落下傘学長奮闘記: 大学法人化の現場から (中公新書ラクレ 310)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121503107

作品紹介・あらすじ

40年間研究だけをしてきた基礎医学者が、突然、地方国立大学の学長に。法人化の混乱、抵抗する教員、文科省の圧力、予算削減のなかで奮闘する落下傘学長。データを駆使した現場報告。

感想・レビュー・書評

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  • 2001年~2008年まで、岐阜大学の学長を務められた黒木登志夫さんの著書。
    2004年4月1日に岐阜大学(国立大学)が法人化される前後の変化を綴る。

  • ノーベル賞の対象となった研究には2種類がある。誰もが重要だと思っている課題を解決した研究と、誰も重要だと認識していない時一人研究を進め、後には重要性が発見される研究。

  • 日本経済新聞2月18日『リーダーの本棚』で紹介
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99127835

  • 2009年刊行。2004年、国立大学独立行政法人化がなった。その前後に中規模地方総合大学の学長を勤めた著者が、法人化による変化、教員、大学病院の問題点、旧帝大との差などをまとめた体験記。国の教育予算が基礎教育を含めて世界的に見て少ないにもかかわらず、小泉改革にて予算をさらに減らされていく過程を暗い気持ちになりながら読み進めた。大学の多様性が豊かな果実(技術・文化)をもたらすとの著者の主張は同感。他方、大学病院の危機的財務状況とその実態を知らない財務省に愕然(第7章)。大学事務局の実相も興味深い(第8章)。

  • 岐阜大学の元学長が、学内改革に奮闘する様子が描かれている1冊。黒木先生の自伝。地方大学の改革にあたって、学内でどのような調整が行われるのか知るきっかけになった。

  • 某先生から読むように渡された本.学長は大変だなと思います.

  •  2001から8年まで法人化を挟んで岐阜大学の学長を2期務めた黒木学長の回想記。理系の一流の基礎医学者であるためか、文章が簡潔で読みやすく、理解しやすい。加えてユーモアのセンスもあり、おもしろかった。
    本書によって、例えば遠山プランにおける国公私「トップ30」の30という数字が、21世紀COE,留学生30万人計画など多くの高等教育政策に現れていることなど遠山プラン、運営費交付金の構造、移動官職、教育GPといった国立大学法人における重要事項について、初めて少し理解することができた。

    印象に残った箇所は以下のとおり
    p.95
    法人化という全面的なシステム改革により、国立大学は、文科省の一地方組織ではなく、独立した組織として、学長と役員会が最終責任を負って運営する企業型組織になった。
    p.113
    わが国の国立大学の授業料は、世界の中では群を抜いて高額である。
    ~その上、入学金をとっているのは日本だけである。
    p.254
    移動官職であるのですから移動閑職ではないはずです。
    p.311
    すべてに合意形成を求め、手続き論を重視し、迅速に進めようとすると拙速と非難する。それが大学という文化である。
    p.347
    正論をいったから、すべてが通るなどと思っているわけではありません。しかし、言わないことには、何も進まないのは確かです。

     国立大学法人職員にとって、法人化以降の問題を捉えることができる良書だと考える。

  • [ 内容 ]
    40年間研究だけをしてきた基礎医学者が、突然、地方国立大学の学長に。
    法人化の混乱、抵抗する教員、文科省の圧力、予算削減のなかで奮闘する落下傘学長。
    データを駆使した現場報告。

    [ 目次 ]
    落下傘降下
    遠山プラン―高等教育のグランド・デザイン
    国立大学法人化―国立大学包囲網
    法人化で何が変わったか1―システム改革
    法人化で何が変わったか2―削られる予算
    岐阜大学の試み―思いつき学長
    教育に軸足を置く―大学の原点
    附属病院の危機―破綻のスパイラル
    事務局―支配する組織から支持する組織へ
    拡大する大学間格差―東大一人勝ち
    学長の生活日誌―忙中閑あり

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 『落下傘学長奮闘記―大学法人化の現場から』(黒木登志夫、2009年、中公新書ラクレ)

    国立大学が法人化される直前に岐阜大学の学長になった黒木さんの7年間の学長生活の回顧録。と同時に、日本の高等教育や国立大学法人が抱える問題点を、学長の立場から現実的に論じている点が面白い。

    個人的には、競争的資金の配分についての旧帝大と地方国立大の格差の話が一番参考になった。

    (2010年12月30日 大学院生)

  • 独立法人化前後の7年間を落下傘学長として体験した筆者の記録。純粋に、現在の国立大学の様子がわかって大いに参考になりました。国立大学に広い意味で携わる人には必読の書です

    それにしても「移動官職」という人種には驚きました。こんな時代にそぐわない人事制度が残っているんですね。いやあさすがは公務員という感じです

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著者プロフィール

黒木登志夫

1936年、東京生まれ。東北大学医学部卒業。専門はがん細胞、発がんのメカニズム。1961から2001年にかけて、3カ国5つの研究所でがんの基礎研究をおこなう(東北大学加齢医学研究所、東京大学医科学研究所、ウイスコンシン大学、WHO国際がん研究機関、昭和大学)。英語で執筆した専門論文は300編以上。その後、日本癌学会会長(2000年)、岐阜大学学長(2001-08年)、日本学術振興会学術システム研究センター副所長(2008-12年)を経て、日本学術振興会学術システム研究センター顧問。2011年、生命科学全般に対する多大な貢献によって瑞宝重光章を受章。著書に、『がん遺伝子の発見』(1996年)、『健康・老化・寿命』(2007年)、『知的文章とプレゼンテーション』(2011年)、『iPS細胞』(2015年)、『研究不正』(2016年、いずれも中公新書)ほか多数。

「2022年 『変異ウイルスとの闘い――コロナ治療薬とワクチン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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