悲しき熱帯 (2) (中公クラシックス W 5)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (449ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121600073

感想・レビュー・書評

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  • 後編はフィールドワークが中心で、少数民族が成す社会制度の分析は面白く読めた。それでいてずっと違和感を引き摺った。インディオと寝食を共にしながら一線を引く距離感、それは学者として必要な客観性だろうけれど、それよりもオクシデントの眼差しを感じてしまうのは邪推だろうか。正直な人なのだろう。終盤での民俗学者としての葛藤はずしんと響いてきた。単なる学術書とは一線を画する心情の吐露。こういう文面を目の当たりにすると、偏屈なのは自分の方なのだと訝ってしまう。いずれにせよ一読で理解できる代物ではないのでいつか再読したい。

  • 南米の少数民族についての解説が主となる下巻だが、やはり白眉なのは第九部にある「一杯のラム」。民俗学者とは自らが所属する文化からも研究対象とする文化からも「よそもの」であることを自覚しながら、また民俗学というという分野自体が他の民族を踏み付けにしてきた証左であることを理解しながら、それでも目を見開こうとする態度表明にはどうしても心動かされてしまう。イスラムへの不理解と仏教への過度な賛美を表し、ストロースもまたサイードが批判したオリエンタリズム性に縛られていることが透けて見える最後に少しだけ心を痛めながら。

  • ようやく読み終えた。読みやすい本ではないし、今読むと偏見にしか思えない表記もあるし、論旨も実はそう明確でもない。かつて大学生の頃、挫折したのもそんな理由だったのかもしれない。
    今回は少しずつ読んだのだけれど、何よりもものすごい知識を貯えてしまった人が世の中を悲しみつつ、生き方がより多様なことの大切さを語っているんだなと思った。
    イスラム教社会の存在と実は根っこのつながっているキリスト教社会の問題について言及しつつ、もしもキリスト教社会と仏教社会がまっすぐに出会っていたら世界は違っていただろうと夢想して終わっていくのは今の時代にも通じることだと思う。

  • 要旨であるはずの「交差いとこ・平行いとこ」の話はちょっとで、本当にただの秘境珍道中。しかし終盤に気が狂ったのか、急に民俗学とは何か、俺は一体何をやってるんだみたいな話となり、構造主義どころかミイラ取りがミイラになっているのがウケた。こんな人間的な哲学書も珍しい。

  • 部族についての描写は丁寧である。ロバに乗って金属を訪ね歩くというたびである。ただし、熱帯だけでなく、イスラムの遺跡であるタクシーらやチャウンを訪ねていることも書いているのだが、これはここに入れる必要があるかどうかよくわからない。

  • ところどころグッときた。

  • 最後の「回帰」の章がいい。日本語で読めるものがなくなってきたので、フランス語の勉強をはじめようかと迷わせるぐらいの魅力はある。

    未開状態の無為と思われるわれわれの自己愛の手に負えない活動とのちょうど中間
    一つの多面性

    イスラム
    両立しない感情の板挟みになると「彼らの抱く劣等感」を彼らは人が昔からアラブの魂と結び合わせている伝統的な昇華のさせ方ー嫉妬、誇りだかさ、ヒロイズムーによって補う。

    人間の精神が作り出したものについていえば、それらの意味は人間精神の関わりにおいてしか存在せず、従って人間の精神が姿を消すと同時に無秩序のうちに溶け込んでしまう。

  • この本を読む限り、レヴィ=ストロースの文には生命が宿っている。感動そのものを擬人的に生々しく表現している。(特に前半「日没」などは)比喩の洪水だった。比喩が比喩になっているようで混乱が混乱を招いた。

    「文学」という響きに興ざめすることもある。文学のような揺らぎや撓みは人の心を揺動するけれども、本質的・明瞭的な理解には至りにくいのである。コーヒーは飲んでこそであるが、その芳醇な香りを味わうのにも意味がある、ということか。

    この著作は文学であり、且つ記録文書であり、紀行文であり、人類史であり…こういうものに巡り合ったことは大きな収穫。再読を誓おう。今、私がこれに直面したことによって生じた心のありようと、少し(それが数年後かもしれないし、1週間後かもしれない)経ってからのそのありよう。それを較べてみたい。

  • 大部分は中南米について。一口にインディオと言っても部族によって生活スタイルも様々。その様子が分かって興味深い。

  • たまたま手にしたレヴィ・ストロース。しかも2巻しかなかった。民俗・文化人類学としての南米での調査記録。構造主義というものがわかっていないので、また読み返してレビューする予定。

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