ウクライナ戦争の嘘-米露中北の打算・野望・本音 (中公新書ラクレ 796)
- 中央公論新社 (2023年6月8日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121507969
作品紹介・あらすじ
ウクライナに軍事侵攻したロシアは言語道断だが、「民主主義をめぐる正義の戦い」を掲げるウクライナと、米国をはじめとする西側諸国にも看過できない深謀遠慮がある。戦争で利益を得ているのは誰かと詰めれば、米露中北の「嘘」と野望と打算、その本音のすべてが見えてくる。世界は迫りくる核戦争の恐怖を回避できるのか。停戦への道はあるのか。ロシアと米国を知り尽くした両著者がウクライナ戦争をめぐる虚実に迫る。
・アメリカはウクライナ戦争の「管理人」
・ゼレンスキーは第三次世界大戦を待望している?
・英国秘密情報部が「情報」と「プロパガンダ」を一緒くたにする怖さ
・戦場で漁夫の利を貪る北朝鮮の不気味
・ロシアがウクライナ最大の軍産複合体を攻撃しないわけ
・米国とゼレンスキーは戦争を止められたはずだ
・戦争のルールが書き換えられてゆく恐怖
・恐るべきバイデンの老人力
・プーチンが核兵器に手をかけるとき
感想・レビュー・書評
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昨年2月にウクライナ侵攻が始まってから
一番聴きたいのは佐藤優さんの意見
それは私だけではなかったと思います。
しかし残念ながらどうも口が重いというか
私から見ると「何か大事なことを隠しているんじゃないか」
でも、二か月前に発売された池上彰さんとの対談
『プーチンの10年戦争』でようやくいろいろ語りだした佐藤さん
今回の手嶋さんとの対談ではさらに本音が次々飛び出します。
「このようなリアリズムに基づく議論を出版できる環境が
ようやく整ってきた」とあとがき(4月12日)にあります。
こうなると佐藤優さんの右に出る人はいないと思います。
手嶋さんも興味深いお話をたくさん聞かせてくれます。
大変読み応えのある本です。
今後どうすべきか
やはりとにかく停戦だと思いました。
ウクライナの皆さんはお気の毒ですが。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ウクライナ戦争の分析をするのにこれほどの適任者はいないですよね、という2人の対談ならば読まない手はないと、書店で目にして即購入でした。
期待を裏切らない内容です。
ロシア語・ウクライナ語・ベラルーシ語に堪能な佐藤優氏は、ヴァルダイ会議でのプーチン発言を丸々翻訳したなかから貴重な知見を提示してくれますし、
英米の諜報活動に詳しい手島龍一氏は、侵攻を予告したバイデンの失策を手厳しく批判します。
ゼレンスキーの国内での立場や大統領になった経緯等にも詳しく触れられていますし、
ウクライナを利用してロシアの弱体化を目論むアメリカの戦略も生々しいです。
最後、歴史・宗教が異なるウクライナの3つの地区での分断による戦争決着の可能性等、日本から見える情報だけではなかなか思い至らない景色を見せてくれるのが、この本の素晴らしいところだと思いました。 -
本書内で佐藤さんと手嶋さんのどちらかが、世界は「今の日本にはなにも期待をしていないのかもしれませんが」という意味のことを話されていました。
ロシア情勢は大惨事になった3月22日の劇場テロが起こされてしまい、現在緊迫してさらに悪化していきそうな状況です。
まえがき
手嶋龍一
第1章
アメリカはウクライナ戦争の”管理人”
「在庫一掃セール」で潤うアメリカ軍産複合体
第2章
ロシアが侵攻に踏み切った真の理由
クリミア半島はなぜウクライナ領なのか
第3章
ウクライナという国 ゼレンスキーという人物
第4章
プーチン大統領はご乱心なのか
第5章
ロシアが核を使うとき
第6章
ウクライナ戦争と連動する台湾危機
第7章
戦争終結の処方箋 日本のなすべきこと
あとがき
佐藤優 -
今のままだとズルズルと10年戦争になりかねない。はっきり言って落とし所がない。
だからこそまずは停戦ではないだろうか。 -
