グリム、イソップ、日本昔話 人生に効く寓話 (中公新書ラクレ 806)

  • 中央公論新社 (2024年1月10日発売)
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  • 本 ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121508065

作品紹介・あらすじ

「舌切り雀」には商売の厳しさが、「浦島太郎」にはあなたの定年後が、「花咲かじじい」には部下の使い方が、「雪女」には夫婦の現実が、「すっぱいぶどう」には競争社会の身の処し方が書いてある! 大人こそ寓話を読み直すべきだ。長く重い人生を軽やかに生きるための知恵が詰まっているのだから……。グリム、イソップから日本の民話、寓話まで。計20話の読み解きを収録。スピーチのネタにも使える一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 昔子どもの頃に読んだお話は、実は本当は怖いものがたくさんある。
    この様にお話にして後に残すには意味があるんだろうが、ヒトはやっぱり根本的なところでは残酷なんだなぁと感じた。
    2人の独特な掛け合いが面白く、するする読めた。

  • 池上彰さんと佐藤優さんの対談
    たくさん読んできました。
    この本は「読んでみたいけど、ちょっと近寄りがたい…」
    と思っているかたが
    スタバ等でちょっとずつ読んでみるのも可能。

    生き残ってきた童話・寓話は実にシンプルで
    その時代に合わせて改変されたり
    いろんな読み方が可能
    つっこみどころ満載です。

    そんな寓話をテキストに知識教養でいっぱいの
    池上彰さんと佐藤優さんが語るのですから。
    気楽に読めて面白かったです。

    だいたい単純な話ですが20作目
    芥川龍之介『藪の中』だけはちょっと複雑かな。
    でも佐藤優さんの一番言いたいことは
    ここに書かれているのではないでしょうか。

    ちょっとコピーします。
    でもややこしいのはこの作品だけだから。

    〈現実を見ると、残念ながら「深く考える」ということが軽視される、ともすれば嘲笑の対象になるような風潮の広がっているのが、今の日本です。かわって勢力を伸ばしているのが、「藪の中は、どうせわからないでしょう」「真実かどうかなんて、私には関係ありません」」というニヒリズム的な傾向です〉

    佐藤さんは「新しいタイプのニヒリストたち」が登場し、瞬く間に言論空間において、一定のスタンスを確立したと言っています。
    そしてそれを好ましい傾向と思っていないと。

    従来のニヒリズムの系譜には二つあります。
    「既存の秩序を認めない、世直しにつながる」
    「世の中から徹底的に「降りた」知識人」

    そして今日本で「活躍」している「第3のニヒリズム」
    私がここに簡単に書くと誤解されるおそれがあるので
    書きません。
    じっさいに読まれたら良いと思います。

    非常に効率的にマネタイズできるのも
    このニヒリズムの特徴。
    発言が注目を集めれば集めるほど、
    儲かる仕組みになっています。

    私はこれからも池上さんと佐藤さんの本を読みます。

  • 佐藤優さんと池上彰さんの対談本はこれまでにも色々な切り口で出ていますが、どれも視点が独特で面白いものばかりです。

    今回は昔話に焦点を当てた対談とはなっていますが、話ひとつとってもこういった視点で考えることができるのか、といった点は非常に興味深いです。

    昔の価値観に則って記述された物語に対し、思考停止せずあえて現在の価値観から光を当てて解釈していくという作業は、ものを考えるうえでの良い訓練になるのではないかと思います。

    また、読んでいて「ああ、確かになぁ」と思えるものも多く、濃い読書体験となりました。自分にとって納得感が高かかったのは以下の内容ですが、自分の経験に当てはめて読んでみると面白いでしょう。

