マーサ・ヌスバウム - 人間性涵養の哲学 (中公選書)

著者 :
  • 中央公論新社
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レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121100177

作品紹介・あらすじ

正義論で名高いジョン・ロールズやマイケル・サンデルと並び世界的な知名度を持つ哲学者ヌスバウム。その思想分野は、西洋古典研究、国際開発論、リベラリズム論、フェミニズム論など多岐にわたる。本書は現代を生きる彼女の半生と思想の特徴を、キーワードをもとに明らかにし、類例なきその魅力を伝える。

感想・レビュー・書評

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  •  マーサ・ヌスバウムは、日本ではまだ知名度が低いものの、世界的にはジョン・ロールズやマイケル・サンデルと並ぶ評価を受けている重要な哲学者だ。
     その仕事は古典学・哲学・法哲学・倫理学・フェミニズムと多岐にわたり、現代アメリカを代表する良心的知識人の1人と目されている。

     本書は、ヌスバウムの思想と人物像を概説したもの。
     2000年代後半以降、ヌスバウムの主著が相次いで邦訳され、日本でも少しずつ共鳴の輪が広がるなか、時宜にかなった刊行といえる。
     ヌスバウム自身を“主人公”にしたこのような本は、世界初だという。

     別途書評を書くのでここではくわしく紹介できないが、過不足ない上出来の概説書だと思った。
      
     生い立ちからの歩みをたどったバイオグラフィー、本人へのインタビューなど、多角的な内容。
     ヌスバウムの広範な仕事を3つの軸――新アリストテレス主義、政治的リベラリズム、コスモポリタニズム――に沿って腑分けし、それぞれの特質を浮き彫りにする手際も鮮やかだ。

     本書は題材からして、筆の赴くままに書いたらすごく難解になってしまうたぐいの本だろう。
     しかし、著者は一般書であることを十分に意識し、わかりやすい内容にする工夫を幾重にも凝らしている。その点に好感を覚えた。

     たとえば、ヌスバウムが現在教鞭をとるシカゴ大学について、「映画『恋人たちの予感』でサリーとハリーが卒業した大学である」と紹介するなど、よく知られた映画の喩えが随所に用いられる。
     また、「現代リベラリズムの潮流」「現代フェミニズムの潮流」などの項目をもうけ、ヌスバウムの思想を理解するための基本事項を初歩の初歩から解説している。こういう配慮は初学者にはありがたい。

  • ヌスバウム、前から名前だけは知っていて、思想内容を知らずに来たのですが、この本はコンパクトに分かりやすく伝えていてありがたい。

  • ヌスバウムに肩入れしすぎているのではないかと面食らうところがなくはないが、それは読者が割り引けばよいことだし、読みやすい本ではあった。特にフェミニズムのところが印象に残った。

  • 神島裕子『マーサ・ヌスバウム 人間性涵養の哲学』中公選書、読了。アリストテレス研究からスタートし、貧困や女性などへの差別へ視野を広げた気鋭の哲学者ヌスバウム。本書は彼女の半生と思想(ケイパビリティ・アプローチ/政治哲学/フェミニズム/新しいコスモポリタニズム)を明らかにする。

    本書の白眉は第四章「書評家ヌスバウム フェミニズム文脈のなかで」。国際関係論から人間へ注目する中でのバトラー批判とスピヴァクとのやりとりだ。彼女の知的誠実さをかいま見ると共に、リベラリズム再構築への真摯さが感じられる。

    巻末にはインタビューを収録。「私は哲学に人生の多くを費やしていますが、私の人生における愛、友情、美しさ、音楽といったものすべてが私の哲学に反映されているのです」。人柄を知る上でも貴重な資料。本書は格好の水先案内人。

    (帯)「人生の豊かさを取り戻す 現代を代表する哲学者は、人間と社会をどう捉えているのか。新アリストテレス主義、政治的リベラリズム、コスモポリタニズムという三つの軸からその思想の内実に迫る」

    http://www.chuko.co.jp/zenshu/2013/09/110017.html

  • ヌスバウムみたいに幅広い人を評論するのはむずかしい。対ポストモダンは切っ先弛めず紹介してほしかった。

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著者プロフィール

1971年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程(国際社会学専攻)修了。中央大学商学部准教授などを経て、現在、立命館大学総合心理学部教授。博士(学術)。著書に『マーサ・ヌスバウム』(中央公論新社、2013)、『ポスト・ロールズの正義論』(ミネルヴァ書房、2015)、訳書に『正義論 改訂版』(ジョン・ロールズ著、紀伊國屋書店、2010、共訳)ほか

「2018年 『正義とは何か 現代政治哲学の6つの視点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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