若者と労働 「入社」の仕組みから解きほぐす (中公新書ラクレ)

  • 中央公論新社 (2013年8月10日発売)
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感想 : 53
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  • 本 ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121504654

感想・レビュー・書評

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  • ◯労働分野の勉強はほとんどしていない自分にとっては、面白いように新しい知見を得られる一冊であった。
    ◯特に印象的だったのは、日本の若者の就職の実態と、労働法制がずれているという点が面白い。なんのための法令だか分からなくなる。これではブラック企業や過労がなくならないのもなんとなく頷ける。(この辺りは経済界と政界の折り合いがもたらした悲劇なのかもしれないが)
    ◯また、日本の就活が、採用基準の意味不明な人間性を見ているのは何故かということにも、一定の納得が得られた。確かに、現在の日本の大学では就職のためのスキルを得られない文系大学や講義が多すぎる気がする。
    ◯この辺りはそれこそ「革命」でも起きない限りは中々変わらないのかもしれないが、知ってこそできることはあるので、ぜひ大学生にこそこの本は読まれるべきだなと思う。


  • 大変勉強なる本でした。
    現在の就活というイベントのスタートや日本の雇用制度の問題点。
    そして、その問題点がグローバル化とともにどのように変化しているのかなどが全て分かります。

  • とてもおもしろかったです。現代の日本の労働状況をときほぐして説明してくれる本でした。日本の、職業に直結しない教育の度合いというか、卒業して就職へ臨む若いひとたちの「これまでの教育が職業に役立つかどうか」の意識というかは、先進国で最下位だったそうです。義務教育を受けても、それがその後の就職にはつながらないと日本人は考えているし、実際そうなのでした。そんな日本の労働システム。本書では、メンバーシップ型と読んでいます。年功序列だとか、新卒一斉就職だとか、そしてそれらとマッチングした企業内のシステムだとか、特殊なんですね。欧米に限らず、中国を含むアジアの先進国にも、日本のようなメンバーシップ労働システムはないそうです。日本では、仕事のスキルのない新卒者をいっせいに採用して、社内で少しずつ教育して使いものになる労働者に育てていきます。一方で、欧米型では、スキルのない若者は採用されません。欠員がでたときに、その仕事ができる人を公募して、若者にしろ中年にしろそこは構わず、持っているスキルで採用の有無を判断するそうです。その結果、若者たちが就職できないという問題を生みますが、公的な職業教育制度があったりして、その問題に対処しているそうです。もともと「人」を大事にする思想ではじまったメンバーシップ型労働システムなんだそうだけれど、法律など建前としては欧米的なジョブ型労働システムをよしとしているようです。ハローワークでの職探し、職業訓練、などは「仕事」に「人」をはりつけるジョブ型の考え。日本的なのは、「人」に「仕事」をはりつけるメンバーシップ型の考え。そして、いまや学生たちは就活と職探しを別々に考えているらしい。職探しは就活より下とみていて、なんとしても新卒で就職しようと躍起になる。給料もそんなに違わなくて、長い時間かけて取り組んだとしてどこがブラックかもわからなくても、既卒で職探しはしたくないみたいなんですよね。

  • メンバーシップ型・ジョブ型の比較
    日本の労働社会の歴史
    大学など教育機関と就職の関係
    新たな労働型とは?

    働くことに関しての著作では、詳しくまとまっている部類。
    労働者ー正社員、非正規、パート、アルバイト

    日本の社会構造を上手く描いているので、働くそのものを考えたい人にはうってつけ。
    大手企業がベアを上げ、正社員・限定型社員(転勤や他長時間労働がない/少ない)が増えている。

    この波に乗れる人達がいる一方で、ブラック企業に搾取され、心身共に不調になっている人も多い。
    働き手が「どのような立ち位置でどのような視点を持つか」は今後も時代の状況が色濃く映っていく気がする。

  • 日本の労働形態であるメンバーシップ型と欧米の労働形態であるジョブ型の違いと、それがなぜ違うのか、その違いにより起きている問題は何かについて理解できる本。
    特に勉強になった点は日本のメンバーシップ型が形成されてきた過程について、明治時代から現在にかけてどのような雇用形態をとってきた結果なのか、その歴史を理解することができること。また、今のメンバーシップ型からジョブ型に変わろうとしている日本、その社会的背景なども理解できる点で、今後の日本の雇用問題を考えるベースの知識は身につけられると思う。

  • 配架場所・貸出状況はこちらからご確認ください。
    https://www.cku.ac.jp/CARIN/CARINOPACLINK.HTM?AL=01357235

  • 開発目標8:働きがいも経済成長も
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac.lib.setsunan.ac.jp/iwjs0021op2/BB99526038

  • 伝聞に頼ってゐる
     メンバーシップ型とジョブ型とに大別してみると、なるほど日本と海外ではかなり異ることがわかる。
     この本は日本のメンバーシップ型の矛盾点を中心に論じてゐる。読むとジョブ型のほうがまともだと思ってしまふが、ジョブ型にも若者雇用問題といふ弱点があり、著者はジョブ型正社員をいふ理念を提唱してゐる。新卒一括採用や人間力採用に由来する歪みが、刊行から10年経った2023年になっても感じられた。
     しかし伝聞だけの推測と思はれる部分もあり、そこは蓋然性が低い。また、この本は2013年の刊行だから、この10年で何か変ったことも多いのではないか。

  • 今年読んだ中で最高ちゃうかな。どうしてうちの大学に不本意の学生が来るのかよくわかった!

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著者プロフィール

1958年大阪府生まれ。東京大学法学部卒業、労働省入省、欧州連合日本政府代表部一等書記官、東京大学客員教授、政策研究大学院大学教授を経て、現在は労働政策研究・研修機構労使関係・労使コミュニケーション部門統括研究員。主な著書・訳書に、『日本の雇用と労働法』(日経文庫、2011年)、『新しい労働社会――雇用システムの再構築へ』(岩波新書、2009年)、『労働法政策』(ミネルヴァ書房、2004年)、『EU労働法形成過程の分析』(1)(2)(東京大学大学院法学政治学研究科附属比較法政国際センター、2005年)、『ヨーロッパ労働法』(監訳、ロジェ・ブランパン著、信山社、2003年)、『日本の労働市場改革――OECDアクティベーション政策レビュー:日本』(翻訳、OECD編著、明石書店、2011年)、『日本の若者と雇用――OECD若年者雇用レビュー:日本』(監訳、OECD編著、明石書店、2010年)、『世界の高齢化と雇用政策――エイジ・フレンドリーな政策による就業機会の拡大に向けて』(翻訳、OECD編著、明石書店、2006年)ほか。

「2011年 『世界の若者と雇用』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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