広東語の世界 香港、華南が育んだグローバル中国語 (中公新書 2808)

  • 中央公論新社 (2024年6月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (264ページ) / ISBN・EAN: 9784121028082

作品紹介・あらすじ

香港人の母語にして華南の共通語である広東語。東南アジア、欧米の華人社会も含め世界で8000万人が話す「中国語」だ。なぜ海外でかくも優勢なのか。北京語とはどう違うのか。謎を解く鍵は日本語にもある。ヤムチャ、チャーシュー、キョンシー、モウマンタイ、ブルース・リー。本書では食や映画を手がかりに、文法・会話、香港社会、華人移民、漢字、十大方言を一望し、広東語の世界を探訪。中国語とは何かを問い直す。

感想・レビュー・書評

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  • 香港、華南が育んだグローバル中国語。『広東語の世界』飯田真紀|夕遊 2025年1月23日
    https://note.com/xiyou/n/n83b60e8553ae

    <推しエンタメ本>『広東(カントン)語の世界 香港、華南が育んだグローバル中国語』飯田真紀 著 映画を例に…たまらない:東京新聞デジタル 2025年3月30日 有料会員限定記事
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/395019?rct=book

    広東語の世界|特設ページ|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/special/kantongo/

    教員紹介 :: 飯田 真紀 | 東京都立大学
    https://www.tmu.ac.jp/stafflist/data/a/19205.html

    広東語の世界 香港、華南が育んだグローバル中国語 -飯田真紀 著|中公新書|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/shinsho/2024/06/102808.html
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    (yamanedoさん)本の やまね洞から

  • 香港映画やアジアポップスに夢中になっていた90年代を思い出した。筆者はその時代の作品で話される言葉や、歴史的背景、周辺のアジア諸国の例を幅広く取り上げて、広東語を「おすすめ」してくれる。当時このような本を読んでいたら、勢いで広東語を勉強していたかも。

    本書で目からうろこだったことが二つある。
    その一つは筆者が解説する「原文不一致な中国語」だ。ここで言う中国語は広東語のことで、映画の字幕と音声が「違う」ことだ。手持ちのある輸入盤DVDで音声広東語、字幕繁体字中国語を選択すると、音声と文字が合っていない。中国語字幕は音声をすべてそのまま表すものだと思っていたので、単に制作側の不手際だと勘違いしていたが、今回ようやくその意味がわかった。広東語では話し言葉と書き言葉が「異なる」とのこと。

    もう一つは「nとl(エル)の混同」である。以前香港人の知人に「ネイホウ」と「レイホウ」はどう違うのかときいた。どちらも「こんにちは」の意味だ。するとその人は少し考えて「どちらも同じ」と答えた。今回「広東語話者がnとlを混同する」という記述を読んで、何十年も昔のことを思い出したのだった。ついでに私が話す広東語の発音が変だと笑われたことも。

    筆者が専門とする広東語だけでなく、周辺の台湾、東南アジア、さらに西欧までも比較対象としてとりあげて、知識欲をくすぐってくれた。しかし最終的には広東語の世界に話題は戻っていく。筆者の広東語愛にあふれた一冊といえよう。

  •  香港や米華人社会も含め中国語=北京語、広東語は非標準語の一方言、香港は中国の一都市、といった認識の読者も対象(著者が教える現在の学生にはかかる認識が少なくないようだ)。そのためある程度中国語や香港につきかじっていれば今更のような内容もある。「香港で北京語を話せる人が5割強だけなのは衝撃的」との記述が有るが、むしろ5割強も話せるのかと思う。
     とは言え読んでいて面白い本だ。著者は80〜90年代に香港ポップカルチャーにはまった世代だろう、映画や歌の紹介も多い。また香港での英語使用の状況、海外華人の姓から推測するルーツ、などの内容にはうなずける。英語が北京語から広東語を守る要塞、との指摘は興味深い。
     更に「広東語は話し言葉」と思っていた自分には、書面語は広東語で読める、「話す・聞く・読む・書く」全てをこなせる広東語は北京語と並ぶもう一つの標準中国語、という著者の指摘が新たな気づきだった。

