- Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121503541
感想・レビュー・書評
-
○目次
はじめに
第一章:“被爆二世”として生きる
(1)祈り ~歌手・佐々木祐滋さん
(2)「イラクのヒロシマ」で原爆展
~ビデオジャーナリスト・玉木英子さん
(3)新宿ジェノサイド
~NPO法人「もやい」・稲葉剛さん
(4)いのちの大切さ
~産婦人科医・河野美代子さん
(5)子どもに感動を
~パントマイム・村田美穂さん
(6)“カンちゃん”が結ぶ「父と子と世界」
~フリーライター・吉田みちおさん
(7)被爆二世の肖像
~写真家・吉田敬三さん
第二章:被爆二世問題とは
(1)被爆者と被爆二世
(2)「第五の被爆者」への遺伝的影響
第三章:アジアとの連携
(1)韓国で原爆写真展
~二世教職員の会・平野伸人さん
(2)韓国の被爆二世たち
第四章:こころのヒバクシャたち
(1)“微力だけど無力じゃない” ~高校生平和大使
(2)ヒロシマ・セミパラチンスク・プロジェクト
(3)こころのヒバクシャ
~証言の会・鎌田定夫さん
(4)被爆二世を生きるということ
おわりに
個人的に被爆三世として、被爆二世について書かれた本ということで興味が出て読んでみた。
著者が多くの被爆者・被爆二世と関わる中で、「自然人として被爆二世である人びと」と「自らの意志で主体的に被爆二世を生きる人びと」の二種類あることについて触れられた。
大抵の人は被爆二世・被爆三世として生まれ、祖父母や両親から被爆体験を聞きつつも、日々の生活や仕事に忙殺されて、特に意識することはない。
ただ、改めて被爆二世問題を考えてみると社会的に様々な問題が浮き彫りとなってくる。国内の被爆者においては平成6年に被爆者援護法が制定されたとはいえ、被爆者が受けた社会的な差別は心の傷として残るし、被爆二世の遺伝的影響に関する問題も政府見解では科学的に認められないとする方向で動いている。
これは本書の第一章でホームレス支援の稲葉さんの活動の箇所でも触れられる弱者切り捨て政策に近いものではないか。
また、さらに深刻なのが政府や国民の多くが用いる「唯一の被爆国」。広島・長崎でも約一割の外国出身の方が原爆の犠牲にあっている。また、生き残った外国籍の方の中には、例えば在韓被爆者などは韓国政府・日本政府からも見放され、同じ韓国人からは親日的だとして差別を受けてきた。
また昨今の核の抑止力論的な机上の空論がまことしやかに広がりを見せている。
著者は、被爆者・被爆二世だけでなく、それ以外の人々でも自らの身の回りの問題(例えば差別、貧困、いじめetc)に置き換えていくことで、自らの文脈で核兵器の脅威や悲惨さを伝えていくことができるという。
被爆二世問題を通して、改めて核兵器を作り持つことの根本的な矛盾や「国家の論理」を押し通そうとする国家というシステムの傲慢さ、差別や貧困をのさばらせる社会の歪みをクローズアップさせてくれる一冊である。詳細をみるコメント0件をすべて表示