現代中国の秘密結社 -マフィア、政党、カルトの興亡史 (中公新書ラクレ, 716)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121507167

作品紹介・あらすじ

中国の台頭、新型コロナパンデミック、世界に根を張る孔子学院、香港抗議デモ、仮想通貨ブーム、「重慶王」薄熙来の失脚――。中国が激動する時、必ず秘密結社が現れる!

歴史的にみると、社会不安や格差が大きく、政治的に硬直した体制下に秘密結社は生まれ出る。本書で「現代中国の秘密結社」を描き出すことで、宗教・言論弾圧と統制を強めている中国の隠された「真実」を明らかにする。重要なプレイヤーとなるのが、18世紀に誕生した最大・最強の結社「洪門」と、反共組織と化している「法輪功」などの新宗教だ。

大宅賞を受賞した最注目の中国ライターによる渾身の書き下ろし。中国の近現代史と現代の中国圏の姿を描きなおす!

感想・レビュー・書評

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  • 秘密結社と聞くと何か恐ろし気なイメージでインパクト大。同時に興味津々である。解説は大きく分けて、黒社会を統率する団体、政治につながっていく団体、宗教団体の三つと、解釈できた。たまたま義兄弟の契りを結んで江湖をさすらう男たちの物語を読んでいるところなので、リアルな社会が物語となる背景なども想像できて一段と興味深い。著者自身が体を張った取材をしている(香港デモの取材)と知り、中国の社会に奥深く入っていく行動力に感心した。コロナ禍の現在まで網羅していることは大きな魅力である。

  • いやなんか読み出して、正直どうでもいいやと。興味のある人にはいいと思う。

    端的にまとめて、一番成功した秘密結社は、中国共産党だと。

    ワロタ。

  • 中国の秘密結社という魅力的なタイトルに誘われて本書を手にしたが、私がイメージしていたフィクサーのような存在や闇から表社会を捜査しているというものよりも、もっと現実的な存在であった。一方で、表社会に多大な影響を及ぼすというイメージは合っているようであった。
    秘密結社とは、政治や宗教、犯罪も含めて同じ目的のために集まりお互いを助け合う集団であり、その性格から外部に情報があまり出ないことから、秘密結社化していくものであり、中国に関わらず、どの国にも多かれ少なかれそのような集団は存在している。
    本書ではその中でも中国を舞台に過去から現在までに、どのような秘密結社が生まれ各時代にどのような影響を与えてきたのかを克明に記録したノンフィクションである。
    清の末期からどのような成り立ちを経て、現在の中華人民共和国という国が出来上がってきたのか、その流れを理解することができた。
    一方で、中国人(という定義がどこまでを含むかは議論の余地があるが)が、各国に移住し華人としてコミュニティを形成し(これが秘密結社化する)、最終的にはその国の中枢にまで入り込み、気づいたら中華人民共和国に支配されてしまうということが、これから各国で起こるのではないかと不安になってしまった。特に日本は鎖国的であるものに、白人や黒人など明らかに人種の異なる移民や難民は警戒するが、中国人や韓国人などの近しい人種には比較的寛容であることが、知らないうちに日本が蝕まれるのではないかという不安が残った。

  • 中国の歴史になくてはならない秘密結社、それは怪しげな入会儀礼と融通無碍な空虚な器として今も生きている。洪門、青幋、法輪功、全能神、新天地協会…元々は、共産党こそ秘密結社だという笑い話もある。秘密結社の内実と次々と生れ出る背景を、綿密な取材と中国通ならではの深い洞察で描く。

  • 中国の歴史が中央集権的な王朝の交代劇で成り立つとすれば、王朝の圧政下には多くの秘密結社が生々流転し、その中から易姓革命に成功したものが次の王朝を築くと読める。
    どうもこの国は砂を握りしめるかのようにしか統治できず、少し緩めば瓦解するようであり、それゆえ底辺の民衆から地方閥まで徒党を組んで相互扶助し、排他する性質であるようだ。
    であるならば、今の中国共産党支配下でも秘密結社は数多あり、大別して相互扶助結社の洪門系、新興宗教系、前2者を土台にした革命結社となるらしい。
    人民中国の壊し方まで言及する必読の一冊である。

  • 政治、宗教がらみの秘密結社。胡散臭い!でも知らないところで何かが動いてるんだろうな。

  • 法輪功以外に共産党政権下の中国でこれほど多くの「邪教」が発生していたことに驚いた。また創始者がキリストの再来を自称していることが興味深い。

  • 大宅壮一ノンフィクション賞著者の渾身書き下ろし!激動する国家に蠢く「謎の組織」を知らないでどうやって中国がわかるのか?

  • 中国の秘密結社が現代においても大きな意味を持つ、そもそも中国共産党が秘密結社の成功例だという指摘は面白い。中国の歴代王朝は中央集権的な体制を作ったが、地方に送られる官僚に土地への愛着はなかったために民生向上へのインセンティブがなく、政治や社会への不信感を抱かざるをえない、究極の自己責任社会だった。そこで血縁者同士のより集まった宗族や同郷会といった相互扶助組織が作られた。それが中国の秘密結社の下地になっている。
    チャンツィーも入党した中国致公党という参政党、世界各国の華僑社会の秘密結社、法輪功、全能神、新天地教会といったカルトなどについて説明されている。

  • 面白いテーマで中国を理解する上で知っておいて損はない。秘密結社は近現代史的な内容で、後半多くのページが中国の新興宗教に関する記述でさかれていて、信じられないおかしさ、真剣さ信心深さと、当局の異常な警戒ぶりを垣間見る。なぜこのような宗教にハマる人々がいるのか、から、そうは言っても人権侵害や不当弾圧している政府、共産党。冗談みたいなことが真面目に起こる中学の不可思議を痛感。

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著者プロフィール

ルポライター

「2023年 『2ちゃん化する世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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