    本気でステップアップを図ろうという時に、あえてネガティブな現実を見るようなことをしても、あまりいい結果に結びつかないことが多い。

    ・謝っても、許してもらえないこともある。

    ・人に何か伝えようと思ったら、書きすぎないことが大事。

    ・資本主義的な競争社会においては、とりあえず目の前のものがビジネスにならないかを考えるのが正義。

    ・「これがやりたい」「自分に向いている」と思ったら、臆することなくチャンスを掴みに行くべき。

    ・日常だと疑わない会社中心の生活が、実は一緒に踊ってくれる人がたくさんいる異界である。

    ・たとえ女王であっても、別の秩序の支配するところでは、勝ち目がない。

    ・助けを待っているだけでは、現実を変えることは難しい。

    ・世の中には「言ってはいけないこと」がある。余計な種明かしをすべきではない。

    ・どんなに立派に思える人のいうことであっても、そのまま信じるのは危険だ。

    ・何ごとかを成そうと考えたときには、それに疑問を抱く人間に対しても誠実に対応する。

    ・「悪い奴らを成敗しました」という話には、必ずと言っていいほど、そういう侵略性が潜んでいることに注意しなくてはなりません。

    ・自分がそう考える根拠をはっきりさせることがポイントになる。

  • 極楽に行けることを信じて、ひたすら上を見て登っていけばよかったのに、なまじ足元を見たばっかりに、厳しい現実が飛び込んできた。それで、「やっぱりだめだ」と諦めてしまうこともある

    という、蜘蛛の糸の教訓にことのほか共鳴共感しました。
    ありがとうございます

  • 人生に必要なことはすべて寓話にあった!どんな苦しい時にも役立つ寓話の「読み方」教えます【目次】
    プロローグ 現代に昔話のページを開く意味
    第1章 ギスギスした弱肉強食社会を知る(新自由主義の中で心が折れないために 「すっぱいぶどう」;競争社会のあさましさ 「蜘蛛の糸」;インフルエンサーと大衆「兎と亀」;兎は文春砲?許してくれない「世論」の恐怖「かちかち山」)
    第2章 競争社会の作法(「ほっこり」の中に貫かれるシビアな商品経済の論理 「手袋を買いに」;差別と道理とお金をシンプルに教える 「山ねこおことわり」 ほか)
    第3章 競争社会の人間性(いじめの構造 「白雪姫」;秘密は自分の口から漏れる 「因幡の白兎」 ほか)
    第4章 寓話、昔話を読む意味(特別な体験をすると、引き返せなくなる 「注文の多い料理店」;植民地支配の非対称性 「桃太郎」;危険なニヒリズムを排除せよ「藪の中」)

  • 童話を通じて現代の危機的な分断や戦争の背景までたどり着く。最後に自分を大事にしないが故の社会に対する無関心なニヒリズムを批評している。佐藤さんと池上さんの掛け合いが面白かった。

  • ちょっと途中で飽きちゃった

  • 寓話や昔話は幼少期に散々読まされ聞かされた。小学校くらいまではそれを真面目に受け止めて、あぁこれはやったらバチが当たるななんて思っていた。
    しかし中高で記憶が薄れていき、同時に幼少期ほど話を間に受けないようになってくると、なんであんな話を信じてたんだと思って、教訓を教えてくれたなどとは全く考えずむしろ大人が私を躾ける一環だったんだなんて考えに行き着いていた。
    しかし数年前に岩波のイソップ童話を少し読んだときに、教訓を得るとか以前にこれは読み物として面白いのでないかと思った。それからまた数年経ち、上司が読んでいるというので読んだのがこれ。
     寓話っていうのはこんなに自由に読めて、なんなら違うストーリーのverがあったりすることを知った。小さな寓話でも童話でも読者がどう考えるかでいくらでも変わるんだね。

  • 子供の頃から知っている童話。当時はただ勧善懲悪ものにスカッとしたり心温まる話だったり登場人物たちとふしぎな体験をしたりと物語そのものを楽しんでいたけど、大人になった今でも人生を上手に世渡りする知恵、さらに深い教訓を得られました。
    対話形式で読みやすく、馴染みのある童話が多いのですっと入ってきます。と同時に現代の状況を踏まえてどう人生に活かすかを多角的に考えていく、興味深い本でした。

  • 目から鱗がポロポロ落ちる本。20の寓話を分析、深掘りし、現代社会に即応。勧善懲悪も教訓話も、池上氏と佐藤氏に懸れば、今までの認識が一気に覆る。児童書を前に真剣に語り合う二人が微笑ましかった。

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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