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- Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121600998
感想・レビュー・書評
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最高善たる「一者」を万有の始元とみるプロティノスの教説からは、唯一神による天地創造というような、何か宗教めいたものを想像してしまう。だがプロティノスの語り口は、あくまで論証的な哲学者のそれであり、プラトンやアリストテレスなどを援用しつつ自説を展開している。
ただその一方で、自己の内面の無意識を重視したり、「一者」と合一する神秘体験を語るなど、従来の哲学の潮流からはみ出すかのような記述も目を引く。
「一者」を対象的に知ることはできず、それと合一することを究極の目標としている点は特に注目に値する。プラトン・アリストテレス的な、物事を対象化して分析的に理解しようとする態度とは、明らかに異質である。むしろ仏教などに通じるところがあり、興味深い。
訳文は訳者によって多少のばらつきはあるものの、総じて読みやすく、丁寧な注解とともにこの難解な書の理解を助けてくれる。詳細をみるコメント0件をすべて表示