- Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121100306
作品紹介・あらすじ
日本において「近代仏教」はどのように形成され、展開していったのか。それは伝統と近代・現代の問題を考えるときに重要な観点を内在している。本書は清沢満之、倉田百三、田中智学、鈴木大拙など近代仏教を担った代表的知識人の営為に光をあて、思想という面から見ていく。また本書は、浄土教、日蓮系、禅という三つの系統について、思想動向を取り上げるなど記述は整理的であり、仏教研究の複雑な様相も丹念に説明していく。さらに本書では、「大乗」という問題に焦点を当てる章も設けている。
戦争を含めた時代状況との関連や実践の問題にも筆はおよび、近代仏教の歴史的展開と、現在に投げかける諸問題を一冊のうちに説き示している。日本仏教学の第一人者による、まさしく充実の名編といえよう。
感想・レビュー・書評
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これまで日本では、あまりにも宗派の枠内でのみ語られ、いわば解釈で水膨れになっていた仏教=ブッダの教えが、いかに「近代仏教」として再構築されたかを示している。
本書が優れているのは、宗派(教団)の中だけの視点ではなく、たとえばキリスト教など外部からの視点を取り込むことによって、日本の仏教(界)が、いかに入り組んだ複雑な歴史と構造を以て現代まで続いてきたのかを示しているところです。
特に「大乗」や「菩薩」については、単に仏教としての影響を遙かに越えて、日本の近代、政治や文化に大きな影響を与えてきたのだと、本書を通読して改めて感じます。日本のリベラル層は、日本の思想史上の古層ともいえるのは仏教であると再認識し、科学一辺倒ではなく、少なくとも知識としてでも仏教や歴史などのリベラルアーツを学ぶべきでしょう。
僕の興味は、仏教やキリスト教という宗教そのものではなく、宗教的なるものがどのような形で人間の魂・霊魂に影響を与えているのか理解したいというところにあり、本書の見立ては私自身の考えと近く、ためになりました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本近代の仏教思想にかんする著者の論考を収録している本です。
本書であつかわれている主題は多岐にわたっており、近代における親鸞のリヴァイヴァルに大きな役割を果たした清沢満之、曾我量深、倉田百三のほか、田中智学、鈴木大拙などがとりあげられています。さらに、近代のアカデミズムにおける仏教研究の歩みを概観した論考なども収録されています。
個人的には、家永三郎の『日本思想史に於ける否定の論理』の意義を論じた論文が、興味深く感じました。鎌倉新仏教を近代的な視点から解釈しようとする家永の立場は、本書でも述べられているように黒田俊雄の「顕密体制論」の批判を受けるものであり、さらに著者も指摘するように現世否定と社会的実践との関係が明瞭ではない憾みがあるものですが、日本の近代以降における仏教思想のなかで「否定」がどのようにあつかわれてきたのかということを考えるうえで、ヒントになるような発想が示されているように思います。たとえば、やはり近代の仏教思想を代表する思想家の鈴木大拙が、禅と浄土教によって「日本的霊性」がめざめたと述べていたことも、近代思想における「否定」の論理という主題のもとで考えなおされるべきなのではないかという気がします。 -
東2法経図・6F開架:182.1A/Su16s//K
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思想と実践の両面から、代表的知識人の営為に光をあて、また、浄土、日蓮、禅の思想動向を整理。「霊性」「大乗」にも筆を及ばせる
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18/02/24。