  • いやいや面白かった!かつてのハリウッドで「中国人役のことば」といえば広東語だったというところも、「方言」という扱いでいいのか?というところも。
    ざっくり「方言」だという認識でいたから、心からへえ!と思った。
    ただ言語そもそもについては、いまだに「読みが広東語で…書きが北京語…うん…?じゃあ広東語は書き言葉が無……あるよねえ……???」というところから進めていない。どういうことだ…

  • 香港旅行の前に。
    とてもおもしろかった!広東語を起点として今までモヤモヤっとしてた"中国語"の曖昧な認識がすこしだけわかった気がする。
    香港の歴史と紐づいて、アイデンティティとして意味を持つ広東語の側面というのが興味深い。

  • 中国語が主専攻だった学生時代、広東語も半年ほど受講したのだが、社会人になって香港へ通うようになり、街では自分が学んだいわゆる北京語な中国語よりも英語の方が通じやすいということに衝撃を受け、もっと真面目に広東語を学んでおきたかった…という思いがこの本を読んで蘇ってきた。法則は似てても北京語とは全然違う発音も、原文不一致さも、発音も響きも面白い。広東語が共通語になれなかったのは本当に残念だが、香港アイデンティティとも言えるこの言葉は聞いていて楽しく、魅力的である。もっと広く知られて、学ぶ機会が増えるといいのにと思ってる。

  • とても興味深く読んだ。チャイナタウンにおける広東語の存在感から、どちらかというととっつきやすい香港映画における広東語のフレーズに触れることで、実はいわゆる中国語とは異なるところがわかってくる。

    自分は中国語初級者なのだが、音やアルファベットが意味をなしやすい日本語や英語と違い、声調で言葉の違いを示す中国語の曲作りはかなり難しいのでは?と思ってた部分の一部が垣間見えた気がして、広東語の方が声調が多いからこそ、中国語よりも更に元の言語をただ訳したカバーを歌うのではなく、声調の合う言葉を歌詞に使用するというのが目から鱗であった。
    また、香港の地名(駅名)も漢字表記なのにイギリス様の読みがあるところないところがあるのも興味深かった。
    もっと香港映画(に限らず)で吹替デフォルトでなく字幕で観なければと決意した。

  • 2024年最後に読み終わった一冊。
    自分にとって、新しい世界が開けた気にさせられた。

    広東語は、「中国語」なのか?
    この問いが、知れば知るほど答えにくいものになっていく。

    広東語は、広州・香港周辺で使われている言葉。
    ところが、周辺にいくつもの地方方言がある。
    例えば珠江デルタ地域西部の四つの県(四邑)である、台山・開平・新会・恩平で話されている「台山語」。
    これらをまとめて「粤(えつ)語」というらしい。

    では、広義の広東語を、広いとはいえ一地方の言語と言えるかというと、そうでもない。
    十九世紀後半から二十世紀前半、この地域の人々がアメリカを中心に各地にわたり、チャイナタウンを形成した。
    例えばアメリカでは、広東語さえできれば暮らしていけるような状態だったという。
    つまり、世界的に見るとかなりプレゼンスの高い言語だったということだ。
    私は中国語を学生時代少し学んでいたが、広東語の声調が六つあると聞いて、恐れをなし、近づかないでいた。
    が、それは何とももったいないことだったと思い知った。

    面白いと思ったのは、現在も続く広東語の「原文不一致」状態。
    広東語は書くこともできる言語なのに、文章語としては官話を使うというのだ。
    映画で日本でも有名になった「沒問題」の「沒」は、広東語では「有」という字の「月」の横二本の棒がない、独特の字を書く。
    ところが、映画でも字幕にするとき、字こそ繁体字だけれど、大陸でも流通する「沒問題」となってしまうのだそうだ。
    そして、広東語圏で育った人は、特別に普通話の教育を受けない限り、広東語の発音で漢字を読む。
    いわば日本人が漢文を日本語の音読みで、直読するような状態。

