帝国で読み解く近現代史 (中公新書ラクレ 827)

  • 中央公論新社 (2024年12月6日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784121508270

作品紹介・あらすじ

アメリカ、ロシア、中国の行動原理を理解するキーワード!



果たして「帝国」は悪なのか? そもそも「帝国」とはいかなる存在なのか? 皇帝がいない国でも「帝国主義」を標榜するとはどういうことか――

それぞれ中国史と英国史を専門に、東西の歴史に通ずる2人の研究者が、「帝国」をキーワードに世界の近現代史を捉え直す。今までになかった新しい視点による、近現代から現代までの歴史に流れを読み解く目を養える一冊。対談のため、充実した内容ながら全編にわたってわかりやすく読み進められる。



【目次】

序章 「帝国」とは何か

第1章 ヨーロッパと中華世界、東西の帝国の邂逅

第2章 押し寄せる列強と東アジア

第3章 ナショナリズムの高まりと帝国の変容

第4章 解体される帝国、生き残る帝国

第5章 アメリカとソ連――新しい二つの帝国の時代

終章 最後にもう一度帝国とは何かを考える

あとがき代わりの対談

感想・レビュー・書評

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  • 国民国家が善で、帝国が悪という考え方は、スターウォーズや宇宙戦艦ヤマトなどの帝国の考え方も影響しているのでしょうか。

    かって戦前は日本も大日本帝国と呼ばれていたけど、それはかってのローマ帝国や漢や清朝の様な帝国とは異なる。
    帝国は多様な民主や文化を許容し、それを一つにまとめる存在。一方で、現代の中国のように、自らの考え方ややり方を押し付ける国も存在する。

    民主主義国家と呼ばれたドイツもナチスの様な政党を生み出す。確かに、国民主権が正義とは限らない。

    アメリカも帝国主義と呼ぶ人がいるのは、必要以上に多くのことに介入したと思えば、自国ファーストに拘る部分があり、多様に世界を混乱させた部分があるからでしょうか。

    かっての西洋諸国もまた産業革命を経て、自らを優等民族と考える節があった気がします。

    帝国の時代も国民国家の時代も、パワーバランスにより世界は成り立っているということだた思います。

  • 東2法経図・6F開架:B1/5A/827/K

  • 岡本隆司、君塚直隆「帝国で読み解く近現代史」(中公新書ラクレ)
    現代では国民国家=善、帝国=悪と捉えられがちだが、19世紀末の世界は帝国だらけだった。イギリスのように本国の中では国民国家だが、海外では帝国という存在もあった。本書では東洋の大帝国の清朝と西洋の帝国である英国との出会いに始まり、産業革命を経て強大化した英国が清にアヘン戦争を仕掛ける迄になること、それに触発された日本が大日本帝国になること、第一次世界大戦でドイツ、オーストリア・ハンガリー、ロシア、トルコ、清という従来の帝国が一掃されたこと、それらに変わりアメリカとソ連が新たな帝国になることなどについて語る。冷戦後の世界でのアメリカ、ロシア、中国の振る舞いをどう捉えるかなど、考えるべきことは多そうだ。
    1. 欧州では16世紀に大航海時代を迎えスペインなどが新しい帝国を形成する。科学革命や軍事革命を経て産業革命が起こり、非ヨーロッパ地域への優位を確立する。中でもイギリスは中央銀行や国債のシステムで軍事費を賄う体制が整った。
    2. 欧州の皇帝はローマ皇帝の後継者。西の神聖ローマ帝国と東のビザンチン帝国。オスマンはコンスタンチノープル占領後も東方教会の総主教座を保護し、東の皇帝でもあった。ロシアはイワン4世の時に皇帝を自称したが18世紀になって欧州から皇帝として認められた。その後、ナポレオンが皇帝を称し、皇帝のインフレが進んだ。
    3. 東洋では中国の皇帝が天下全体をおさめる建前であったが、海を隔てた日本も天皇を称していた。朝鮮は中国(清)に朝貢する王国であったが、日清戦争後に大韓帝国皇帝を称した。清や日本より格下である訳にいかなかった。大韓帝国は北方異民族の清に対し、明の伝統を継ぐ中華の皇帝だと自らを位置付けた。
    4. 皇帝が多民族を束ねるタイプの帝国は第一次世界大戦でほぼ没落した。変わって本国では国民国家であり、周囲に植民地を抱えるタイプの帝国が増えた。その中でアメリカ、ソ連、イギリスと日本、ドイツ、イタリアが第二次世界大戦を戦い、米ソ体制に至る。
    5. 第一次大戦後、アメリカは日本を抑えようとするが、英仏はまだ日本に同情的であった。彼らは満洲国設立までは対ソ防衛の面で許容できたが、日本が上海を攻撃した時点で完全に敵となった。この頃から日本は外交的な勘を失い破滅へ向かった。

