下層北族とのバランスの中で孝文帝路線を継承する一方、西魏は六鎮出身者を中心とする中下層出身の北族が中核であり、復古的政策がとられた。
     そして東魏→北斉に、西魏→北周に移った後、遂に北周が北斉を破り、華北を統一する。
     (このころの北斉の人口は約二千万人、北周は約一千万人で、人口も経済力も北斉が北周を上回っていたなど両国の国力の差については、初めて知った。)
     そして楊堅が禅譲を受け隋を建国、南朝の陳を滅ぼし中華を統一したところで、本書は幕を閉じる。

     260ページほどの分量で、王朝が興亡した約150年の歴史を取り上げており、主として政治史中心の記述になっている。もう少し経済的観点からの説明が欲しかったとの気持ちはあるが、やや無いものねだりか。
     ダイナミックな動きの時代をコンパクトに手際良くまとめており、概説書としてお勧めの一冊である。

     

  • まじめな本。あとがきが泣かせる。

  • 2010年代後半の最新の学説を紹介し、南北朝時代をクリアに説明


    ■北魏

    拓跋珪
    最後の代王 拓跋ジュウヨクケンの孫
    代復興の旗印として諸部大人(部族長?)により推戴

    即位後程なくして「魏王」と改称

    西晋に封じられた「代」を否定

    「魏」については諸説あるが、三国魏を追尊していないこと、姓を「曹」にしていないこと、徳運に土徳を採用したことから

    漢(火)→魏(土)

    後漢から正統性を受け継いだという意識


    ■北魏 孝文帝の改革

    5世紀末
    北魏の中国化
    言語、姓名、官制、服飾

    もともと二字以上だった北族の姓を漢人風に1-2字にした

    抜抜(ばつばつ)→長孫
    歩陸孤→陸
    丘穆陵→穆
    賀蘭→賀
    独孤→劉
    など

  • (1)北魏前期の「子貴母死」制度、北周の宣帝が創始した天元皇帝、侯景の称した宇宙大将軍のように、一時的に実施されたにすぎない制度も数多く存在。後世に与えた影響が少ないと等閑視されがちだが、遊牧民と漢人の衝突・融合のなかで生じた試行錯誤の表れとして評価することができよう…遊牧民と漢人の衝突・融合のなかで意外な化学反応。それまで遊牧世界にも中国にも存在していなかった制度。彼らの模索と苦闘のあと。時代のダイナミズムを感じさせる。(2)南北朝時代独自の制度、北周・北斉・南朝の制度・文化を受け継いで成立した隋唐、といったあたりの論点が特に興味深く感じた。各国の興亡はめまぐるしく追うのが大変だったが。

  • 南北朝時代の流れと時代背景がつかめる本。最新の研究の成果を取り入れ、旧説との違いが整理されている。特に、北魏孝文帝の改革について、単なる漢化政策ではなかったことを明らかにしている。梁の武帝の仏教政策にしても、個人的な信仰心のみならず、政策としての視点から解釈されている。政治・社会・文化と背景に踏み込んだ記述なので時代が理解しやすい。複雑な時代・状況が整理して叙述されているので南北朝時代の入り口として最適。

  • 本書を読んで一番印象に残ったのは、南北朝時代の皇帝がほほ例外なく若死に、または処刑・暗殺されている事。これは統一王朝時は勿論、春秋戦国や三国時代には見られなかった事。時代の苛烈さと遊牧民族の特異性なのか。

    昔川勝義雄の「魏晋南北朝」を読んだが、更に南北朝に絞っての通史に加え、近年の研究成果も随所に取り上げたバランスの取れた好書だと感じた。

    五代十国と並び、五胡十六国~南北朝は中国史の中でも最もマイナーな時代、高校生の時北魏から東西魏、北斉北周の北朝と宋斉梁陳の南朝を暗記した事を懐かしく思い出した。

    清風堂書店梅田店にて購入。

  • 五胡十六国の動乱から北魏により華北が統一、そして隋が中国統一を成し遂げるまでの時代をコンパクトにわかりやすくまとめた一冊です。

    https://historia-bookreport.hatenablog.jp/entry/2021/10/23/000000_1

  • 北魏の華北統一から隋の中華再統一までの150年。遊牧民による北朝と漢人貴族社会による南朝が興亡を繰り広げた激動の時代を活写。

  • 中国南北朝時代を扱った概説書。周辺諸勢力を含めた南北諸王朝のせめぎ合いを通して、異なる制度や文化が融合・伝播していく過程が分かりやすく叙述されている。この時代を知るための入口として優れた内容だと感じた。

  • 複雑な時代が、コンパクトかつ分かりやすく纏まっていた。中国の南北朝時代は三国志〜晋の統一と隋・唐の間の荒れていた時代としてしか認識が無かったが、そのミッシングピースが埋まったという意味で知的好奇心も大いに刺激された。

    全体として、最後に筆者がまとめているように、モンゴル高原(柔然、突厥)の純粋遊牧民と、北朝における遊牧民と漢人の融合体、南朝における漢人と土着勢力の結合という形で大きな勢力均衡が図られつつ、更に西のエフタルやソグド人、青海の吐谷渾、高句麗・百済・倭・林邑などの東アジア諸国とも複雑に結びついている。そうした中で、遊牧民的風習と中華制度が結びついて行った時代であったと理解。

    また、後漢末の混乱は100年弱だが、西晋の崩壊から隋の成立までの250年以上、国内の凄まじい権力闘争、国家間の紛争を全力で戦い抜いた時代であったということ。壬申の乱の巨大スケール版が頻繁に繰り返される恐ろしい権力闘争の時代。皇帝は、北魏のような長命王朝を除き、創始者から数代を経て、あっという間に禅譲させられ、間をおかず、ほぼ例外なく殺されており、親族間でも容赦がない。

    さりとて、南北朝それぞれで仏教が興隆し、南朝では歴史・文学も勃興し、ソクド人を通じたシルクロードなどの交易も盛んに行われ、北朝の制度は隋・唐にも受け継がれていく。

    南北朝時代はそんなダイナミックな時代だったということがよく理解できる名著である。

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著者プロフィール

会田大輔

1981年、東京都生まれ。2013年、明治大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(史学)。日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、現在、明治大学・東洋大学・山梨大学等非常勤講師。専攻は中国史(南北朝隋唐史)。第35回東方学会賞受賞。論文に「北周政治史与六官制」(『中国中古史研究』7、2019年:中国語)、「北周武帝の華北統一」(『魏晋南北朝史のいま』〈アジア遊学213〉、勉誠出版、2017年)、「北周天元皇帝考」(『東方学』131、2016年)、「北周侍衛考―遊牧官制との関係をめぐって―」(『東洋史研究』74‐2、2015年)、「北周司会考―六官制と覇府の関係をめぐって―」(『東洋学報』96‐4、2015年)ほか。

「2021年 『南北朝時代―五胡十六国から隋の統一まで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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