元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏と、外交ジャーナリストで作家の手嶋龍一氏の対談。
流石外交経験や情報リソースが豊富な二人の会話形式の本なので、ウクライナ戦争で、あまり表には出てこない内容が詰まっていると感じた。
第1章 アメリカはウクライナ戦争の"管理人"
第2章 ロシアが侵攻に踏み切った真の理由
第3章 ウクライナという国 ゼレンスキーという人
第4章 プーチン大統領はご乱心なのか
第5章 ロシアが核を使うとき
第6章 ウクライナ戦争と連動する台湾危機
第7章 戦争終結の処方箋 日本のなすべきこと
ロシアの核心は、かつて血を流して獲得したクリミア セバストポリ。ここに手を突っ込むと、ウクライナ各地に核ミサイルを飛ばされるかもしれない。するとNATO軍は報復のためウクライナに越境、戦略核による応酬と言う最悪のシナリオが起こる可能性も出てくる。
アメリカの戦争目的はロシアの弱体化。
日本は官僚的な「法の支配に基づく…」の発言(価値の体系)だけではなく、利益の体系にも軸足を移すべき。
終わりの見えない戦争となっているが、何年続くの?と思ってしまう。勿論ウクライナの心情も分かるが、ウクライナの南東部は、元々ロシア系の人が多く、歴史や文化でも、ウクライナ中西部とは随分違うらしい。
どこかで、お互い妥協するところが必要なのだろう。 -
外交ジャーナリストで元NHKの手嶋龍一氏と元外交官のラスプーチンこと佐藤優氏がウクライナ戦争について語る。
西側の視点からしか見ない日本人からすると新鮮なとらえ方がいくつも出てくる。
「アメリカはウクライナを勝たせるつもりなはない」(管理した戦争)「在庫一掃セール」などなど。また、NATO拡大の超えてはならないラインだとか、英国のエリートの消滅、ウクライナの複雑な民族文化構成や歴史、「破綻国家」(腐敗と汚職と財政難)の側面などなど。
国際政治のバランスは思った以上に西側に不利になってきているらしい。そうした中、核大国・ロシアに対して「正義」を声高に主張してもしょうがない。現実的な平和への道を、世界が進まないといけない。そのためには、すごく遠回りではあるが、健全な世論の醸成、正確な情報から堅実な判断をする有権者が必要だ。 -
日本でインテリジェンス情報を分析できる、超一流の論客お二方によるウクライナ戦争を巡る対談。佐藤氏の同様の著作もほぼ読んでいるので目新しいところは少ないが、流石手嶋氏のインテリジェンス情報が重なると、奥深さも一際。テレビ・新聞の戦争報道を正しいものと思っている方にこそ、読んでほしい。ロシア(プーチン)の内在論理と如何にアメリカの対応が酷いものかが理解できるはず。
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日本のマスコミの情報だけを鵜呑みにしたらいかんと思わせる1冊。これまでロシアが悪でウクライナが正義と漠然と信じていたし、プーチンの狂気がもたらした戦争だと思っていたが、それはどうやら異なるようだ。
ウクライナという国家もかなりの危うさを抱えているし、G7各国の劣化も間違いなくある。片方の情報に依存するのでなく中立的な観点で分析しなければならない。 -
役員より頂いた本。ウクライナ戦争について、ウクライナ側の視点から報道が多いが、ロシア側からも検証したもの。
クリミア半島は過去からもロシア領土の時代が長く、その住民は親ロシアであること。戦争を仕掛ける前に一度、クリミアを独立した国と認めそれをロシアが救済しに行く体で始まった。
ロシアの戦車と欧米の戦車が戦っており、戦闘員もアメリカから派遣されていたりするので、ウクライナのみの戦争ではない。
ロシアは中国とも距離を縮めており、経済発展の関係から両国の利害が一致している状況。
日本や周辺諸国にとっては小麦がエネルギーの高騰の影響。長引く可能性が高いことの影響がある。
本件を通じて、片方から語られがちな事象にとって逆から見るとまた違ったものの見え方ができる。最悪なのは核にだけは進まないように願うのみ。 -
この本を読むと、岸田政権の偏りが、気になります。戦争終結の落としどころはどこか、考えているとは、思えない。自民党の党是であるアメリカ追従でどこまで行けるのか、難しいところだ。