  • 通史としてのヨーロッパの歴史を、2人の歴史研究の泰斗がわかりやすく解説してくれる。読み物としても興味深いものだった。

  • 近現代史の動きが分かりやすい

  • 帝国を軸に概観する近現代世界史。
    帝国と帝国主義的なことは違うし、果たして民族自決は世界中に当てはまる解なのか。
    現代の西欧〜ユーラシア〜東アジアの変遷がよく分かる。

  •  18世紀から現在まで、ヨーロッパ史と東アジア史を中心に対談形式で見る。概ね標準的な通史だ。
     本書でいう「帝国」は予想外に多義的で、WWI後には消滅した典型的帝国のほか、英や本国は共和制だった仏は植民地帝国。更には冷戦期米ソも実質的には帝国と呼ぶ。そしてこれらを俯瞰し、19世紀から現在までを、国民国家と帝国的なもののせめぎ合い、とする。
     ほか、個別に興味を持った指摘いくつか。秘密結社がアヘンを売買するような社会構造だった清朝の問題。現地「チーフ」を上手に使い撤退も上手にやった英と、現地に入り込んでいたぶん簡単には手放せなかった仏の植民地統治の違い。日清戦争で日本が大勝ちしていなければ日清がパワーバランスを保ち、ひいては日本の中国相手の泥沼戦争も避けられたという歴史のイフ。

  • 高校の世界史で知った名前や事件に肉付けがされていく感じでたいへん興味深く読めました。

  • 主に中国とイギリスを中心とした「帝国」をキーワードに、アヘン戦争以降の近現代史を概観している。
    「帝国」と一口に言っても時代や地域によってその性質はさまざまである。清朝やオスマン帝国などの専制君主型は多民族を包摂し、緩やかに支配する旧来型の帝国。19世紀に登場した国民国家型は大英帝国をはじめとする植民地帝国。第二次世界大戦後の冷戦期における米ソ両国は皇帝が存在せず帝国主義を否定するがその行動は帝国的である。冷戦終結後、国民国家化、民主主義化の進まない現在の中国やロシアといった権威主義国家もまた帝国的である。

    全体を通して、「帝国」を悪だとひとくくりに理解するのではなくそれぞれの「帝国」の歴史的背景を理解することが大切であると説いている。

    個人的には、終章で君塚さんが述べている「歴史を学ぶことは、人類のその試行錯誤の歩みを知るとともに、「今、なぜ世界はこうなっているのか」を俯瞰的な視点で把握することにつながります」という一言が、歴史を学ぶことの非常に重要な目的を端的に言い表していると感じた。

  • 帝国を視点に、近現代史を捉える本。岡本隆司先生の本を読んだ事があったので、この本を買ってみた。
    対談形式の読みやすさがあったけど、内容は多分深い(後書きにも筆者二人の自信が表れていた)。
    一番新鮮だったのは、清朝が元々ウルトラチープガバメントであり、人口増大しても財政・行政規模を拡大せず、秘密結社のような中間団体が増加した結果、アヘン流通を止められなかった、という、清朝側の社会構造にも言及していた点だった。広大な領土を統治する上で、近代以前の帝国は、ある程度地方の習慣・制度を温存するしかなく、清朝の姿勢も必然だったのかもしれない(それでも、人口増加に合わせて改革を怠っていたのは、清朝政府の怠慢なのだろうが)。

    国民国家が成り立つには、同じ言語・文化・歴史・習俗を共有しているという意識がなければならず、あまりにも広大な土地を持つ中国・ロシアなどでは、国民国家よりも、いわば帝国(権威主義国家)的な国家体制にならざるを得ない、というのも納得できた。

    アメリカが、介入主義と孤立非干渉主義の両極端によくブレる、というのも、そう言えばそうかもしれない、と感じた。これまでも感じていた事だが、ウィルソンの世界情勢の読みが甘く、彼の妄想がずいぶん世界をかき乱したんじゃないかと、改めて思った。

    多分、一度読むだけでは習得しきれてない部分も多いかもしれないが、面白く読めた。

  • 【本学OPACへのリンク☟】

    https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/724052

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著者プロフィール

1965年、京都市に生まれる。現在、京都府立大学文学部教授。著書、『近代中国と海関』(名古屋大学出版会、1999年、大平正芳記念賞)、『属国と自主のあいだ』(名古屋大学出版会、2004年、サントリー学芸賞)、『中国経済史』(編著、名古屋大学出版会、2013年)、『出使日記の時代』(共著、名古屋大学出版会、2014年)、『宗主権の世界史』(編著、名古屋大学出版会、2014年)、『中国の誕生』(名古屋大学出版会、2017年、アジア・太平洋賞特別賞、樫山純三賞)ほか

「2021年 『交隣と東アジア 近世から近代へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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