    言語の状況でいえば、香港はイギリスの統治下にあった時期があるので、英語との地位関係も面白い。
    高等教育は英語でされるため、普通話ができることより、英語を使うことの方がプライオリティがある。

    こういったこみいった話だが、映画や広東料理、ポップソングなど、身近な事例がふんだんに出てきて、楽しく読み進められる。
    一度香港に行ってみたいなあ、という気にさせられた。

  • 広東語既習者としていろんな言葉をなつかしく思いながら読んだ。
    普通話ができる身としては言わずもがなの話も多かった一方で、書き言葉としての広東語は、普通話を広東語読みで読む「著しい言文不一致の状態」というのは、めちゃくちゃ盲点で驚いた。
    香港人はそんなふうに読んでいたのか!
    さらに、筆者も普通話の文法の書き言葉中国語を広東語読みで読んでいるというからぶったまげた。
    なんというすさまじい言語オタクなんだ。
    香港人のアタマの中を紹介してくれてありがとう。


  • 北京語、広東語、上海語、潮州語など別言語とも言えるお互い話しても意味が通じない中国語の「方言」。文字に書くとほぼ同じという。日本人も含めて同じ感じを見ると同じ意味がわかり、それをそれぞれの読み方で読むことができるという「漢字」の不思議に至る。

  • ふむ

  • 広東語の歴史についての本。同じ内容を繰り返したり話が脱線したりする部分があり、もう少しまとめてほしかった。

  • 序章 広東語はどこで話されているか/第1章 広東語はどのような言葉か/第2章 話し言葉ー香港の標準語/第3章 書き言葉ー言文不一致な中国語/第4章 英語、北京語との共存、競争/第5章 その他の中国語方言/終章 広東語から問い直す「中国語」「方言」

  • 中国の方言は方言じゃなくて単独の言語として扱うべきものというのはそうだなと思うのですが、その中でも広東語が中国の標準語として扱うべき言語というのは状況を知らなかったので初めて知った。

  • 香港や広州で使われている広東語を取り上げ、北京語との違いや近隣の方言と関係を述べる。文章語では北京語と同様だが、香港や広州の人は広東語の発音で文字を読んでいるという。日本語での方言とは中国語の方言はあまりにも違いすぎるようだ。まったく別言語のようだ。それでも、文章語は北京語と同じだという。

  • 北京語初級レベル、広東語学習中の状態で読みました。
    平仄は広東語のほうがわかりやすいなど興味深く面白かったです。

  • 映画などの文化から香港に興味を持ちました。広東語を学ぶにあたり、本書を先に読んで良かったです。広東語と北京語の立ち位置が何となく分かりました。そして、きっと北京語を学ぶ方が便利なんだろうけど、広東語の繁体字に惹かれるのと、香港のエンタメを楽しめるので広東語の方を勉強してみようと思います。

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000071549

  • 広東語は中国語なのか? 謎を解く鍵は、意外にも日本語にある。華南発祥のグローバル中国語の正体を読み解く。

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著者プロフィール

北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授。
東京外国語大学外国語学部中国語学科卒業。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了(2005年)。博士(文学)。2000年から約2年間、香港中文大学中国文化研究所にて客員研究助手を務めた。2006年より現職。

主な著書に『NHKテレビ アジア語楽紀行—旅する広東語』(2006年、日本放送出版協会)、『ニューエクスプレス  広東語』(2010年、白水社)、「共通語と方言—バイリンガリズム」『中国文化事典』(2017年、丸善出版)などがある。

「2019年 『広東語文末助詞の言語横断的研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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