独裁の宴 - 世界の歪みを読み解く (中公新書ラクレ 607)
- 中央公論新社 (2017年12月15日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121506078
作品紹介・あらすじ
トランプと独裁者・金正恩は「言葉の戦争」を繰り広げ、東アジアは危険水域に――。
中国はどう出るのか。インテリジェンスの巨匠はこう見る。
トランプ、金正恩、習近平…… 乱世の権力者に告ぐ!
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米朝衝突の危機に加え、帝国主義化する中露の指導者は独裁色を強めつつある。
グローバリゼーションの進展で、経済も政治も各段にスピードが早くなり、国家の意思決定はますます迅速さが求められるようになった。手間もコストもかかる民主主義への市民のいらだちは募るばかりだ。
しかし、だからといって、民主主義は捨てられない。こんな乱世のリーダーはどうあるべきなのか……。
感想・レビュー・書評
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読みながら、メモ書きしたくなる程、示唆に溢れる対談。今回もかなり踏み込んだ内容で、私がとりわけ興味を持ったのは核やミサイルに関する内容。オシント(公開情報諜報)を分析でき、コリント(協力諜報)を持つ二人だからこそ、他には無い著作に仕上がっている。
北朝鮮のICBM(大陸間弾道ミサイル)開発は、ウクライナからそのエンジンが流出したとの見方が主流。ウクライナは、自国の軍事を統制しきれていない。その国をツールとして活用しようとするロシアですら、しかし、北朝鮮をコントロールできていない。一方でアメリカは、自国に届くICBMの破棄さえ、北朝鮮に飲ませれば、米朝関係正常化もあり得るか、など。佐藤優の推測を含むが、恐ろしいシナリオだ。
一方で北朝鮮のミサイル発射に対し、日本の上空を飛来した事を、防衛省は「領空」飛翔と発言。領空の定義は高度100キロメートル程度で、550キロメートルのミサイルは領空侵犯ではない。宇宙空間には、他国の衛星も飛び交っている。今の日本は、外務省、防衛省ともに、外交官試験廃止以降の国際法理解力が弱まっているらしい。
こうした複雑化した情報に日本政府は対峙していけるのだろうか。インテリジェンスの凄さを改めて感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今回の佐藤さんのお相手、手嶋龍一さんは、元NHK記者で今は外交ジャーナリスト。
彼の書いた『ウルトラ・ダラー』は日本初のインテリジェンス小説です、と佐藤さん。
この本は昨年暮れに発行されたので、10月の衆議院議員選挙の話が面白かったです。
偉そうに言うことじゃないけど、私、久しぶりに投票行きました。
そのくらい関心があったのです、珍しく。
そしてこの本にタイムリーな話題もあったので、ここにうつしてしまおう。
手嶋「Jアラートを広範に鳴らして住民に避難まで促すのは、まさしく北朝鮮の術策に嵌ることになってしまうという事実です」
佐藤「まったくその通り。これはインテリジェンスの世界で、特に中東、イスラエルあたりに触れた人間ならば分かるのですけど、陽動作戦の肝は「心理戦」「経済戦」にあり、なのです。構図を見れば、おっしゃるように、まんまとそういう敵の術中に嵌っている。
「北のミサイルに日本が震えあがっている」という印象は、彼らを利するだけです。国際的にもマイナスのメッセージしか発信しないでしょう。まさに国益を損ねる行為だと、私は思うのですが。」
手嶋「北朝鮮がミサイル発射や核実験を繰り返した17年の半ばから秋にかけて、安倍政権は森友学園、加計学園問題で大揺れでした。他にも様々な議員の不祥事も相まって、内閣支持率は危険水域と言われる30%を割り込み、7月の東京都議選で、自民党は歴史的な敗北を喫してしまいました。その状況下、政権の唯一の“頼みの綱”が「北の脅威」であったことは、否定のしようがない。秋の突然の解散・総選挙でも、安倍政権は「国難突破」を大義名分に掲げ、北朝鮮危機への備えを担えるのは自民党政権だと訴えて、勝利を手にしました。」
佐藤「そう、「この国を、守り抜く」と、キャンペーンを張りました。」
最近話題の森友書き換え問題で、安倍さんはどうなるのか?という話で持ち切りです。
私のようなものは、「外交的に安倍さんがやめたら困るでしょう」と思ってしまうのです。
いよいよ米朝首脳会議が実現しそうですので、
ここで安倍さんにも大活躍していただき
拉致問題が一気に解決&終焉となることを切望します。 -
古いけど、今を予見してる。先を見つめる視線、インテリジェンス、大事です。
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なんかこの2人定期的に出してるよね、この手の本
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いつも刺激的
そして古い出版のものを読んでも古さを感じさせない -
インテリジェンスから程遠い世界で生きている身からすると毎回ただただ驚くしかないのですが…今回シリーズでは、外交世界での2つの発明品「one chine」と「非核三原則」がおもしろかった。
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東2法経図・6F開架 B1/5A/607/K
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トランプと金正恩は「言葉の戦争」を繰り広げ、東アジアは危険な水域に――。日本は北の核・ミサイル危機にどう対処するべきか。
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このお二方の対談はお互い違うスタイルの知識人が相乗効果をもたらしどちらが聞き手ということにならず本当に対談になっておりワクワクしながら怖い話を読むというのがスタイルです。佐藤氏はその宗教方面に非常に造詣が深く、他のジャーナリストとは違う観点から世界情勢を見るからこそ見えにくいものが見えてくるのだろう。上梓が半年近く前ということもあり、北朝鮮の核廃棄やイスラエルの米大使館エルサレム移転など文中では無いとされる事が実際に起こっている。尤も三ヶ月前の対談ならすべて織り込み済みなのだろう。ここが書籍の限界なのか。
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【極点化する世界で】「インテリジェンス」という言葉を巷間に広めるきっかけを作った2名が,北朝鮮やトランプ政権等,最新の国際情勢を語り尽くした作品。著者は,外交ジャーナリストとして特に米国に詳しい手嶋龍一と,元外交官の佐藤優。
国際社会が目まぐるしく動いた2017年を概観する上でオススメしたい一冊。また,幅広いテーマに関して深い対談が行われているため,知的刺激と好奇心を受けること間違いなしです。
〜「あいつらのやることは,わけが分からない」のだとしたら,我々の従来型の切り口のほうがどこかで間違っているのではないかと考えてみる必要があるのです。(佐藤)大変恐ろしいことではありますが,それくらい謙虚に冷静に,現実の世界を見るべきなのかもしれません。(手嶋)〜
内容に比してサクッと読める分量なのも☆5つ